俺の名前はヒビキです。18歳です。アサシンです。

子供の頃、近所に住んでいた兄ちゃんがすごくかっこいいアサシンだったので、俺もいつかそうなりたいとあこがれていて、先日やっと試験に受かってアサシンになれました。
「転職試験用見本」のモンスターを追いかけて20回くらい穴に落ちたことなんて気にしません。なったもん勝ちです。


アサシンは身軽さを生かすので、邪魔な盾ではなく両手に短剣やカタールを持って戦います。ヒビキは頭が軽いから余計に身軽だねといわれました。褒められたはずなのにそう思えないのはどうしてでしょう。
近所の兄ちゃんは二刀アサシンでした。俺もアサシンになったあかつきには、両手に短剣を持って戦いたいと思っていました。

アサシンになるまで俺は知らなかったのです。
それがどれだけ苦労するのか。
短剣をそろえるのにどれだけ金がいるのか。

アサシンになって現実を知りました。

ああ、現実ってかくも厳しいものなんですね。兄ちゃん。













CROSS WORLD












「があああああ!!!!! スドリのおじさんのばかぁあああああ!!!!」

神器作成の人数が規定を超えたことにより、今回もまたスドリのおじさんの前で俺は両腕を上げて雄たけびを上げた。
森の中、まだガックリ肩を落としているほかの冒険者の皆さんが諦めたように消えていく中で、残っていた数人がぎょっとして俺を見たがそんなの気にしてられない。
せっかく4次が始まる前から待っていたと言うのに、このじじいと戦ってどうしても勝てない俺は今回で三戦三敗だ。
こんちくしょうめえぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!

「そんなに俺が嫌いか。俺が憎いか。俺があんたになんかしたか。そりゃ殴ったり足払いしたりしたけどあんただってしたんだからお相子だよね!? むしろあんたの方が多いから俺いつまでたってもここから抜けれないんだよね!?」

ぐあああああああああ!!!!
むっふーみたいな顔でため息つくんじゃねぇぇぇぇ!!!! スドリのくせにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!

いっそアサシンという職に恥じないように、スドリ暗殺するか! 暗殺しよう! 暗殺するしかない!
俺の野望の第一歩、錐を手に入れるためにはこのおじさんを殺っちゃうしかねぇぇぇえええええ!!!!!

ひよこのピー太を頭にのせたまま俺の唯一の武器の爆炎のカタールを抜く。
スドリのおじさんが地属性であることを祈る! 俺、力無いし!

はっ!
こいつ鍛冶屋さんとかだったりするのか!? 火属性だったら目もあてられねぇ!

「ぶはっ」

威嚇する鳥のポーズで武器を構えた俺のすぐ背後で、誰かが噴出した。
タイミングのよさに思わず我にかえった俺が振り返ると、そこには薄茶の髪を短く刈り込んだハイプリーストが口と腹を押さえて身をかがめるようにして笑っていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
「おまっ・・・・・お前っ・・・・・・・。いい・・・・いいわ・・・っ。近年まれに見る馬鹿だっ! 馬鹿!」

グッジョブとばかりに親指を立てた拳を俺に向かってびしっと決めた。
顔を上げた涙目のハイプリーストはそこそこ長身でがっちりした体格をしていた。頭にはシャープヘッドギアをしていて、顔には細身の黒縁眼鏡をしている。左の耳には十字架のピアスが下がっているのに、首のチョーカーには何もつけていない。
24.5過ぎくらいに見えるけど、転生しているのだから正確な年はわからない。ちょっと前までは年食った人の転生者が多かったけど、最近は早くして転生する人もいるし。

でも俺は何で笑われているのかわからず、げらげら大笑いするハイプリーストが気持ち悪くてちょっと下がった。それに馬鹿にされてるって事はさすがの俺にもわかったし。
だが、それ以上の歩幅でハイプリーストは俺に向かって足を踏み出した。
カタールを掴んだままの腕をがしっと掴まれる。
そして俺の顔を覗き込みながらそのハイプリーストは言った。
きつい鳶色の目がまるで鷲のようだった。

