私は鷹である。

ハンター協会で生まれ、ハンターの役に立つように育てられてきた。
訓練は厳しかったが共に歩める相方の事を考えるとそれもまた必要なことと考え頑張ってきた。

そして一人前の鷹になってから私は幾人かのハンターと組むことが出来た。
私はそのたびに新しい名前を与えられそのハンターに付き従ったが、相手と相性が会わなかったり人間の方が先に死んだりと何度かギルドに戻されることもあった。

そして今日。新たなハンターがこのギルドを訪れた。
伸ばした薄茶の髪を頭の天辺で括ったまだ年若い…そろそろ青年に差しかかろうとしている少年。
おそらくハンターに成り立てといったところか。
果たしてこの少年は私のパートナーとなりえるのだろうか。
少々不安に思った。

彼は私を見たとたん、子供のように目をキラキラさせた。

「うわぁ!すっげーかっこいい!!!お前、男前だなぁっ!」

…うむ、頼りなさげな若造だがなかなか見る目はある。


「俺はリング!これからよろしくな!…えーっと…お前の名前を決めないとな。んー」
新しく主になる少年は私を見て小首をかしげる。
そして思いついたようにぽんっと手を打った。

「…クリス!お前の名前はクリスな!」

そう、嬉しげに笑った。


そしてまだ、15,6だろう…この新しい主が差しだした手に私は飛び乗ったのである。








BEST PARTNER








「はードキドキする…」
主は自分の胸を抑えながら息を吸ったり吐いたり落ち着きが無い。
「もう、いるだろうな…。えーと、まず最初に会ったら普通の態度で。それで、」
露天並ぶ大通りを通り抜けたところで主は何を思ってか立ち止まってしまった。
目の前で可愛いアコさんがポタ屋をやっているが主はまるで見えていないかのようだ。
「男は度胸男は度胸。転職したら告白するって決めただろーが、俺!!」

…主よ、声が漏れている。

「すいません時計ありますか!!?」
そして無駄に声がでかいのだが。
何を張り切っているのだ、主。
アコライトさんは驚いたようだが、こんな不審人物にでも丁寧に対応してくれた。
なかなか肝の据わった女性である。
主が、懐からいくらかの金を出して彼女に渡した。
「…どなたかに、プロポーズでもされるんですか?」
アコさんがポケットから青い石を取り出しながら主に笑顔を向けた。

何、主よそうなのか。
子供だと思っていたが、もう番(つがい)を見つける年頃であるのか。

「え!!?ええ!!?いや、まだ付き合ってもないしっ、いや、な、何で、それをっ」

…何故も何も無いだろうと思うのは私だけだろうか。

というか、あんな大声で言っておいて今更真っ赤になってバタバタしてるのは天然なのか?
こんな阿呆に私は付いて行くのか…?
ちょっとギルドに帰りたくなったぞ。

「うまくいくと良いですね」
「あ、ありがとう…」
さすが聖職者、アコさんである。
優しい言葉に、主はいっそう赤くなって照れていた。
彼女はにっこり微笑んで青い石を両手で包むようにして祈りをささげる。
すると主の足元から青白い光が上がった。
私も乗り遅れないように主の肩に乗った。
「ワープポータル!」


そうして年若い主に連れられて行った先は人間がよく時計塔と言う所だった。
その出入り口で聖書を持ったこれまた若い男プリーストが壁にもたれて立っていた。
主と同じくらいの年頃だろうか。
割と整った顔をしている。
清潔に切り揃えられた青い髪の上にはビレタが乗っていて、手にはくたびれた聖書を持っていた。

私はまず、周囲を確認することにする。
他に主の告白相手がいると思っていたのだが、どうやらまだ来ていないらしい。

だが、立っていたプリーストが主を見ると相好を崩して体を起こした。
「おお〜…ハンター転職おめでと〜!」
どうやら彼は主の知り合いらしい。
「へへへ〜…これでやっとお前に追いついたっ!見てろよ、そのうちレベルだって超えてやるからな」
主は落ち着き無くプリーストに走りよりポンっと気安げにその肩を叩いた。
プリーストはニヤリと笑って
「お前が上がる頃には俺も上がってんだよ」
「あーむかつくー!!!」
そう言いつつも楽しげなのは何故だ、主。
「ま、それはそうとして。ほら、これ転職祝い」

