■注意書き■

この話は「ANGELIA」4話と「a bolt from the blue...」4話から続いているような形になってます。この二つに出ていたキャラが頻繁に出てきたりもしますので、予め読んでると三倍くらい楽しめるかもしれません。


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Deus ex Machina 〜ギルド攻城戦編@〜








1. ネオン




私の隣には、16歳前後の剣士君とアコライト君が座っていた。
二人とも困ったような、怯えているような顔をしている。無理に引っ張ってきたからそれも仕方ないかもしれない。
だが今の私にそれを気遣う余裕すら無かっった。
私が入っているギルド『Deus ex Machina』のギルマスであり、騎士のバーンが彼らを気遣いお茶を入れてくれる。 私の長年の友人であり、製造型BSのソラがそれを私にも回してくれた。
片手にカップを持って私は目を閉じた。

……こうして無いとまた怒りで叫びだしそうだわ。

リビングは明るい日差しが入り込み、外からは賑やかな声が届くというのに、ここだけ別世界のように静かだった。
机を囲むようにギルドメンバーが座っている。お客の二人が居るから椅子が足りなくて、ちょっと離れた所にあるソファも使っていた。
メンバーはソファに座ってる方から、プリーストのカイ、アサシンのラン。そしてこっちのテーブルにはプリーストのサクヤ、ハンターのレイリン、アルケミストのアケミ、そして騎士のバーンとBSのソラ。本当ならまだ後二人いるのだが都合が付かずここに来れない様だった。おそらく図書館にでも篭っているのだろう。
このメンバーが、私の大切な友人達でもあり今の家族のようなものだった。

「一体どういうことですか?いきなり殺人予告したかと思ったら…」
この中で私と一番付き合いの長いソラが、最初に口を開いた。これに他のメンバー達も曖昧に頷いた。
そう、こうして集まって貰ったのも1時間前に皆に『ギルドチャット』を通して声を届けたからだ。


『たいした事じゃないわ。ちょっと殺りたい奴が居るの。それで皆にギルド攻城戦に参加してもらえないかと思って』
そう言った途端、ソラから早急に事情説明を求めてきてこうして皆で会議を開いているというわけだ。


「……あいつね、私の事騙してたのよ」
お茶をすすりながら静かにそう言った。
「あいつ?」
バーンが、どこのどいつだと首をかしげる。
「ああ。ソラしか知らなかったかしら?最近私にしつこく言い寄ってきていたローグが居たのよ」
「ああ…ガイアさんとか言う…」
その名をソラの口から聞いた途端、抑えていた怒りがふつふつと込み上げてきた。心なしかみんなの顔色が変わってくる。

「そうよ……あいつはね…。あいつは…ただ私を攻城戦に引き込みたいが為に私にあんな事言ったのよ!!!!」

怒りのままに机に湯のみを叩きつける。ガシャンと陶器が割れる音と共にめこっと鈍い音と立ててへこんだ机。割れたカップからは湯気が立ち、だけど握った形のまま私は拳を振るわせる。無意識にしていたらしいエナジーコートのおかげで怪我はせずにすんだ。
予想していたのだろう、皆予め自分のカップを避難させていて、隣でガタガタ震えている剣士とアコライトの分はバーンが救い上げていた。

言葉だけで呪いを掛けれるなら、今頃ガイアを呪い殺してる。
それくらいドスの効いた声でそれだけ吐き出すと、少しだけ理性が戻った。
そして私は隣で体を縮こまらせている剣士とアコライトを見る。この二人は私が無理言って連れてきたのだった。
「私が今日あいつのギルメンと会って話した時、丁度この子達もいたのよ。向こうから知らない顔がやってきていきなり『次の攻城戦宜しく』なんて言って来るから何事かと思ったわ。話聞いてみれば驚きじゃないの。あいつの居るギルドって砦持ちなんですって。私みたいな攻城戦にあまり参加しない高レベルな冒険者を集めてて、ガイアは私を引き抜くように役目を割り振られていたって言うのよ。ついでだからガイアのことも色々聞き出してみたの。あいつね……ギルマスやってる女性と付き合ってるんですって」
バーンが『うわっ、泥沼…』とか言ってるのを一睨みで黙らせる。