「退屈しなさそうだし、お前でいいわ。お前、名前は?」

「・・・・・・・・・・・・・ヒビキ」

なんか引っかかる物言いだけど、妙な威圧感に俺は目を丸くしながらつい本名を名乗ってしまいうろたえた。なんかこいつやばいような気がするのに何で俺言っちゃったんだろう。
ハイプリーストは眼鏡の奥で目を細め物騒に笑った。シャープヘッドギアが鬼の角のように見えた。

「ヒビキか。言いやすいな。・・・・・・俺はカノウだ。覚えとけよ」

「いや」

本能と恐怖だけで思わず拒否するとカノウと言ったハイプリーストの手の力が強くなった。

「痛っ! 何! ちょっと離せよっ!」

「いい度胸だ。ますます気に入った」

カノウと名乗ったハイプリーストは無造作につっこんだズボンのポケットから青石を出して地面に落とした。

「ワープポータル」

「え?」

転移の魔法の中に蹴りこまれた。いや、押されるとかじゃなくて本気でこいつ蹴りやがったっ!
ちょっとなんだよっ! ヒビキさんが大人しくしてるのもここまでなんだからな!
怖くなんて無いぞっ! 例えば出た先が天津のヒドラ池とかフェイヨンダンジョンのヒドラ池でも泣かないし!!! ハエの羽で飛べばいいんだし! 
・・・・・・・・・・あああああああ!!!??? スドリのとこ行くまでにハエの羽使い切ってたああああああ!!!!!!
蝶の羽はあったっけ!? ・・・・・・・・・・・・・はっ・・・・金が無いから買わずにいたんだった!!!! 歩いて戻ればいいやーとかなんで思ってたの一時間前までの俺ぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!

「ピー太!」

俺は思わず頭の上で毛を逆立てているひよこのピー太を抱える。もしすごくやばいとこだったらマジこいつが危ない。
ピー太は俺の大事な相棒だった。
戦闘の時に手助けしてくれるひよこはその見目もあいまってとにかく人気がある。人気があるということは高いということだ。それでもそんなひよこを万年金欠の俺が買えたのは理由がある。
このひよこのピー太はとにかく気性が荒く持ち主の頭をこづきまくる不良品なのだ。
すっごく安い値段で露店に売りに出されていたそいつは、不貞腐れていてすごくぶさいくな顔をしていた。
何人もの人の手を渡っていて毛並みは荒いし薄汚れていた。売りに出していた人も何度も露店に出しているのだけど売れなくて、もし今回誰か買わなかったら砂漠に放り出すしかないって言っていたのを俺が買った。
だって、砂漠にこいつ一匹放り出されたら死んじゃうじゃん。
だけど、有り金全部はたいて買ったこいつをドキドキしながら頭に乗せた瞬間ソニックブロウ並みの速さでこづかれまくった時には、マジで砂漠で干からびさしてやろうかと思ったけど。
それでもやっとピー太も俺が毛づくろいしてやればまったりするくらいに馴れてくれた頃だったのだ。
もし、ここで敵に襲われて死ぬようなことになったらせっかく上がった親密度がまた下がるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!(注:下がりません)

「おい。こっちだ」

「え?」

だけど、俺とハイプリーストが降り立ったのはヒドラ池ではなかった。
潮の香りがする空気に、白い壁とレンガ道。腰を抱かれるようにして無理矢理歩く羽目になった俺はくるっと周囲を見渡した。
潮の匂いがする。・・・・・・ここって、たぶんアルベルタ?
こんな爽やかな町とこの鬼のような外見のハイプリーストとが今一繋がらなくてキョロキョロしていた俺はそのままとある家に連れ込まれた。一軒家のそこは入ったところが居間になっていて、奥に台所らしきものも見える。ソファーには男物のシャツが引っかかっていたが特に散らかっている様子も無い。誰もいないそこを通り過ぎて俺は更に奥に連れ込まれそうになった。

「ちょっと待った」

思わず身体を強張らせて足で地面を踏みしめる。
よくわからなくてもなんか知らない人の家に入るのって・・・・・怖くない?
特になんかこのハイプリースト怖い人っぽいし。人の話し聞かないし。俺のことワープポータルに蹴り込んだよ?
そんな人に付いていっちゃって・・・・・・・まずいんじゃない?