そう言ってプリーストが主に渡したのは服につけるクリップだった。
それを見て、主が固まる。

「これ…ヒルクリ…?」
「お前、INTもあったろ。偶然ビタタカードが手に入ったからさ」
プリーストはにっと笑って見せたが、主は手の中のクリップをじっと見ながらだんだん不機嫌になっていくようだった。
「いらねー!」
ドンっと突き返す。
そしてプリーストに背中を向けたまま時計塔の中に入っていった。
「おい、リングー!?」
突っ返されたクリップを持ったままプリーストが後ろから追いかけてくる。
そのまま横に並び、そのまま二人が競うように歩き出したのを私は後ろを付いて行きながら眺めていた。
「リング、何怒ってんだよ!」
「うるせーよ!!黙れお前なんか嫌いだどっか行けー!!!」
「はぁ!!?」
どうやら彼は主の機嫌を損ねてしまったらしい。

途中でデビルチがやってきたが、プリーストがすかさず自分と主に速度増加をかけた。
こうしてデビルチを振り切り、途中であったアラームやバフォJrまで振り切り、ついでにアーチャースケルトンから矢を射掛けられたのをニューマまでかけて振り切って二人は止まる事無く進み続けた。
私まで振り切られては洒落にならないので必死になって付いていく。

走るように突き進みながら怒鳴りあってる二人を、途中で会ったパーティはみな目を丸くして見送っている。
鷹を連れてるハンターもいて、私は少々恥ずかしい思いをした。



…ここでそろそろ一つ質問しても良いだろうか。

この二人は何をしにここに来ているのだろう…。
てっきり狩りだと思っていたのだが、私の気のせいだったのか?
今日は徒歩競争の日と決めているのか?主よ。

それに主は本日人生の転機とも言うべき愛の告白をするのではなかったか。
こんな男に構ってどうするのだ。

「どうせお前一人でも狩りは出来るもんな、良いよな殴りプリってのは回復も出来て!」
「何だと!?」
「あんなもんくれなくたってなぁ!俺のことが邪魔だったら言えば良いだろ!俺とコンビ解消したいって!!!」
そう叫んだ主の肩をプリーストが掴んでおもむろに壁に押し付けた。
激しい音に驚いた私は主から離れ頭上で旋回しながら二人を見下ろした。
「ちょっと待て、何でそうなる!!!!」
「だってそういう事だろ!お前がいればあんなの必要ないじゃないか!!!」
痛みに眉を潜めて主がそう叫ぶとその場の空気が止まった。

ああ、主。それはちょっと…。
まずい言い方ではないか…?
案の定、プリーストの手が震えていた。

「…お前だって、この間…これがあれば一人で狩りする時大分楽だって言ってただろうが」
プリーストが主を睨みつける。
ぶち切れ寸前という顔だった。

私はそれを見守りながらふっと今主がいる部屋の端にアラームが一体沸いたのに気が付いた。
それがカタカタと歯車の音を立てて主達に近づいて行くのである。
私は慌てて一声鳴くが、主達は気がつかない。
ああ、…もう一体増えてしまったではないか。
主よ、主!
早く気が付いてくれ!

「どうせな、俺は殴りだよ!中途半端なバランス系だよ!金のかからない回復剤だろーよ!」
「んな事言ってねーだろ!!」
「言ったも同然だろ!!?」

いや、だから。
そんな場合ではないのだ。
ああ、三体目が沸いてきて主達はもう囲まれようとしているではないか!

「言ってねー!!」
「言った!!」
「何時何分何秒に言ったよ!」
「んなガキみたいな事言ってんじゃね―よ!!!ハンターってのは頭足りてねーんじゃね―か!!?」
「プリーストなんて考えすぎて頭ガチガチじゃねーか、将来立派に禿げやがれこの頑固プリースト!!」
「俺はお前のことを考えてだなっ」
「うるせー馬鹿触んなっ!ちくしょー!!何も告白しようとした日にこんな事言うこたねーだろ!!!馬鹿クリス!!!」

ようやく名を呼ばれて私はばさりと羽をはためかせる。
やっと周りの状況に気がついてくれたのだな!?主!!
ブリッツビートはまだ取っていない主だが、この非常事態だ。
飛んでやるから、とっとと矢を射ろ。


だが、主は私に命令はせずに俯いたまま口を抑えて黙り込んでいた。
主の耳が真っ赤に染まっていくのが頭上から良く見えた。
……主?

「…告白…?」
プリーストは顔の見えない主をじっと見つめていたが、背後のアラームに気がついて主の腕を掴んだまま慌ててその部屋から逃げ出た。
「ここじゃ、ゆっくり話も出来やしねぇ。戻るぞ」
プリーストはポケットから青い触媒を取り出して床に放り投げる。
先ほどのアコさんとは違ってずいぶん乱暴な男だ。
出来たポタールに嫌がる主を蹴りこみ自分も入る。
私も慌ててそれに入ろうとしたが、目の前で青い光が消えた。