ギルド攻防戦。砦の所有権を巡ってギルドごとに争うそれは、冒険者達の娯楽、祭りとして一般的には楽しまれている。だけど、砦ごとにある宝箱には伝説の神器が収められている事もあり、そういった宝箱が置いてある砦での毎週の攻防は壮絶なものがあるらしい。守る方も攻める方もより高レベル、高スキルを持った冒険者が集まるのだ。そしてそういった冒険者が少ないギルドは、他のギルドやフリーの高レベル冒険者を集める事がある。
私も何度か誘われたことがあった。このギルドで参加した事も無かったし、一人で狩をする事も多かったから。そういう情報はどこからとも無く流れているもので、だけど私は今まで興味がないと断ってきたのだ。一度だけといって、それですむようなあっさりした人間が、引き抜きなんてしてくるはずが無い。

だけど、ガイアの場合、最初の出会いが出会いなだけに目的を自分の体だと思い込んでしまったのだ。
自分の馬鹿さ加減に頭から湯気でも噴出しそうになるわ…。

「道理で手出ししてこなかったはずよ。あいつの目的は私の力だけだったんだから。大方自分に惚れさせて利用するつもりでいろんな事を言ってきたんでしょうけど………ここまで嘗められてコケにされて黙ってられる程、私ってば温和でも人格者でもないのよね…っ!!!」
またどんっと机を叩く。
それに、お茶で濡れたテーブルを拭いていたソラが片手を上げた。
「でも、…それはあくまで人の口から聞いたものであって本人から聞いたものじゃないんでしょう?一度本人に聞いたらどうですか?それに……ネオン、あなたもしかしてガイアさんに好意を持ってるんじゃないんですか?だからそんなに怒ってるんじゃ…」
「ソラ…」
ふっと鼻で笑って私は片手を上げて人指し指と親指の先をくっつけて輪を作って見せた。
「あいつに、好意なんてね…これっぽっちもないわよ?
指先がきしきしと音を立てるくらい力を入れる。入れすぎて指先が白くなる程だった。
「…『これっぽっち』って…ネオン……それ隙間ありませんから……」
私が一度行ったら聞かないことぐらいソラだって分かってる。
だけど、そう言ってくれる気持ちも分かるのよ。あなた優しいから。

「まず本人に聞いてください。でないと僕は攻城戦に参加しないし、この事に絶対賛成しません」

真剣にじっと私を見つめる空色の瞳。たとえ世界を敵に回しても、ソラだけは私の味方で居てくれる。そう確信している相手からの言葉に口を閉ざした。
自分と同じで、ソラの頑固さは私も良く知っている。
そして今はそれが正しいと分かっているからこそ、私も何も言い返せずに居た。
暫く考えて、ふうっとため息をついた。

「……一度だけね」
「はい」

ほっとしたようにホニャンと笑うソラに、部屋の空気が明るくなる。
皆あからさまにほっとしていた。
やだわ、私が我侭言ってるみたいじゃない。
思わずプウっと頬を膨らませた。
そして私はしぶしぶと懐から出した冒険者カードから、あのローグの名前を探した。








2. ガイア





ネオンという男を一言で言うなら華だろう。
白磁の肌ってのはああいうのを言うんだろうなというくらい、さらりとしていて皇かな肌に紅を引いたような赤い唇。綺麗に整えられた顔立ちは黙っていれば人に冷たい印象を与えかねないけれど、その目に宿った炎のような意思が彼を艶やかな華に見せるのだ。
それに抱き締めれば途端に香る甘い花のような清々しい匂い。香水かと思っていたが口付けた時に口内に広がった香りは一段と薫り高かった。思わず誘われてしまうほどに。
何より気高く凛々しく強情な、それでいて甘く誘う『華』。
先日の悩ましい姿を思い出すと、口元に笑みが浮かぶのが止められない。
さて、次はいつ会いに行こうか。