「・・・・・・・・・一応馬鹿でも、危機感知能力はあるのか」

身体を強張らせている俺をハイプリーストは見下ろしてそう言うと、ニヤリと鬼のような形相で笑った。
その瞬間手の中のピー太と一緒に俺は全身が総毛立った。
思わずバックステップで逃げようとした俺に、ハイプリーストは腰にまわしたままだった腕に力を入れてなんと俺を掬い上げた。
それもなんか変な感じ。えーと、えーと身体が浮いたかと思ったらハイプリーストの肩に担がれていました? みたいな?

「なにっ。ちょっと!!! どういうことこれぇぇぇぇ!!!!」

両手でピー太を持っている俺は階段を上がる揺れにピー太の小さな身体を落とさないようにするのが精一杯だった。身体を揺らせばピー太が落ちる。進行方向とは逆の方向を見ている俺にとって階段はすごい高さがあった。この階段を下まで落ちたらと思うと暴れることも出来ない。
そして廊下を歩いてすぐにハイプリーストは部屋のドアをバターンと開け広げた。

「えっ」

部屋の中に入る気配に思わず身体を起こした俺は思い切り鴨居に後頭部をぶつけた。
がんっと結構いい音がして、思わずハイプリーストの肩から前に倒れる。

褒めてください。
それでも俺はピー太を落としませんでした・・・・。

「痛・・・・・・ってええええええええええ!!!!!! 痛っ! 何ちょっと頭ぐらぐらするううううっ!」

「何やってんだ、お前」

片手でピー太を支えてもう片手で頭を抑える俺にハイプリーストは優しい言葉の一つも無い。
ハイプリーストは身体を前に倒すようにして俺をどこかに下ろした。
横たわって気が付いたが、ふかふかとしたそこはベットだった。

・・・・・・・・・・なんで、ベット。

「ああ。頭打った俺の傷を診てくれるの・・・?」

優しいとこもあるんだなとちょっと見直した俺に、ハイプリーストは呆れたような顔をした。何故かハイプリーストもベットの上に乗ってきて俺の顔の横に手を付きながら見下ろしてきた。

「この期に及んでそんな言葉を聞くとは思わなかった。・・・・・・まぁ、これくらい馬鹿の方が丁度いいか」

「馬鹿言うなっ!」

反射だけで言い返した俺にハイプリーストは喉の奥で笑って俺のマフラーからクリップを外して引き抜いた。
なんですか。
何する気ですか。
ズボンのベルトのバックルをハイプリーストが掴んだところで俺はその腕を掴んだ。

「・・・・・・・あの・・・・」

「なんだ」

ハイプリーストは無理に俺の腕を振り払おうとはしなかった。

「・・・・・・・・・なんで、ベルト掴むの」

「掴むだけじゃなくて外そうと思ってる」

ニヤリと笑った顔は凶悪犯のようだった。
こいつ絶対人殺したりしたことあるよ。
アサシンの俺が言うんだから間違いないよ。

「・・・・・・・なんで外そうと思ってるの」

「これからすることに邪魔だろ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

俺だってさ・・・・・知識はあるんだよ。
顔も身長も体格もなにもかも人並みだけどさ、今までお付き合いこそしたこと無いけど、経験ならあるし。
ギルドで転職した際にいきなり食われたんだけど・・・・・あの猫耳お姉さん今も元気かなぁ・・・・。

ごめんなさい逃避です。

えと。でもって、ベルトを外してすることって俺の頭じゃ一つしか考え付かないんだけど。
まさか意表をついてお風呂で泳ぐとかそういうことじゃない・・・・・よね。

「することって、・・・・・・・・・・・・なに」

思わず裏返った声に、ハイプリーストは口元を上げた。
7匹の子ヤギを騙して食ったオオカミみたいだなと、その時の俺は思った。あれ? その場合子ヤギって俺?
オオカミさんはたくらみ顔で言った。

「セックス」

同時に腕に走った痛みに俺は我に返る。
片腕を自分のマフラーでベットの柱に括られていた。
ちょっ。これはっ。
アサシンもびっくりの素早さです・・・っ!

