あの日から夢は見ない。
初めてこの手を人の血で染めてからは。

希望も未来も何もいらない。
俺の手にあるものは覚める事のない
悪夢だけ。

それだけでいい、から。
救いはいらない。




ANGELIA




ならこれも悪夢の続きだとでも言うのだろうか。

プロンテラの寂れた宿屋一室。
いつも地下の冷たい通路で眠ることに比べて柔らかく日の匂いのする布団に居心地の悪さを感じて浅い眠りの中を漂っていた。
だが、時刻も深夜といって差し支えない時刻にようやく自分の身の異変を感じ取った。
こうなるまで暗殺者の自分が気がつかなかったのはきっと眠りの魔法か薬を使われたのだろう。
自分の迂闊さに腹が立つ。
だが今それを悔いる時間はない。
うつ伏せにされ後ろ手に脱がされた服でうまいように縛られシーツの端を桑えらせられたまま上からのしかかるように圧力を掛けられている。
「…‥っ!!」
その圧力とズボンを下ろされる時の力でそれが男だとわかったがうつ伏せにされたままでは顔をいくら捻っても背後を見ることはできなかった。
いや、カーテンを引き月の光すら届かないこの部屋の中ではいくら闇に目の慣れた自分でも相手の顔を判別するのは難しかっただろう。
だがそれでもこの男の目的が何なのか知りたかった。
自分に向けられた意識の中に殺意は微塵も感じられない。
ただ、性急な手つきでこの体を這い回るものの目的がこの体なのはわかったが、そういった経験のない自分にとってはその手の温度ですら嫌悪感を抱かせた。
触られる事に慣れない体。
人の少ないダンジョンに篭りただ死を迎えるためだけに生きていた自分は言葉も忘れ彷徨う日々をいつから続けていたのか忘れるほどの時間を過ごしていた。
たまに会う人間はそんな俺を気味悪げに見、避けたがそれでよかった。

俺は罰を受けなければならない。
生きてはならない。
……だけど自分で死ぬことはできなかった。
もう覚えきれないほどの人を殺め、肉親ですら手にかけて呆然とする俺を裁きに来たという者が言ったのだ。
生きて償えと。
生きる事で与えられる苦しみこそが自分に与えられた罰だと。


ならこれもそうだというのだろうか。


なぜこうなったのかわからないまま見も知らない男に抱かれることも、俺に与えられた罰だとでも?
そう思えばいいようにされる悔しさもただの諦めに変わろうとした。
どうせ…自分のこの手は汚れている。
それが存在自体になったとしても何が変わる?
背を撫でる様に這い回る掌ですら嫌悪感で吐きそうになる。
そうだ。これは罰なのだから。
罰だ罰だ罰…


『ランはきれいだ』


こんな時だというのにふと、自分にそう言った人物が脳裏に浮かんだ。
『金色の髪も朱色の瞳も綺麗だけど…何より心が綺麗なんだ。俺はこんな純粋な人間は始めて見た』
そう言った。

何も知らないくせに。
俺が何をしてきたかわからないくせに。
それでも、綺麗だといって幸せそうに微笑むその男こそが美しいのだとそう思った。

艶のある黒髪。前髪を長く垂らし、その奥に深い強い意志をもった紫色の瞳のプリースト。
始めて見た時には自分が死にかけていた事もあり死神だと思った。
地面に倒れた血まみれの俺を見下ろしてきた深い深遠。
だがその死神は何かを俺に語りかけてきた。
もうそのときの答えすら覚えていなかったのだけれど、彼は自分を癒しそしてこの町に連れてきたのだ。
それが1週間前。
目が覚めてなぜ放って置かなかったのだと冷たい言葉を浴びせた俺にそのプリーストは…カイはその時の答えを聞いたからと微笑んだ。天使のように優しい眼差しで俺を見てそれ以上の質問をその目だけで遮らせた。
だからとうとうそれを彼の口から聞くことはできなかった。
俺の命の危険がなくなったのを見てすぐに彼は俺を幼馴染だと言うナイトに任せてもうここには来なくなっていたのだ。
4日前から姿を見せなくなった彼がどうしたのか自分に知るすべはない。
ただ、死に損なって考えることを放棄したままただ日々を過ごしていた。
そして。今日この時。