「…なんか良い事会ったのか?顔笑ってるぞ」

上から降ってきた声に顔を上げる。其処にはサングラスをかけシニカルな笑みを浮かべたプリーストが居た。
同じギルドのカーティスという男だった。癒しの力を司るプリーストでありながら、殴る方が得意だという変り種。
特に仲が良いわけではないが、話さない仲でもない。
吸うタバコの銘柄が同じせいなのもあって、貸し借りするくらいの仲だった。
だが、この男が今この砦にいるのが気になった。
このカーティスという男はギルドの方針と自分の意思とに落差があってまったく顔を出さない幽霊メンバーだったからだ。少なくともこの砦に入って来た事など、これが初めてだった。
壁に寄りかかるように座っていた俺はカーティスを隣に座らせてタバコを勧めた。
話を聞いてみればなるほど、とうとう脱退する手続きにきたらしい。三日後の攻城戦を最後にすると言った。
だとしたら二人並んでこうしてタバコを燻らせるのも最後になるのかもしれない。
「…今、このギルド何やってるんだ?」
「ん?…砦中心。お前等が来なくなってから大分メンバーも変わったし同盟組んでる人間も出入りしているから大分知らないのがいるだろう。高レベルの人間の引き抜きもやってる。あと1,2度したらまた違う砦を狙う気でいるみてぇだしなぁ……」
大して興味をそそられない話だ。俺自身もこのギルドにはもう興味も執着も何も無い。
俺もいっそ三日後の攻城戦を最後にギルドから抜けるかね…。
「……それだけか?」
やけに真剣に呟かれた言葉。
それに俺はこの男が何か気がついているのだろうと悟った。頭は悪くない男だ。
元々『枝』一つで嫌な顔をする奴だ。ギルドから離れていったのもその所為だった。 前に肉親がそれで死んだというからそれも仕方ないかもしれない。
このギルドの中もおかしくなってきていた。
退屈している人間が多い。そしてえてして人間は退屈になるとろくな事をしようとしないと相場が決まっている。
今は砦持ちという表の顔があるが、そのうち何か起こす事は分かりきっていた。
先日はアマツで枝テロをやった馬鹿も居たくらいだ。いくら教会から探りを入れられたからってそこでそういった行動に出るあたり、頭の足りなさを暴露してるも同然だった。しかも、狙った目標の人物は生きているらしいと聞く。最低だった。
事を起こした人間は得意満面にばれるものかとたかを括っていたが、そんなわけが無い。
ギルマスである女アサシンもそれが分かっているらしく、近々そのメンバーをギルドから除名する処分を行うと言っていた。
そうして、役立たずは切りながら何をしようというのか。
他のギルドとも同盟を組みつつ水面下でいろいろと場を設けているらしいし、……ろくな事にならないだろう。
俺はカーティスをちらりと見て煙を吐いた。今ならこれまでの経歴とギルド攻城戦を理由にして抜けても怪しまれないはずだ。
言ったとして、どうなる事も無い。むしろ知れば知るほど、こいつの身も危なくなる。
「……つまんねぇ事さ」
そう言えば、カーティスはまだどこか納得はしてないのだろうが、ギルドがおかしいという事だけ分かれば気が済んだらしい。
そうかと呟いて黙り込んだ。

「俺も直に抜ける。ただでさえつれない想い人にも満足に会いに行けないんじゃあ窮屈で仕方ねぇ」

そんなカーティスの態度に俺も正直な所が口をついて出た。それにカーティスが絶句する。サングラスの向こうで目が丸くなっていた。
「あんたから…そんなこと聞くとは…思わなかった。……さっき顔がふやけてたのも、そのつれない想い人の事でも考えてたのか?」
真面目な男が純粋に興味を持ったとばかりに俺を見る。苦笑して、それっきり何も言わなかった。
まだ、口に出すのは早かったセリフだった。誰が聞いているかわからないというのに、この男に久しぶりに会ってつい口が軽くなったらしい。
俺はギルマスの女アサシンの顔を思い浮かべた。
毒花のような。ネオンとは違う意味で色のある抱き心地のいい女。
恋人と呼べるものではなかったが、関係が近かっただけにギルドが今まで裏で何をやってきたか、その秘密まで知ってる。そんな俺が今ギルドを抜けようとすればいい顔はしないだろう。実際前に冗談のように抜ける話をした時にはあの女アサシンは微笑を浮かべるだけだった。本気だと分かった時点であの女はギルドの為に俺に剣を向けるだろう。たとえ何度も肌を合わせた男だったとしても。