「何・・・・っ! ちょっとおおおおおおおお!!!!! マジ勘弁して!!!!! 俺、女の子とがいいっ!!!!! 女の子としか出来ません!!!! 立ちません!!!」

「立つ立つ。まぁ、スドリ暗殺計画なんておったてて実行しようとした自分を恨んで、諦めるんだな」

「諦められねぇぇぇぇえええ!!!!」

だって明らかにあれスドリおじさんが悪いんじゃん!!!!!

同感とばかりにピー太が目を険しくしてハイプリーストの腕をガツガツとつついた。
さすが俺の相棒!!!!
痛かったのかハイプリーストは顔をしかめてピー太を睨んだ。

「・・・・・邪魔だな」

その腕が上がる。潰されるんじゃないかと思ってピー太を片手で抱え込む俺に、ハイプリーストは腕をサイドテーブルに伸ばして何かを動かしたかと思うと俺の手からピー太を奪い取った。
「何すんだよ! ピー太は俺の・・・っ」
「取りゃしねーよ」
ハイプリーストはピー太をサイドテーブルの上に置いた。え、それ鳥の巣?
「いらんと思っていたが、意外なところで役に立ったな」
ピー太はそこにあった巣の中に納まってこちらを見ながら目を細めた。かくんと首が傾いたような気がした。
あ・・・・・・・。

「ピー太! ピー太!!!!! 寝るなあああああああ!!! ご主人の俺のピンチだぞ!? 助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!! ピー太ぁぁぁああああ!!!!」

「ひよこに助けを求めるアサシンもどうかと思うぞ・・・・・」

「うっさい!!!」

ピー太は鳥の習性で巣の中で丸くなって眠りだした。こうなると暫くは起きない。
なにこれ。
ピー太にとっては『鳥の習性』>『俺の身の危険』ってことおおおおおお!!!!!?
俺ピー太のこと一生懸命守ってるのに、俺ってなんか報われてねええええええ!!!!

涙目の俺の頬に大きな手が添えられる。
ピー太から視線を戻して涙目で見上げるとハイプリーストは男前の顔で不敵に笑った。

「お前・・・・・泣いた方がかわいいな。もっと泣かせるか」

お願いだからそんな恐ろしいことを笑顔で言わないでください・・・・っ!!!!!!
かわいくない! 男が泣いても全然可愛くない!!!!

そうこうしているうちに肩当と身体を巻くベルトの繋ぎ目を外された。
これ外すのちょっとコツいるんだけどっ!!!! なんであんた手馴れてるのっ!!!?

「マジやめようよ・・・・男となんて気持ち悪いからっ! 俺3日くらい風呂入ってないし! えーとえーと俺毛深いしもっさりしてるしおならだってしちゃうんだからね! 汚いよ!!!」

はははーん!
これでどうだと引きつる顔で言い放った俺に、ハイプリーストはほー・・・・とやる気の無い返事をして、俺の髪に顔を埋めて匂いをかいだ。

「・・・・・・・髪から石鹸の匂いがするな。まだ残ってるって事は朝シャワーでも浴びたな? 上等上等」

「俺の馬鹿ぁああああああああ!!!!!!」

何故に朝シャンしたのだ俺。
あ、昨夜の熱帯夜で汗だくになって気持ち悪かったからだった。
大嘘がばれてしまった俺は、あれよあれよと衣類を肌蹴られていった。

「ちょ・・・っ」

上着の袷を広げられて喉にハイプリーストの口があたる。つーか齧られたっ!
急所のひとつに歯を立てられて俺は本当に食われるのかと思った。こいつ人肉とか普通に食いそうなんだもん。
鬼ってたしか人を食う種類もいるって昔なんかばーちゃんが言ってたような言ってなかったような。
・・・たぶん言ってたと思う!!!!

