a bolt from the blue...
〜これもまた日常〜






例の酒場には俺とエリックしか居なかった。
こんな明るいうちから酒場に居るのはろくでもない奴と相場は決まってる。
俺も昼前の軽い狩りに行く時に暗い顔のこいつに会わなければこんな所には居なかっただろう。



「…僕…聖職者には向いてないのかもしれません」


出合った頃の幼かった顔立ちも少しはましになったかと思いきや、ジュースの入ったコップを両手で握り締めてそんな弱音を吐いてみせるアコライト。
レベルで言えばもうすぐ俺と同じプリーストになろうかというところだ。


「じゃあ、やめるか?」


そう言って見せればびくっと肩を揺らす。
それに内心眉を潜める。


…昔は即座に噛み付いてきたのにな。
こりゃ、かなり重症かね。


俺は短くなったタバコを灰皿で潰した。

「カーティスさんにはわかりませんよっ」
「そうだなー、俺は支援じゃねーし?」
からかうように茶化してやれば、またうーと唸りながら泣きそうな顔をする。

「…何でそんな事言うんですかー。殴りとか支援とか…本当はそんなこと思ってないです…」

ああ、もう涙までためんなって。
子供いじめてるみたいで落ちつかねえんだよ。




エリックが悩んでいる事は、簡単に言えばPTメンバーを死なせてしまう事への不安だった。
といっても実際死ぬ方の不安ではない。

冒険者には冒険者の証となるカードが配布される。
このカードを紛失や破損しない限り、これを解して命の保障を得る事が出来る。
生命維持装置として働き、カプラ嬢の召還やプリーストのリザ、イグ葉などによりまた動けるようになるのだ。
要するに死にはしないといった方が早いか。

ただしペナルティとして冒険者としての経験値は削られる事になる。

早くレベルを上げたい冒険者によってはこれを嫌うものも少なくは無い。
逆にそれ故にプリーストに求められるものも大きくなるのだ。

そしてその事に胸を痛めるプリーストも多い。
エリックもそうだった。


しかも今日組んだ相手を死なせた際に散々言われたらしい。
それも自分で支援し辛い行動を取っておきながらだ。
俺だったらこんな所でめそめそするんじゃなくて、その場でそいつに止め刺してるぞ。
話を聞きながら腹が立ってきた俺はテーブルの上に置いていたタバコの箱を指先で弾いて一本取り出した。

「お前は責任感が強すぎる。殺したくて殺すわけじゃねーんだから、それは仕方ない事だろう」
「でも、すごく申し訳なくて…」
エリックは、はぁ…とため息をつく。
「特にこのレベルだと転職も近いでしょう?早く転職したくて焦ってる人もいて…正直臨公もあまり行きたくないです」

たしかに殴りプリでもうすでに割り切っている俺に、エリックの正確な苦しみはわからない。



それでも、基本的には同じ事なのだと思う。
どの職業でも一度は思う事なのだ。

本当にこれでいいのか。
あの時こうすればよかった。
もっとどうにかできたはずなのに。
他に方法があったんじゃないのか。

えも知れぬ不安が急に胸に込みあがってくる。
それに支配されそうになる。

今回のエリックのこれも、きっかけはデスペナでもその下はこれがあるのだろう。


人は、前に踏み出す事を躊躇する時期がある。
自分にかかる責任を知ってその重さに焦りを覚えるのだ。
きっとこいつもいろいろなことを知ってその時期に来たのだろう。


「ガキだガキだと思っていたが…」

昔大泣きしてくれた頃の事を思い出す。
あの頃支援の練習をしたいといってプリの俺に辻をしてくれたっけな。たしかに懸命に走っていたあの時期には考えもしなかった重みだろう。
だがこれも……。

「あの頃に比べて少しは成長してるって事かね」

ぼそりと呟いたのが聞こえたのか、エリックが首を傾げた。


その仕草に思わず笑みがこぼれかける。
それを隠すように新しいタバコに火をつけた。
そしてことさら難しい顔をしてみせる。




「こういう問題はな。プリーストになっても付きまとうぞ。むしろ重くなる。自分が選んだ職を誇りに思えんのなら、今のうちに辞めちまえ」


「……っ」

わざと突き放せばまたエリックは泣きそうなほど顔をゆがめた。
それを見ながら、でもなと続ける。


「……楽な方に逃げるつもりなだけなら、止めとけよ。癖になるぞ」



俺の言葉に震わせた肩をぐっと起こして姿勢を正す。
目にうっすら涙をためながらそれでも強い意志を込めて俺に正面から視線をぶつけてきた。



「…やめませんよ…っ。僕……この職好きですからっ」



その返事にふっと笑った。
初めて会った頃と変わっていない目の強さに安堵する自分が確かに居た。

そのままで居てくれだなんて、自分の我侭だとわかっているけれど。




腕を伸ばしてエリックの頭をぐしゃぐしゃにする。
「カーティスさんっ?」
首を竦めて抗議するエリックの顎に指を引っ掛けて上げる。
俺は身を乗り出すようにして、エリックの唇に軽く自分のを押し付けた。

ビックリしすぎて零れ落ちそうなほど目を見開いたエリックに向かって口元を上げる。


「泣き事言いたくなったらいつでも言え。懺悔でも何でも聞いてやるよ」


「………はい」




「だから、辛い事があってもそれは全部自分の心の中に置いとけよ。……その分きっとお前は人に優しくなれる」



たとえ何があっても。


きっと、それがお前の武器になるから。
















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番外というか…それ以前に萌…なのかな…。訳分かりませんね。
何か説教くさいし。それには個人的な意見が込められるのでここでは書きません。

あー…エリック君いきなりレベル上がってるみたいですね。
しかもカーティスさんからチュウされてる…。
そうか…これくらいはしてくれるようになるのか…。

すいません。逃げます。


トナミミナト拝




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