神がもしいると言うのならあそれはさぞかし目端の利く存在なのだろう。

あの短い時間の中で
暖かな存在に凍らせたはずの心が解かされて行くのを感じた。
カイの少し筋張っていても綺麗で優しい手で傷だらけの体を濡れたタオルで拭かれて嫌悪より恥ずかしさの方が先立った。
彼の落ち着いた声が自分の名前を呼ぶたびに懐かしさに駆られて泣きそうになった。
体温に拒否反応を起こす自分を怯えさせないように直に触ることのなかった優しさが胸に痛みを起こした。

だが、自分に相応しいのはそんな安らぎではなく、冷たい闇なのだと神は言うのだ。
深い絶望に目の前が暗くなった。
久方ぶりに見た光が眩しければ眩しいほどに心に落ちる闇は冷たさを増した。

「っ!!!!」
体を這い回る掌にもう反射的に体が抵抗を始める。
諦めろと頭の端で言っているのに体はそれを拒絶した。
久々に感じた人の体温が気持ちが悪い。
ただ、生きているものが気持ち悪かった。
暖かさに思考が混乱する。
いっそ殺してくれと思う。殺してくれ。そうすれば何も感じずにすむ。
必死になって抵抗した。
だがそれですらも子供のように押さえつけられた。
後ろ手に拘束されたものが擦れて手首に痛みが走るがそんなことを構っている余裕はなかった。
「んんんっ!!!!」
塞がれた口で殺せと叫んだものはくぐもったがこの相手には伝わったはずだった。
だが脇を滑った男の手が下半身に伸ばされてそれを握った。
「!!!」
与えられた刺激に腰が引けた。
生きることに希望をなくしたあの日から自分ですら与えることすらしなかった行為だったが過去の刺激を覚えていたらしい体だけが過剰に反応した。
先のくぼみを指先と掌で摩られる。
それから逃げようと腰を上げていけば自然と尻を男の腰に擦り付けているような形になるのに俺はそれすら気がつかなかった。
追いかけてくる指はより確かな動きでもって俺を翻弄する。
気持ちでは確かに嫌悪を持っているのに体はそれを裏切って硬くなったその先から透明な液体を溢れさせた。
それが男の指を濡らしていくのがわかって、固い枕に顔を伏せたまま否定するように首を振った。
久しぶりに感じた欲情は恐怖と絶望に陥れられていた俺の思考をかき乱していく。
「んっ!…っ!!」
やがてその手が全体を揉みしだく様に上下に動かされる。
どうされているのか右にも左にも上にも下にも逃げられない体制のままただその刺激だけを与えられた。
快楽だけしかないそれに感じたのは恐怖だった。
もし開放してしまえば自分が自分でなくなるようなそんなわけのわからない恐怖が脳裏に浮かぶ。
「んー!!!!」
些細な抵抗ですら抑えられたまま叫んだがそれですら枕の中に消えた。
こわばった体でだができる限りの抵抗をするがそんなものでは何も変わらない。


綺麗だと…言ってくれたのに。


こんな時だというのに脳裏に浮かんだのは黒と紫の天使のように優しげなプリーストの笑顔だった。

親や兄弟ですらこの手で殺してしまった俺の事を、綺麗だと言ってくれたのに。
そんな彼の言葉ですら汚されていくのに自分は何の抵抗もできない。
それが痛い。

「ふ…っ……んっ!」

ひどく痛かった。
視界が快楽とは別の意味で徐々にぼやけて行く。
そうそこははちきれそうになって体の持ち主の意思も関係なくただ開放の時を待っていた。
それでも零れている雫が男の手に絡みいやらしい音を立てていた。
懸命に耐えていたためか耳なりがだんだんひどくなってきた。
それでも出す事に耐えられずに身をがたがたと振るわせた。

狂いそうだった、いや、いっそ狂いたかった。
そうすれば何も考えずに堕ちれたのに。

だが男の空いたもう片手が浮かせた体の隙間から伸びて左胸の尖った飾りをかすめた。
「!!!!!」
思っても見なかった所に与えられた刺激に頭が反応する前に体が弾けた。
「っ…っ…ひっくっ!!!!」
叫びが喉に絡まり声にならなかった。
突然与えられた開放と墜落に体の力が抜けてずるずるとベットに伏せた。
循環しだした血液がどくどくと朦朧とした頭を巡っていく。
意識を飛ばしたままその頬に涙が伝っていたが俺はそれにすら気がつかなかった。
自分の激しい呼吸音がただ現実を教えていた。