かちゃかちゃとベルトを外す音がしてすぐにズボンのチャックまで下ろされる。片腕で抵抗しても手首を掴まれて顔の横に押しとどめられた俺には後は足しか自由になるものが無いのに、それすらも器用にこの鬼の足に絡め取られてしまっていた。
「すいませんマジ勘弁してください。300zあげるからぁっ!」
「いるか」
「強姦魔って町中言いふらしてやるぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
「ほー・・・・そしてお前も被害者として哀れみの目を向けられるといい。ま、こんな世の中、こんなこと珍しくともなんともねーがな」
「世の中なんか間違ってる気がしますっ!!!!!」
「しかし細せーな・・・・。お前このウエスト女より細せーぞ」
「わひゃっひゃひゃひゃひゃっ!!!? 脇やめてってっ!!!! !ひゃ・・・・ひゃひゃひゃっ!!!!!」
腰をがっちり掴まれて俺は大笑いしながらのた打ち回る。脇は俺の弱点なのだ。
ハイプリーストは色気がねー笑い声・・・と、うんざりした様子でため息をつきながら俺のズボンを太腿まで引き下ろした。
「え」
「はい、ご開帳〜」
いきなりパンツごとごっそり持っていかれるとは思わずに俺は目を見開いて固まった。
ぷるんと俺のものが空気に晒される。ハイプリーストはそれをじっと見ながらその目に哀れみを浮かべた。

「・・・・・・・・・・・・まぁ、何だ・・・・・・。ナニの大きさがすべてじゃないしな」

「なに!!!!! 俺の普通だよっ!? 何、皆に誤解されそうなこと言ってんの!!!!?」

皆って誰もこんなとこ見てる人なんていないけど!!!!!
「ちゃんと皮剥けてんのか?」
「ひゃっ」
疑惑の目でハイプリーストはいきなり無造作に俺のそれを掴んで弄りだした。ちょっと待ったっ。それやばい。そこやばい。
ま・・・・・・・待てぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!!!
「一丁前に硬くなってんじゃねーか。立たないとか言っといてちょっと触っといてこれか」
「言うなっ!!!!! あっ」

男なんだから、擦れば固くなるに決まってんじゃん。俺若いしっ!!!!
でもこんな男に触られてっていうのが超悔しいいいいいっ!!!!!!

「何で・・・・・こんなことすんだよ・・・・っ」
漏れそうになる声を抑えて涙目で見上げれば、鬼はにやりと笑った。
「お前を気に入ったから。俺の恋人にしてやるから感謝しろ」
「感謝なんて出来るかあああああ!!!!! なに人の意思無視してそんな勝手なこと言ってんだこの鬼ハイプリー!!!!! 強姦魔ぁああああ!!!!」
「強姦じゃねーよ。お前だってこここんなして喜んでるじゃねーか」
そう言われる俺のものはしっかり天井向いていて、先がちょっと濡れている。でも断じて喜んでません!!!!
「精神的にはかなりきっついです!!!! マジで!!!! ・・・・あ・・・・っ」
先を指の腹で円を描くようにされれば誰だって腰が引けるってもんだよ・・・っ!!!!
でも自分でするのと違ってマジやばいくらい気持ちいいのも確かで・・・。
「精神的にか・・・・・・・じゃあ、試してみるか?」
「何・・・・・・?」
太腿まで下げられていたズボンを全部引き抜かれる。上着だけ肩に引っ掛けただけの状態になった俺の片足を掴んで胸にまで押し上げるように曲げさせられた。そしてとんでもないところに指が当たったのを感じて俺は目を見開いた。
そこ・・・・・。
「ここ使うのは知ってるか?」
ひっ!
「知りたくありません。知らないで清いままでいたいです。そこ出すとこで入れるとこじゃないし!!!」
つーか、あの! 触らないでもらえないかな!!!!  ちょっ・・・・爪でひっかくなああああああ!!!!!
「知ってるなら話は早い。さすがに女と違ってここは自分じゃ濡れねー・・・・・だからな、濡れるまで俺は入れない」
「・・・・・・・・は? どういうこと?」
「濡れなければお前は清いままでいられるってことだ。わかるか?」
「・・・・・・・・・・・・?」
濡れなければって・・・・そこが濡れることなんてあるの?
・・・・ないよね?
「でもあんたが何か使ったり・・・・」
「道具もなにも使わないし、そこを舐めたりもしない」
「舐められても困るしっ」
普通にイヤだっ!!!!!!!
でもだったら俺に有利じゃね・・・? なんかよくわかんないけど、こいつ自分に不利な賭けしようとしてる?
「いいな?」
「・・・・うん?」
「いい子だ」
ぐるぐると考え事しながらの生返事はそのまま承諾の意味で取られてしまった。
額にキスされて肩を竦める俺に、だけど鬼ハイプリーストはニヤリと口元を上げたような気がした。なんかすごく凶悪的に。
ベットの上に広げられた腰布の上で鬼ハイプリーストが俺の両足に割ってはいる。それだけじゃなくて、俺の腰の下に枕まで差し入れる。