「……………!!?」

何てことだ。

私は置いて行かれてしまったらしい。

主が誘拐されてしまった私は…呆然と二人が消えていった場所を見るしか出来なかったのである。




そして、何とか時計塔からばさばさと逃げ帰った私は遠く離れた土地にあるハンター協会に戻った。
誘拐されたのだ言っても主が私を置いていったことには変わりは無い。
そんな私が戻れる場所などここしかないのである。
借りられて1日と経っていない帰還にギルド職員は目を丸くしたが、私はそれに構う事無くいつもの止まり木に泊まって不貞腐れていた。

翌日半泣きで主があのプリーストと迎えに来たが私は背を向けたまま答えなかった。
二人はちょっと疲れているようにも見えたが昨日喧嘩した事が嘘みたいに仲がいい。
どうやら仲直りしたようだった。

それがまた面白くないのである。

それでもこの数いる鷹の中から一目で私を見つけ出し、何度も何度も必死に拝み倒すので、今回はそれにほだされてみる事にした。
なかなか私も心が広い。

「あー…良かった。ごめんなー、もうお前を置いてったりしねーから」

主よ、わかったから頬擦りするのは止めてくれないか。
くすぐったいのである。

「目が覚めたとたんに叫びやがって…。だから言ったろ、大丈夫だって」

隣でプリーストが面白く無さ気に欠伸する。
はっきり言ってお前が元凶である。
お前は反省しろ。

「だって普通心配するだろ。あんなとこに置いて来ちゃってさ。なー?ク…」

主は私の名前を呼ぼうとしてぴたりと止まった。

何事だ?

「ああ、そういや名前もう決めたのか?この鷹何ていう名前なんだ?」

うむ、よく聞いてくれた。
この挙動不審な主にしては中々良い名前を付けてくれたのである。
さぁ、主。
この私を置き去りにしたアホプリに、堂々と私の名前を告げてやるがいい。

「あ、あ、いや、そのっ」
「?だからなんだよ」
だから、主?


「ポ、ポチっ!!!」





…………(゚Д゚)ハァ?




「ばっかか、お前。犬じゃねーんだぞ」
それでもくすくすと笑うアホプリの目が昨日よりも優しい。
「うるせー!」
主は真っ赤になって先を歩く。

その姿を見て私は漸く気がついた。

あの時、主が叫んだのは私の名前ではなく、このアホプリーストだったということに。

昨日告白すると息巻いていた相手もこの男で、そして、どうやらこの二人が昨日想い合う仲になった事。
私達鷹はオス同士で番う事は無いが、この人間というのはどういうことかまれにそういう場合もあるのだと人生経験豊富な私は知っていた。



しかし、主…。
それにしても趣味が悪すぎるではないか?
私は、あの時計塔までポタってくれたアコさんくらい可愛い女の子を想像していたというのに。
何があって、こんなのを選んだのだ。



そして、何よりショックなのは今から私の名前がポチになってしまった事だ。


怒りにフルフルと羽根が震えた。
はっきり言ってこんなあほな名前を付けられたのは初めてだった。
何たる屈辱。
このアホプリが主に私の名前を今この時聞かなければ、まだ主は他に良い名前を考えてくれたのかもしれないのに。
それを、急かすように聞くものだから…っ!!!
しかも最初、私にこの男の名を付けた理由がわかった。
それはこの男と私が同じ茶の目を持っているからだったのだ。



…しかし私は大人であるからして、大人気ない態度は取らない。
先ほど多少すねて見せては見たが、この新しい主の事は生きが良くてそれなりに気に入っていたのだ。

だがそれもこの男が…っ。

「わぁ!!?」
私はアホプリに突っ込んで蹴りを入れるとそのまま彼の腕が届かない空まで上がって一声鳴いた。
宣戦布告の意味も含めて。

下でアホプリのクリスがなにやら「降りて来い」だの「焼き鳥にしてやる」などと叫んでいたがこれは無視することにする。


すべては貴様が悪いのだ。


主が「俺のポチに何言ってやがる!」と叫んでいるのを、悲しくも誇らしげに思いながら旋回する。





とりあえずこれからも主の周りにいるのだろうこのアホプリに、嫌がらせを欠かさないようにしようと心に誓いながら。
















++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

また色物っぽくてすいません。
ハンタ萌えというより鷹萌話…?猛禽類大好きなんですよ…。
鷹連れてるハンタさんが大好きです。

しかしこういう話ってどうなんでしょう…。
優しく生暖かい目で見守っていただけると…。

カップリングもね…ハンタプリ?プリハンタ?どっちですかね。
何となく珍しくリバOKぐらいの勢いで書いてましたが。
ああ、でも「今日は俺が上だかんな!」って息巻くハンタ君に「じゃあ、先にイった方が下と言う事で」 と丸め込むプリってのも中々…。(なにがだよ)
尚、このお話はフィクションですので。…本気でフィクションですから!
(何言い訳かましてますか、私)


ここまで読んでくださってありがとうございました。




トナミミナト拝














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