「…楽になりたいか?それとも癒されたい?」

こんな光もあまりない場所だと言うのに彼の金色の髪が血だまりの中で輝く



先ほどまで華麗に闇を切り裂いていたジュルの光も持ち主から遠く離れ二つに折れていた。
魔物を切り裂く金色の暗殺者。
噂に違わない戦い振りをもっと見ていたかったが、途中折れてしまったジュルがそれを終わらせた。
新たに溢れ出した魔物たちに嬲り殺され地にふした金。
それを綺麗だと思った。
まるで貼り付けにされた蝶のように。
だから起こした気まぐれ。
本当は誰かを蘇生しようだなんて考えもしない俺だったから、後ろにいた幼馴染のナイトは驚いたようだった。
息も絶え絶えな彼…アサシンは朦朧とした意識の中で微笑んだ。

「…もう、…許される…のなら…神の…身元に……」

それは生まれたばかりの赤ん坊のように純粋な笑顔だった。




ANGELIA



「ラン。はい、あーん」
そう言いながら俺が差し出したスプーンと俺をとまどったように見比べるのは金色の髪の青年。
ベットの上に体だけを起こして、「どうしたらいいのかわかりません」と顔に書いている。
彼にウサギの耳が着いてたらさぞかしピルピルと打ち震えていただろうに。
ああ、それはかわいい。
そういえばたしかバーンがカプラさんに預けていたものがあったはず。
今度取って来させるか。
でも猫耳でもいいなぁ。
「あ…、あの」
自分で食べれるという意思表示でもしようというのか。
なんとなくそう言ったものを感じ取って
「ん?どうしたの?気分悪い?ごめんね俺のせいだね」
気遣う振りしてちょっと視線をそらして落ち込んで見せれば金色の彼は…ランは慌てたように俺を見る。
「い…っ。いえ…ち、が…」
俺のせい。
そんな言葉に過剰反応して耳まで赤くなって泣きそうになっているのは一週間前に拾ってきたアサシンだった。
暗殺者一家に生まれ家業を継ぐべく育てられ、ある事件の後は2年近く洞窟の奥でモンスター達と命のやり取りを繰り返していたせいか、多少言葉というものに慣れておらず自分の意思を伝えることがかなり難しいらしい。
18・9に見える外見でも本当はまだ15歳。精神年齢はさらに未熟だろう。
そのアンバランスさがまた一段と加虐心をそそるのだ。

うーん…むちゃくちゃかわいい。
これはもっといじめたくなる。

「俺のせいでしょ、ランと一緒にいたくて一日中抱きしめて(それ以上のこともしたけど)離さなかったのは俺だから。それにそのせいでランはこうしてベットからも降りられないんだから俺は責任とって君の世話をしたいんだよ。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
笑顔でそう言えば昨日のことが思い出されて恥ずかしくなったのかもうすでに赤くなっていた顔がトマトのようになってシーツをかき集めてそれに伏せた。
湯気が出そうなほど赤い。
そして食べてしまいたいほどかわいい。


さすがに昨日の今日で手を出すほど飢えているわけじゃないのだが、思わずいたずらはしてみたくなるかわいさだ。


持っていたスープ皿にスプーンをつっこんでベットサイドのテーブルに置いた。
そのまま蹲る彼の柔らかな髪をすき、耳元でささやいた。
「ラン、そんなに俺の顔を見るのはいや?俺のこと嫌いになった?」
取っておきの低い声で囁けばびくんと肩が震えていっそう小さくなる彼の姿が楽しくてそのまま抱きしめる。
「〜〜〜〜〜っ」
触れられるのが苦手な彼がカタカタと腕の中で震えるのがかわいかった。
彼が人の体温が苦手なのは知っていた。
生まれながら天才的な暗殺者としての才能を持っていたランは両親の技を余すところ無く受け継ぎ、幼少の頃から人を殺してきたらしい。
その世界で人のぬくもりなど教えるものは誰もおらずそして人の世界からも逃げてきた彼にとってその温度は落ち着かないものなのだろう。
触れてきたぬくもりはすべて死に逝く人間のものだけだったのだろうし。
しかし最初の頃問答無用に払われたことに比べればこうして大人しく抱きしめさせてくれるのは大きな進歩だった。
そしてそれはあることを俺に教える。


人の体温を怖がるのはその暖かさが欲しいから。
触れられるのを怖がるのは自分が汚れていると思っているから。
触れたぬくもりが消えることを何よりも恐れるのだ。


だから俺は多少乱暴な手を使ってでも彼を手に入れたかった。
少しづつ慣らしていこうとするのはむしろ逆効果だと判断したこともある。
そしてそれが間違っていなかったと知る。

ぴくっと体を震わせてランの震えが止まる。
「……?」
その時部屋をノックする音がした。
びくっと体を震わせて他人を警戒するランに内心舌打ちする。
邪魔しやがって…。
ここを訪れるものは限定されているので尋ね人もすぐにわかった。
「カーイ。お、ランも起きてるな」
返事も聞かずに入ってきたのは案の定幼馴染のナイトだった。
腕には紙袋いっぱいにりんごやみかんを詰め込んで。
…見舞いのつもりなのか?