「・・・・ん・・・・・あ・・・・・・っ・・・待って・・・・・やば・・・・いっ」

広げられたままの足が開いたまま宙に浮くというとんでもない体勢で鬼ハイプリーストは俺のものを掴んで扱いた。さっきより容赦の無い動きに俺はすぐ根をあげた。
「早すぎる。もうちょっと我慢しろ」
「だったら足〜〜〜〜っ・・・・・」
自分でも見たことのない場所を全部見られているということが羞恥心を煽っている気がする。それに加えてぬちぬちと粘着的な水音が聴覚への暴力になっているのだ。
せめて足を離してほしいとハイプリーストを睨むように見ると、何故だか目を丸くしてニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「誘ってんのか?」
「誰がじゃあああああああっ・・・・・んっ!」
心の底からの絶叫はハイプリーストの口で塞がれた。生ぬるいぬるっとしたものが口の中に入ってきて俺は思わず歯を立てかけた。だが、それを察したのかハイプリーストが顎を摘んで引いた。
うわぁ。うわぁ。これ舌だよな。気持ち悪いって。どうしよう。
ハイプリーストが体勢を変えたことで漸く足がシーツを蹴れるようになった。だが、相変わらず片腕は俺のマフラーでベットに括られたままだった。ヘタすればマフラー破れそうなんだもん。このマフラーは俺が転職した時に近所の兄ちゃんがお下がりだといってくれた大事なものなのだ。破ったら後悔してもしきれない。

この時の俺の頭の中では『マフラー』>『貞操の危機未満』だった。

ピー太のことは怒れないとこの時の俺はまったく気が付いていなかった。
はいそこ、ペットは主人に似るとか言わないっ!

「ん・・・・・あ・・・・・・ひっ」

俺のを抜きながらハイプリーストの指が胸を這い回ってぐりぐりと乳首を弄る。油断していた俺はじわっとくる刺激にびくっと腰を震わせた。
同時に吐き出した精に俺は体を強張らせて、余韻が通り過ぎた後でまだぼうっとしながら、ほっと全身の力を抜いた。

あー・・・・・・・うー・・・・・・・。

気持ちよかったです。すいません。

「我慢が足りねーな」
「・・・・・・・・・・・・んっ」
俺が吐き出した精はハイプリーストの掌で受け止められたらしく、力を失いかけた俺のものに塗りたくられる。
ぐちっと卑猥な音がした。
「いいのか?」
「・・・・・・・・・・・?」
また腰に来る動きに身悶える俺に、鬼ハイプリーストは言った。
「お前のが垂れ落ちてる。このままだと、後ろまで行くぞ?」
「え」
それに俺は我に返る。
ぐちゅっと音を立てるハイプリーストの指が俺のものをなぞって根元まで辿る。そこにある二つの袋まで濡れているのがわかった。
ちょ、俺、こんなにいっぱい出してたのっ!?
そういや昨日抜いてなかったし・・・・。

「ちょ・・・・拭ってっ」

慌てる俺に鬼ハイプリーストはニヤリと悪魔のように笑った。

「拭って欲しいのか?」

「・・・・・・・・・・・・」

俺は顔を引きつらせた。

何。
本気で深遠の騎士よりも怖いんだけど。

だけど、自由にできる腕はこのハイプリに握られたままでこれをどうにかしてもらわないと・・・・・。

「腕・・・・放してくれたら自分でするし・・・・」

「却下。簡単だろ、俺にお願いしてみろよ。拭ってやるから」

そう言いながら、また硬くなりかけている俺のものをゆるく抜いた。
一度経験した快楽がまた俺を襲う。
ビクッと肩を揺らす俺をハイプリーストはにやにやと見ながら見下ろす。