もう会えない。
見ることすらかなわない。
見ればそれだけで彼を汚してしまうだろう。

美しく光の中にいる彼を。


だが男の行為はそれで終わったわけではなかった。
尻を分け広げられそこに生暖かく柔らかいものがあたった。
「ひっ!」
自分でも触らないそこを男が触れているのと理解すると共にその場所の意味がわからずに混乱する。
何が起こってる?
男の手は反射的に力を入れた筋肉を左右に押し開いているのに使っている。
そして男の髪が肌を撫でている場所と濡れた生暖かい感触。
舐められているのだと考えたくも無い結論に至って暴れようとする体を押さえ込むように後庭の穴に先を尖らせた舌が潜り込んだ。
「!!」
感じたことの無い感覚にびくんと体が震えた。
だが男は逃がすことなくためらう事無くそこに自分の唾液を馴染ませる様に舌を抜き差しする。
「んー!!!んー!!!!」
出す所だと信じていた所に出入りするものの意味がわからなかった。
なぜそんな事をするのか。出して終わりじゃないのか。

その先があるだなんて自分は知らない。

気が狂いそうなほどの羞恥と気持ち悪さに目の前が暗くなる。
いくら叫んでも男が止める頃は無く、散々嬲られて痺れを持ったそこに今度は指が差し入れられた。
「ーーーーーっ!!!!!」
感じたことの無い感覚にそこに力を入れると男の指の形がわかった。
混乱と羞恥。それに痛みが走る。
もう止めてくれと叫んだ。
だがそれは口の中の布のせいで声にはならなかった。
力を入れても男の指の動きは止まらなかった。制限された分そこから指を曲げて内壁を引っかく。
それでまだ男が第二関節までしか入れてないのだとわかったがそれが何の慰めにもならないことを無意識のうちに知っていた。
体内で男の指の熱さを感じてまた視界が歪む。
男の指が何度か内壁を摩って抜けた。だがすぐにまたそこに舌の熱さが当たった。
やはり諦める気は無いらしい。
だがそれでもこの行動の意味がわからずに首を振った。
何年かぶりに壊れた涙腺は直すすべも忘れたようでそのたびにシーツに雫が散った。
嫌がる体の中がまたさっきの異物感に襲われた。今度は更に奥まで入って何度か小刻みに出し入れされる。
力を入れても男の唾液ですべるそこに沸き起こる敗北感。
内側から起こるのは未知への恐怖と世界を作りかえられる恐ろしさだけだった。
息苦しさに震える体は男の指の動きだけに集中してしまう。
やがて最初の一本がぎりぎりまで入れられてた後抜かれて、すぐにもう一本増えて穴に入り込もうとする。
「んんんんんんっ!!!!」
前に逃げようとするのを力任せに引き寄せられて男の二本の指が体内を抉った。
動く異物感と痛みに声を引きつらせた。
狭いそこを押し広げようとする指が何度も行き来していくのを痛みと共に感じた。
やがて男がそこにまた何か液体を落とした。
「!!!!」
びくっと体を弾ませるが男は逃がさないように押さえつける。
冷たく粘液性のあるように感じたそれはかすかに甘く香った。
指に絡められたそれが押し広げられた穴の中に流し込まれて溢れたものが太ももをゆっくり流れ落ちてシーツを汚した。
「っ?」
更に出入りする指が濡れて滑らかに体内を抉る。
男の目的はこれだった。
だが流し込まれたものの正体がわからずに混乱する。
毒ならいい。
死なせてくれるものならば。
だがこんなときに使うものがそんなものだとはとても思えなかった。
粘液だと言うのも気になったがやがてそれも男の次の行動で頭の中から綺麗に吹っ飛んだ。
指を入れたまま俺の体を仰向けにひっくり返したのだ。
「ーーーーー!!!!」
中で回転したものになぜか背筋に電流が流れたような錯覚を受けた。
打ち上げられた魚のように体を痙攣させてようやく自分の2度目の射精に気がついた。
「…っ」
信じられなかった。
感じることは無かったはずなのに。
呆然とする俺の上に覆い被さるようにして男は場所を確かめるように腹や胸を撫で上げ頬に触れた。
濡れた頬に触れられて顔をそむけると男はそのまま俺の両足を掴んだ。
前に大きく開かされるそれに羞恥を覚えて足を懸命に暴れさせて片足を抜いた。
そのまま男を蹴り上げようとして狙いをつけて蹴り出したそれを、だが男は避けてそのままベットの飾り柱を折った。
折れた柱が窓に当たったのだろう。ひびが入り割れた音がした。
信じられない。闇に生きる暗殺者の目でも見えない相手の攻撃をこうもあっさり読みきるなどと。
驚いて抵抗するのも忘れていた隙を付かれて男がまた俺の足を開かせる。
「んー!!!!」
そのまま足を折り曲げられて先ほどまで探られていたそこに何かがあたり押し入ってきたのに体をのけぞらせた。
指などとは違う。
力任せに押し入って内蔵を押し上げてくる大きくて熱い灼熱の棒が更に奥に突き進んでくる。
反射的に締め上げているはずなのに先ほどの液体に助けられたそれは限界まで俺の体を押し広げてきた。
何が起こってるのかわからなかった。
何度か馴染ませるように中をそれで擦られ痛みと衝撃に首を振る。
「んっ」
体をこわばらせた俺は出入り口になったそこに裂ける痛みを感じた。
思わず開け広げて空を見た俺に男の動きが止まる。
必死で痛みを押し流そうと息をする。
体をよじり楽な姿勢をとろうとして視界が開けていることに気がついた。
闇の中だと思っていた部屋にかすかな明かりが入り込んでいた。
それは先ほど破った窓から入ってきている風がカーテンを揺らしているからで
常人ではそれでも見えない闇の中でも俺ははっきりと今自分の上に乗っている男の顔がわかった。