……俺ってろくな人間関係築いてねぇなぁ…。
いや自業自得なんだが。

いざとなったら勝手に抜けて、トンズラして暫く別の町で羽根のばすかね。
タバコの煙をボーっと見ながら頭を掻く。
「興味があるな。どうせこれで最後だ。聞かせてくれよ、あんたのその想い人っての」
くくくと悪ガキみたいに笑うカーティスに、俺も片眉を跳ね上げてクと喉を鳴らす。さっきまでの毒された気分が一掃された気がした。
脳裏にはいつもの怒ったようなネオンの姿が浮かんだのだ。
女…女ね…。確かに外見はそこら辺の女よりよっぽど美人ではあるんだが。
「そうだなぁ…気が強くて頑固で意地っ張り。気性は炎のようなのに、姿形は華のように艶やか。その外見に惑わされて触れればあっという間に燃やされちまう。……それでも、一生に一度の恋ってのがあるならあいつとしてみたいと思ったよ」
思い出すように口に出して、ああそうだったのかと自分でも納得した。
どこまでも真っ直ぐで、それでいてこっちの意表をことごとく覆す。その面白さ。
あいつと居ると、退屈しない。
それが手に入れるまでの感情なのか、それとも手に入れてからも変わらないのか分からなかったのだけど。でも、こんな自分が一人の人間にこうまで執着できるのは異常事態だった。それこそ一生に一度の事だろう。
照れくさくなってカーティスに向かって笑みを作る。
「そういや、お前さんにもいないのかい?あ、いやそういや確か女がいたか?」
「かなり前に別れた。……今は…まぁ、…いないんだが」
そう言って顔を隠すように口元に手をやって煙を吸う振りをするカーティスが珍しくてからかう。
「赤くなってるぞ。さては、居ないというのはうそだな?」
「からかうなよ。……、まぁ…色々とあったんだよ。……聞くな」
何だそりゃ。人に言わせといてそれはないだろう。
そう思ったが、何だかがっくり肩を落としているカーティスを見ると何も言えなくなる。


『ガイア…』


突然振って沸いたような声に驚いた。
まさかこいつから『耳打ち』が来るとは思っても見ない事態だった。
というか、向こうからのアプローチなど初めての事だった。

「…ネオン?オイオイ、何だどうしたってんだ?俺からの『Wis』は全部拒否してくれていたのに、お前からなんて珍しい事もあるもんだ。何だ、ついに俺の愛に答えてくれる気になったのか?」

浮かれて軽口もますます軽くなるってもんだ。俺は嬉しくてせっかくだからこの機会にデートの約束でも取り付けようと思った。
…のだが、次の瞬間、奈落に叩き込まれる事になった。

『…あんたが入ってるギルド…攻城戦に出てるそうね…。砦持ちだそうじゃない。すごいのねぇ……』

「………」

冷水をかけられたような錯覚を覚えた。
おいおい…。何でそれを。
俺はネオンが突然『耳打ち』してきた理由を察した。
気位の高いこいつはきっとその為に俺が口説いたのだと思っているのだろう。この誇り高い男はこうして利用される事を嫌う。それ以上に心を偽って自分を騙す人間をけして許しはしない。
だから俺は最初に会話した時点ですっかり勧誘の件は忘れていたのだ。
この静かな声は噴火前の火山と同じだ。俺は火山口の上に張ったガラス板の上に立っているような気分で、ごくりと喉を鳴らした。
余計な一言でも言えば、この火山は爆発するだろう。だが、どこまで理解しているのかが分からなければ墓穴を掘りかねない。

「…誰の口からそんな事聞いたんだ?」

『親切なあんたのギルメンからよ』

だとしたら、すべて筒抜けというわけかよ…誰だこのやろう…っ!!
そいつが目の前に居たらぶん殴って魔物のえさにでもしてやりたいが、今はそうも言ってられない。
何もかも考えれる最悪の状態でばれてしまったのだ。知られるかもしれないとは思っていたが、それはもっと後になってからの話しだった。その時には自分から言おうと思っていたのだ。ネオンだって話を聞かない人間じゃない。自分の口から言えばちょっと機嫌は悪くなるだろうがまだ許してくれる範囲だと思っていた。
だが、何の因果か俺がいない場所で、俺じゃない人間の口からばれた。……事態は最悪だった。
俺はとりあえず下手な言い訳はせずに、今まで築いてきた関係にかけてみる事にした。