「・・・・んっ・・・・・・・・や・・・・っ」

息が上がる。
どうしよう。
こいつ本当に拭ってくれる気あるのかな。

「どうする? ちょっとやばいぞ?」

「・・・・・・だったら触んな・・・って・・・・・・・・もっ」

でもこのままだとやばいってことは俺にもわかった。

「・・・・・・・・・・・・て・・・・」

「ん?」

「・・・・・・拭っ・・・・・て」

観念して言った俺に、鬼ハイプリーストは満足そうに頷いて俺の目じりを舐めると体を起こした。
圧迫感が無くなった気がして脱力する俺はすぐにまた悲鳴を上げた。
まさかという思いで顔を下に向けると、そこには俺の股間に顔をうずめているハイプリーストがいた。

「ちょとおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああ!!!!!???」

袋からべろんと舐められてそのまま、ちゅうっと吸われる。
びくっと足が痙攣する。
それだけじゃなくてそのまま竿の方まで舐め上げられたり吸われたりで俺はこいつに頼んだことを後悔した。

これ『拭う』って言わねぇぇぇぇ!!!!!
これ、これ『舐める』ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!

ばたばたと暴れようとした足を掴まれて内股に吸い付かれる。
痛みが痺れになって体を強張らせると、ハイプリーストは吸った所を宥めるように優しく舐める。
俺はその頭を自由になる手で押す。

「やだ・・・・や・・・・・っ・・・・・・・・・拭わなくていい・・・っ」

「いいのか・・・?」

「も、いいから・・・っ」

これ以上なんかされると、まじやばい。
すでにぱんぱんにはち切れそうになってるってのにっ!
熱を逃がそうと呼吸を繰り返す。眦から涙が零れた。
ハイプリーストの手が腹のあたりを撫でる。濡れてぬるぬるするところからすーっとした冷えていく感覚がする。
白い法衣の袖が俺のものに当たる。
それだけで先から僅かに先走りが零れた。
「んんっ・・・・・・・・・あ・・・・・」
腹の上に零れたそれをまた塗り広げられる。
「あーあ・・・・・。堪え性がねーな。そんなんで我慢できるのか・・・・?」
そう言いながらハイプリーストは俺の手をとって、俺のものを無理矢理握らせた。
「ちゃんと自分で止めてろよ? どうなっても知らんからな」
「何・・・?」
どっくんどっくん言ってる俺のは早く出したがっているけど、そうさせるわけにも行かなくて。
動けばそれも刺激になりそうで、足を広げたまま気を静めるために呼吸を繰り返す。
鬼ハイプリーストはそんな俺の努力をあざ笑うかのような行動に出た。