だがそれはあってはならない人間だった。

「……」

わずかに入り込んだ光に紫煙の瞳が反射していた。
黒髪は闇に溶け込むようにゆれて落ちる。
男は俺の表情に気がついて痛みを堪える様に歪んだ顔を優しい天使のような顔に変えて微笑んだ。

「ラン。力を抜いて」

凍りついた思考でカイの声を拾い上げ、深い絶望が体中を振るわせた。
なぜ彼が?
光の中で微笑んでいる彼がなぜこんなことをするのかわからなかった。
彼はとても美しい存在のはずだった。
神に近い職業についている人。
人の血で汚れた俺なんかに触れてはいけない。
汚してしまう。彼を穢してしまう!!
「んーーー!!!!んー!!!んん!!!!」
ひきつけを起こしたように叫び身をよじり暴れる俺の体を慌てたように抱きしめるカイから更に逃げようとしたが下から突き上げられた楔にそれがかなわない。
「いっ!!!痛っ、ランちょっとっ!!!!」
その楔の正体がわからずにだがカイの叫びにびくっと体をこわばらせた。
また痛みを堪えるように眉を寄せるカイが両手で俺の頬を撫でる。
「いい?落ち着いて」
だがその暖かさですら与えられる権利の無い俺は首を横に振ることでしか答えられない。
久しぶりに聞くカイの声が胸に痛い。
「いいかい?ラン。口のを取るからゆっくり呼吸をして」
そうしてすぐに口の中に詰められていたものがはずされる。
かみ締められていたそれは型が付いて唾液でぬれて糸を引いた。
急に楽になった息にそれでも少し体の力が抜ける。
だがカイの前から消えたくて更に逃げようとするのを彼は許さなかった。
「ひっ!!!!」
下から突き上げてきた痛みに抵抗がやむ。
そうだこれは何なのだろう。
体内に埋められた異物の正体が気になって視線を下げて目を見張った。