「言っとくがな。俺があんたに惚れてるのは本当だ。あんたを知ったのは確かに勧誘が目的だったからだが、俺が一度だってそんなそぶり見せた事あるか?無いだろうが。俺は本気で口説いていたんだ、わかるだろう?」

『……本当の事だったのね』

「え…、だから。お前俺の言う事聞いてるか?」

『…あんた…教会に行ったことある?』

「は?」

突然変わった話題に付いていけずにぽかんとしてしまう。

『教会』

ネオンの声は相変わらず、ゴポリとも音を立てないマグマ溜まりのようだ。不自然なまでに静かでそれが余計に恐ろしい…。

「……あいにく。無神論者でね」

『そう、じゃあ神様に祈る時間はいらないわね…』

やばい…破滅へのカウントダウンが聞こえてくるようだ…。
俺は足元のガラス板にひびが入ったような、そんな恐怖を感じていた。

『棺桶の準備はしなくて良いわよ…。どうせ形も残らないから…』

その声はどこまでも冷静で、むしろ冷気まで含んでいた。かすかに声が震えている気がするのは俺の気のせいじゃないはずだ。
背筋が寒く感じ、それを振り払うかのように俺は最後の望みをかけて口を開いた。

「頼むからお前を好きだという俺の言葉を疑わないでくれねぇか。ネオン」

だがそれが逆にネオンの逆鱗に触れたらしい。

『気安く人の名前を呼ぶんじゃないわよ!!!!あんたの望みどおり、今度の攻城戦に参加してやるわ!!!ぬっ殺しに行くからその日までせいぜい短かった生を満喫する事ね!!あんたの女だって言うギルマスにでも抱いてもらって甘えてなさいな。今度会った時があんたの命日よ!!!!!』

派手に脳内に響き渡る怒鳴り声。それも届けられた時と同じように突然ぶちっと音を立てて途切れた。
それからいくらこっちから『耳打ち』しても繋がらない。しっかり拒否されていた。
「…………」
……やばい。やばいぞこれは。
しかもギルマス?ちょっと待て、どうしてそこで俺の女だってのが出てくるんだ。ネオンに話したって言う馬鹿は、一体どこまで話したんだ。
「…何だ?喧嘩でもしたのか?」
『耳打ち』がきた時点で気を利かせて去ろうとしていたカーティスがぽかんとしたように見下ろしていた。動揺して青くなっている俺を、珍しいものでも見るような目で見ていた。
「……ただの喧嘩なら良いんだけどな…」
普通の喧嘩なら、普通の人間ならさっきの言葉も冗談で済むんだが。

……ネオンはきっと…俺を本気で殺す気でいるだろう…。

まず間違い無く。
その気の強さを愛しく思ってるのも確かなんだが…こりゃ、命がいくつあっても足りねぇぞ…。

何てこったよ、今回の攻城戦終ったらこのギルドから抜けるかって思ったばかりだったのによ。
最後の最後でこれかよ。
よっぽど神様ってのは意地が悪くていらっしゃるんだなぁ、おい。

「神なんて信じねぇ…」
元々信じちゃいねぇが、今日という日ほどそれを思い知った事も無い。
ギルド名にもなっているそれを呟きながら俺はがっくり肩を落した。

「そんなに落ち込むくらいなら、謝ったらどうだ?本命なんだろ?」
俺の姿を哀れにでも思ったか、カーティスが眉を潜めて俺を見る。
謝る。いい響きだ。謝罪は人間関係を円滑にする。だがな、…それ以前の問題があるんだよ。

「……姿見せた時点でヌッ殺されちまうよ…」
「まさか、そんな」

「冗談抜きで、俺の死体が転がる」

今感じているプレッシャーは、ドッペルゲンガーが目の前に現れた時以上だ。
俺は思わず頭を抱えてため息をついた。

ギルド攻城戦まで後3日というある晴れた日。



俺はこの世で最も愛しく、最も恐ろしい死神から死の宣告を受けたのだった。














>>続く



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あはははは。攻城戦を舞台に始まる痴話喧嘩。始まりでございます。お祭りお祭り♪
魔法やら剣術やらスキルやらまで色々使った話がずーっと書きたかったので今回楽しみながら書こうと思います。と言っても中心人物達がこれなのでキャラネタで明るく楽しくといった感じですが。宜しければお付き合いくださいませ。






トナミミナト拝







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