とりあえずこいつは後であらゆる手段をもって半殺しにしてくれよう。

「なんだい?バーン」
「あ?…え?」
さすが長年腐れ縁を続けてきたわけじゃないらしい。
俺の笑顔の裏に隠された本心を感じ取ったのか顔を引きつらせていた。
「だから用があったんだろ?」
「あ、いや…俺ちょっと」
「バーン?」
「邪魔しに来たんじゃないって。ちょっとソラさんと炭鉱まで行って来るから1週間ぐらいこねーから…いや本当…そんな笑顔で見るなよっ。悪かったよ、ごめんなさいっ!」
そういって紙袋を押し付けてくる。
「……………」
炭鉱でブラックスミスのソラと篭るということは新しい武器の材料を集めるためなのだろう。
「そのまま一生帰ってこなくても良いからな。めでたく逝った暁には祝いの祝詞ぐらいはあげてやる」
「…そういうやつだよお前って」
心からの言葉を投げつけるとバーンの顔が引きつった。

「そうだ。ラン」
思いついたように俺はまだ抱きしめていたランを見る。
名残惜しかったが回していた腕を放し俺は自分の首に架けていた十字架をはずした。
落とさないように頑丈なチョーカーになっているそれを、戸惑うように顔をあげたランの首に掛けてやる。
「!?」
「動かないで?」
首の後ろで止めてやり念のために解けないよう封の印を切る。これで俺以外誰もこれを取ることはできなくなる。
「これ…聖職者の…」
ランが戸惑うのもわかる。

このクルスは聖職者の第一関門であるアコライトになった時に教会から支給されるもので一人一人微妙に形が違う。しかも最初の祈りをささげることによってそれに自分の気を込めるのだ。
いわばたった一人のためのものでそれを聖職者は死ぬまで身から離さないとされている。

「何も死ぬことだけが懺悔の道じゃない。祈ることも大事なんだ」
「でも…これは大事なっ」
だめだと首を横に振ってはずそうとするランを遮って俺はランの手をクルスに添えさせた。
「俺はもう一個持ってるから。だからもらって?」
「………」
懸命に横に首を振るランだったが、俺が諦める気が無いのを感じ取ってか手の中のクルスを握り締めた。


薄いカーテンから柔らかく日が差して彼の金色の髪が輝いていた。
朱金の目を閉じて、その前で大事そうにクルスを両手で包むように握り締めている。
彼の周りで祈りが淡い光となって彼を包む。
それに目を見張る。
ランは本当に神に愛されているかのようだった。


「…何か…綺麗だな」
隣でバーンがポツリとこぼした言葉に内心同意する。
俺などよりよほど聖職者に向いていただろうに。
生まれのせいで人生を狂わせたのは俺も一緒だったが、だがしかし…彼が聖職者の道を選んでいたらきっと俺はこうして彼に惹かれはしなかっただろう。
ただ綺麗なものだったのならば。

「でも、いいのか?あれお前の死んだおふくろさんのクルスだろ」
ランには聞こえないように小声で聞いてくるバーンに俺はランを見たまま口の端をあげただけで何も言わなかった。
バーンもそれ以上は何も聞かない。

あれを俺が身に付けていたのは自戒もあった。
この内に流れる異端の血を否定するための。
だがそれ以上に意味のあることに気がついたから。

長年身に付けている物にはその人物の気が込められている。
つまりあのクルスは俺の気を受けていて身から離している今もそれを感じることができる。
そんなに遠く離れていなければ彼を見つけることもたやすいはず。

おそらく未だに俺から離れようとするだろう彼を繋ぎ止めるための物なのだそれは。


「ふふふ…」
「……………何か、たくらんでるだろ…お前」
「なんでもない。ほら、恋人が待ってるんだろ?とっとと出て行け」
バーンが余計なことを言う前に部屋からたたきだして俺は、クルスを大事そうに握り締めたまま子供のように見上げてくるランに微笑みかけた。
「気に入った?」
そう聞けば、ためらうようにだが確かに小さくこくんと頷く。
「あ……ありがとう…」
「大事にしてね」
前髪を掻き揚げてその額に優しく口付けを落とす。
頬を桃色に染めるランはそれはそれはおいしそうだったがここはあせらずじっくりと。

「さ、食事の続き。続き」
俺はスープの横に置いてあった柔らかく焼いたパンに蜂蜜をたっぷりとかけてフォークと一緒にランに渡した。
ようやく自分で食べられることにほっとしたのか柔らかくなった表情が次の瞬間なぜかこわばった。
おそらく蜂蜜の香りに思い出すものがあったんだろう。
「どうした?」
「…っ?………」
確信犯の笑顔をまだ見抜けるほどこの子は人生経験が豊富なわけじゃない。
徐々に赤くなるランを俺は楽しげに見ていた。


時間をかけてゆっくり俺の手で食べさせるというシチュエーションも良かったが。

まぁ。
昨夜さんざん下のお口に食べさせた蜂蜜を、今度は上のお口に入れられるのをじっくり見るというのもなかなかこれはこれで。

かなりおいしいとおもった午後の昼下がり。









…AND CONTINUE?




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せ…セクハラ…。
ちゃくちゃくと天使を手の中に閉じ込める策略を企てていく変態悪魔…。
甘ーい鬼畜が何だかこの二人には欠かせない様でございます。
とうとう首輪まで…。大笑)

カイも何か抱えているようです。まぁ、たいしたことはありませんが。←けろっと。
カイはINT−DEXマグヌス使い(こういう性格なもんで。本人も何か考えることがあるので何を差し置いてもマグヌス。司祭というより退魔師っぽいイメージです。ここまで来るのにかなり苦労してるのですが・・・)
ラン君はカタール型クリアサ希望で。おそらくフェイヨンにでもいたのでしょう。それくらいのレベル。
家に伝わっていたトリプルクリティカルジュル持ってましたが(…だから2年も篭れたということで…)もう壊れてしまったので新しい武器が必要だなぁ…。最高の武器を持っていた暗殺者に今度は何をもたせるか…それ以前に金持ってるのか?

次はバーン君(20)視点で、恋人のブラックスミス・ソラさん(30)などが出てきてのお話でございます。
第三者の視点からみたカイとランのお話です。
何かまた長くなりますよー。良かったらでいいので読んでいただければ。



トナミミナト拝





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