「!!!!!!」
「痛ー!!!!!!!」

思わず力を入れたそこにカイが叫んだ。
「ちょっと待っ!!!ラン力抜けっ。ちぎれる!ちぎれるって!!!」
だがもう混乱と恥ずかしさにそれすら聞こえていなかった俺にカイはそのまま覆い被さってきた。
息が止まる。
唇をカイの口で塞がれ開いた口の中に柔らかいものが入り込んできて口中を蹂躙する。その激しさに息することもできないで抵抗するがそれすらもあやされてとうとう酸欠に気絶寸前まで追い込まれるまでそれは続いた。
「……ラン…」
酸欠で体中の自由が利かない。だが彼の視線は自分を見下ろしていた。
羞恥で死ねたらいいのに。
こんなこと耐えられない。
「触るな…っ」
かろうじて出した声は涙に濡れていた。
「俺に…触るなっ…!」
「ラン」
「お前が穢れる…からっ!!!」
押さえ込まれていないまでも抑制された体制でそれでも逃げようとする足が懸命に空を掻く。
いまだ自由にならない腕が腹立たしい。
「腕っ」
「解かないよ?解いたらラン逃げるだろう?君のスピードには俺は追いつけそうも無いからこの腕は解かない」
「嫌だ。解けよ!俺に触るな!中から出てけよ!」
子供の癇癪だ。その分カイの宥める声が腹立たしい。
「ラン。君は綺麗だ」
その声に懸命に首を横に振る。それに体の奥に感じるカイが硬くなるのを感じた。
「俺は汚れてるんだ!お前のような人間が触っちゃいけない!!!!」
「ランのどこが汚れてる?俺の目の前にいるランはこんなに綺麗なのに」
「…綺麗じゃない」
「日に焼けてない白い肌も癖のある金の髪も朱金の瞳もこんなに綺麗なのに?」
「そんなもの知らない!」
「自分の外見に無頓着なのも考え物だよ、ラン。俺は始めて君を見たときに天使だと思ったくらいなのに。
…でも本当に綺麗なものは…君のその心なんだけどね」
両手で頬を挟まれてそのまま頬や額や唇に口付けられる。
そのわずかな動きにも下腹部を押し上げるものがわずかに動いて裂けた痛みに体を振るわせた。
止めようとしてくれないカイにぼろぼろと涙が落ちて子供のように泣きじゃくった。
「ああ、泣かせるとわかっていたけど、やはり実際見てみるとちょっと胸が痛いね」
それが止める気は無いというカイの意思なのだとわかってまた涙がこぼれた。
カイは結合したそこから血のにおいを感じてシーツの上に落ちた赤い雫にくすりと笑った。
「初めてだったのに乱暴にしてごめんね?」
そして俺の腹を撫で上げた。下腹部を上からゆっくりと指でなぞってある時点でとめる。
「わかる?ここまで入ってる」
「……」
いやいやと首を振るとくすくすとカイは笑ってそのまま形をわからせるように下までなぞって結合部を撫でた。
「きついもんね。ほら、いっぱいに開いてるのわかる?」
「………」
子供のように首を振る俺の耳に吹き込むように呪文を唱えた。
それはよく聞く祝詞だった。その最後に艶のある声で発動させる。
「ヒール」
「!!!」
結合したそこに更に暖かいものを感じて短い悲鳴を上げる。
もう熱さで死にそうだった。
体中が熱で溶かされたような錯覚。
それにとうとう最後まで言いたくなかった言葉が口から零れた。

「俺は…っ人殺しなんだっ…何の罪も無い人も…父親と…母親と兄弟も殺したっ…だからっ…」

「そう…でもね?…神様の所になんてまだ行かせないよ。俺が行かせない」

何を言われてるのかわからなかった。
なぜ彼がそんな事をいうのかわからなかった。


「だから観念して俺の手の中に堕ちて?」


そう言って笑った顔は天使のまま目だけが獲物を見定めた獣の光を浮かべていた。
だがそれを見ることもできずいきなり動き始めたカイに声を引きつらせるしかなかった。
カイから与えられているのだと思うと痛みですら別の何かに変換されていく。
息苦しさと内臓を押し上げる苦しさは激しくなっていたけどそれ以上に体中を駆け巡るのは最初に感じた以上の快楽だった。
足を限界まで押し広げられたまま受け入れられたそこに感じるのは灼熱で。
内壁を摩られると同時に自分の腹で擦られたものが固くなっていくのがわかった。
それは限界まではちきれんばかりになってすでに雫をこぼし始めていたけれどもカイの見ているところで出したくなくて懸命に堪えた。
だがそれにさらにカイの手がその根元を指で輪を作って締め上げた。
「ひっ!!!!!」
「もう少し待って。もう少し感じていたい」
「やぁーっ」
その刺激に開放しかけたがそれをせき止めるのも同じ指で。
出せない事がこんなに苦しいだなんて思わなくて何度も首を振った。
その間も中では熱が体のさらに奥を突いてきてその激しさに体中が痺れを起こす。
もう限界だった。
「出すよ?」
「だ、ダメ!!!カイ!!!!カイー!!!!」
カイの言葉に叫んだのは最後の理性だった。
出されてしまえば意味はわからなくとも行為が成立してしまう。
それは本当にカイを汚してしまうと思った。
「んっ!」
「んぁぁぁぁぁっ!!!」
だが、離された指と奥壁まで激しく付かれた衝撃で意識がとんだ俺の中で同時に熱が爆発したのを感じて
その激しさにそのまま意識を失った。







ふっと意識が浮いたのは頭の下にあったものがわずかに動いたからだった。
ぼうっと目を開けたまままたうとうとと意識が落ちていこうとしたがまた頭の下の枕が動き、それどころか自分の髪を撫でるに至って一気に覚醒した。そこから離れようとして逆に抱き込まれ背中に人の熱を感じて混乱した。
「!!!?…!!!?」
「ラン、俺だよ。大丈夫だから大人しくして?」
聞き覚えのある声が届いて少しだけほっとしたが今後は逆に動けなくなった。
腕の拘束は解かれていた。
自分の体に回されている彼の腕はいつもの固めの聖衣はなく背中や足に感じる体温も直肌に感じるのはなぜだろう。
それどころかいらぬ所に感じるものはあってはならないもののような気がする。
「ー!!!?」
「あ、これはね?ランの中があんまり気持ちよくてさ」
そう言ってカイは腰を少し動かした。
それにびくびくっと体が反応する。
そうだ。俺は彼の手の中に欲望を吐き出して、そして体の中で彼のそれを受け止めたのだ。
そしてまさかそのまま入れっぱなしにされているとは思わなかった。
というか気づかず寝ていたことが恥ずかしい。
耳まで赤くなって逃げ出そうとするのをやはりどうやっているのか押さえ込まれてしまう。
「カ…カイ…」
「逃げ出そうとするほどの元気があるならまだ大丈夫だね。今度はランの最高に気持ちいところ見つけてあげるからね?」

何が『大丈夫』で、何が『今度は』なのか。
どう考えても俺にとってあまり良い意味では無い気がして血の気が引いた。

「何でっ」
下に伸ばされたカイの手が俺の物をゆっくり根元から撫で上げた。
ぞくぞくと背筋は知るものを押さえ込むように指をかんで声を殺した。
だがそれもカイの手にはずされる。
「指が歪むよ?声は殺さないで」
「いやだっ…何でこんなことすんだよ…っ」
「何故って君の事が好きだからだよ」
「!!!!」
「離したくないから捕まえてる」
好き?
カイが?俺を?
俺は懸命に首を横に振った。
「ランは俺のことが嫌い?」
「っ」
嫌い…なわけない。
こんなにひどい事をされても俺は彼を嫌えなかった。
初めて目が覚めたとき頑なな俺にずっと微笑みと優しさをくれた。
彼の声は何故だか心に響いて消えなかった。
それが何故だかわからないままただ彼を穢してしまうことが怖くてその感情ですら消そうと考えていたのに。
今もこんな所でカイを感じてしまっているのが信じられない。
だが言葉に詰まっている間もカイは動きを止めようとしなかった。
動くたびに硬くなっていくカイのものに摩擦されて収まっていたはずの甘い痺れがまた蘇る。
緩やかだが体の中をかき回すそれに思考をかき乱された。
なんて恥ずかしいんだろう。
両手が自由になっても繋がっている事で逃げられない自分。
塞ぐものが無くなった口から自分のものとは思えない熱い吐息が溢れる。
言葉にならない声にまたまぶたの奥が熱くなる。
「やっぱりこの体制じゃあんまり動けないな。ランちょっと我慢してね?」
体は密着されたまま横抱きにされていたのがうつ伏せにされて腰を高く上げられる。
「ーー!!!!」
中を抉る衝撃に声にもならなかった叫びがシーツの上に落ちる。
最初のダメージもあって体のあちこちが悲鳴をあげているがそれにもかかわらずカイは容赦なく俺の体の中を深く抉った。
「ひっ」
「ん…っ」
軽いはずの自分の体が信じられないくらいに重く感じた。
抵抗などもう考えられなかった。
やがて角度を変えて中を突かれていく中で明らかに他とは違う反応を感じたところがあって体が反射的に激しく痙攣した。
「ラン?…ここ?」
「やぁ!!!!ダメ!そこっ!!!」
「ここがいいんだね?」
「ああっあー!!!」
確認するように緩やかにそこをカイの先のほうで擦りあげるのに一気に熱が上がるのがわかった。
信じられない、自分の中にもう一つ性器があるような錯覚を覚える。
「やめっ……ひっ」
細かくそこだけを付かれて体の力が入らずにいるのを彼の手が支えて更に逃げないように腰を上げさせた。
そして出るぎりぎりのところまで引いた彼に止めてくれたのかとほっと体の力を抜いたときを見計らってまた中に押し込んできた。
「やあぁぁぁぁ!!!!」
それはさっき場所を強く抉って更に奥の内壁まで届いた。
その衝撃にじわじわと溜まっていた熱が開放されびくびくと体を痙攣させた。
そしてまた中でカイのものが溢れたのを感じた。
「ん…。まいったな…我慢できなかった?」
優しくだが言われた台詞の内容に顔に血が上り腕でそれを隠した。
「そんなに気持ちよかった?いっぱい出したもんね。ほら、俺のも出したのわかる?」
「っ」
まだ硬いそれが動くと内壁がカイの吐き出したもので濡れているのがわかった。
いっそう言葉に詰まるのをカイは楽しげに笑う。
「ランが俺の事を綺麗だと思ってるならそれでもいい。俺が君を内側から綺麗にしてあげるから、逃げないで?」
また緩やかにうごくそれに俺は甘い悲鳴をあげることしかできなかった。




かくしてそのまま日が差し込んできてまたいつのまにか暗くなるまで、途中場所をバスルームに移されながら主にベットで過ごすことになった俺は途中気絶しても甘い仕置きに起こされ、擦れて熱を持つそこにヒールで何度も癒され、吐き出すものが無いと泣いてもずっと揺らされ続けた。
そんな中で何度も何度も「逃げないから」と「一緒にいる」と約束させられてしまい…こうして今ここにカイの隣にいる。


どうしてこんな事をしたのか誤魔化す様に笑って理由を言わなかったカイに彼の幼馴染の剣士が「一目惚れだったらしくてさ」と教えてくれて俺は耳まで真っ赤になった。
余計なことをと幼馴染を殴った司祭は俺が思っていたよりも乱暴ものだったけれど、ちょっとでも嫌いにはならなかった。



「死にかけていた君にね、俺は『楽になりたいか、それとも癒されたい?』と聞いたんだ。そしたら君は『神の身元に』と言って微笑んだ。それを見たらね。どうしても神様にあげたくなくなってしまって連れて帰ってしまったんだよ」
そして傷も癒えて大丈夫だと判断した彼は俺の生まれた町に行き俺の事を調べていたらしい。つまり何もかも知っていたことになる。
「乱暴な手段だったけど、ランを逃がしたくなかったら他に手段が思い浮かばなくて」
そう言ってキスしてくれるたびにあの日涙腺と共に壊された冷たい心があったところに何か別の暖かなものが流れ込んでくるのがわかった。
彼は笑ったといったが、どうやらそれはその時だけでいまだ笑い方が思い出せない俺にカイは俺の分まで笑いかける。

「幸せになろうね」






初めてこの手を人の血で染めたのは物心ついた頃だった。
最後に殺したのは二年前両親と兄弟を。

心を凍らせれば何も感じることは無かったはずだった。


希望も未来も何もいらない。
救いもいらない。



だけど。
今もそう思ってるけど。


「ラン?泣いてるの?」
暖かく抱きしめられるこの腕を、優しい声を無くしたくないと。
そう思った。



…AND CONTINUE?








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


すいませんむちゃくちゃエロが書きたかったのですよ〜。
然し…上から下までエロ。途中手抜きっぽいのはご勘弁。
初めての投稿がエロ。……。(ちょっと考えてしまったらしい)

黒髪紫瞳と悪魔のような配色の実はまだこれでも猫かぶりの鬼畜プリースト様と
金髪朱金の天使のような外見のずーっとダンジョンに篭っていたせいで箱入りに育った純真無垢な感情欠落アサシン君です。
お年はプリが20歳アサが15(でも外見19ぐらい)。は・ん・ざ・い・で・す。プリ様。
あぷ絵板に彼らをちょろっと書いているので外見の参考までに。

どうでもいいことですがナイトの名前はバーン君といいます。
プリアサナイトの順番で名前を並べると、あら不思議。
……………………すいません。こんな適当な名前の付け方で。

最後まで読んでくださいましてありがとうございました。
多少設定が甘いところがございますが
他にもラン君視点ですが他にもカイ視点バーン視点で話がありますのでそれも読んでいただければ嬉しいです。
世間知らずなランはカイのことをそれはそれは善意に見てますが彼の幼馴染バーンから見てみれば外面のいいだけの腹黒い策略プリーストですからそこら辺がかければいいと思います。


トナミミナト拝


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