「ひあぁっ!!!」

張り詰めて敏感になっているそこをまた熱い口内に含まれる。
高級絨毯のような舌で何度も裏側を舐められててしごかれた。
ねっとりと嬲られたかと思うと急に顔を動かされる。
急に冷えた感覚がしたかと思えば、舌先で先の窪みを弄り回された。
「ひやぁっ・・・・・・っ! っ!!! ・・・・・・あっ・・・・・ぅあ・・・・・・っ!!!」
一気に突き上げられるかのような快楽に鳴き声なのか悲鳴なのかわからない声が溢れる。腰を揺らめかせながら首を振って身悶える。
だが、暴れる俺の体を大きな手が押さえ込んだ。
イきそうになったのに、刺激は唐突に終わった。
涙で滲んだ視界を閉じると雫が眦から流れ落ちる。
「はぁ・・・・・・は・・・・・・・・・・・・・っ」
「しっかり握ってないと、零れるぞ?」
顔を上げて指でなぞりながら楽しそうに言う鬼ハイプリの声。
俺のがびくびくと震える。
だったらやめてくれと言いたかったが、その反面激しい射精感に足を強張らせて首を振る。
吐き出せば、精液が後ろまで伝うかもしれない。
だけどその考えも本能の前に薄れていく。
熱くて硬くなってる自分のものが濡れて滑る。出ないように握りなおすそれすらも刺激になった。
「・・・・・は・・・・ぁ・・・・・・っ! やだ・・・・・も・・・・・っ」
「しっかり握ってろって」
ハイプリーストの手が俺の手の上に重ねられ丸ごと握られる。
「あっ!」
びくっと体が痙攣すると、僅かな先走りが飛んで腹に落ちた。
ハイプリーストはそれを指で掬い取って、俺の乳首に擦り付けた。
ぬるぬるした感触がむずがゆくて、指から逃げるように体をひねると、お仕置きだといわんばかりにまた竿を口に含まれた。
「やぁっ・・・・・!」
腰に心臓がもう一つあるのかもと思うくらい脈打ってるのがわかる。
「も・・・・はなせ・・・・ってっ! やだやだぁ!!!」
見も蓋も無く泣き叫ぶ。
先の窪みに舌をねじ込まれ、吸い上げられる。
背筋がぞくぞくするほどの快楽が足元からの頭のてっぺんまで走って。熱が体の中を暴れまわる。
痛いくらい苦しくて、
出したいと強烈に思った。
手の力が緩む。
だけどその上から握りこまれていたハイプリーストの手に力が篭る。
それが邪魔で腰が震えるほどむずがゆい。
「や・・・・っ!」
一層きつく締め付けられて腰が引ける。
「も・・・・・っ! イク・・・・っ!!!」
「ばーか・・・・。イッたらまずいだろうが」
笑みを含んだ声が聞こえる。その唇の動きすら刺激となって俺を身悶えさせた。
ぴちゃっと淫猥な音が聞こえる。
「あっ! ああ!!」
手を離したいのに、イキたいのに。
「鬼・・・・っ!」
「こんな優しい俺をつかまえて鬼たぁ・・・・・・」
「も・・・いいからぁ・・・・・っ! イきたい・・・・っ、イかせて・・・・っ。も・・・・やだぁ・・・・っ」
見も蓋も無く泣きじゃくる俺に、ハイプリーストが顔を上げる。
「本当にいいのか?」
こくこくと頷く俺は本当に目の前でちかちかしている熱い欲望を開放することしか考えてなかった。
まだ頭のどこかで、出ても拭えばいいという考えがあったのかもしれない。
ハイプリーストの手が緩んで、俺は自分の手を離した。
ぬちっとした音と共に震える指先が撫でて腰が引けそうになったとき、鬼ハイプリの指がまたきつく絡んだ。
「ひっ」
また我慢させられるのかと思った俺は、それが違うことをすぐ思い知らされる。
濡れて滑りのよくなったそれを絶妙の強さで上下に動かされた。
「やああああっ!!!! ああっ!!! ああ――っ!!!」
明らかに達するための動きに、俺は脚を広げたままの体制でよがり狂う。
今まで感じたことの無い気持ちよさに、頭がおかしくなりそうだった。
腰が痙攣するかのように揺れて肩をすくめるようにその時を待っていた。
「ひ・・・っ!!」
ハイプリーストの指がさらにその下を撫でる。
イクと思ってそちらに気を取られていた俺はそのままそれを迎え入れた。
それが堰を壊す合図だった。

「ひぁ・・・・・・・・・・っっっ!!!!」

目を見開いて喉の奥が引きつって声にならない悲鳴をあげる。
塞き止められていた白濁が勢いよく俺の腹や胸を打ちつける。
痛くなるほど溜めすぎたところから突き落とされて、一気に襲ってきた達成感に体が痙攣した。
体の中を穿つ濡れた指がどこからと思うほどのぬめりと一緒に体の中を撫でた。
「っ」
まだ余韻の残る足が跳ねる。
「俺はいいのかと聞いたぞ?」
「や・・・・っ」
もうそこは濡れていたのだろう。
きっとこの鬼ハイプリーストの唾液と俺の先走りで。
達した後の力が入らない状態のところで、自分でも触ったことの無い中に向かって出し入れされる指がどういったらいいかわからないくらい違和感だった。
ぬめりがあるからなのか、動かれても恐れていたような痛みは無い。
じわじわとする熱は摩擦熱なのか、それとも俺の中の熱なのかわからなかった。
感じたことの無いじれったい感覚にどうしたらいいのかわからなくて俺はぼんやりとハイプリーストを見る。ハイプリーストは何故か驚いたように目を見開いて、にやりと笑った。
「・・・・・その目は反則だな」
何・・・・?
「あっ」
入っていた指に添わせるようにもう一本ねじりこまれる。
さすがにそれは違和感と入り口を押し広げられる痛みがあった。
「力入れんな」
ハイプリーストのもう片手がわずかに形を作りつつある俺のものを擦った。俺はそれに首を振って喘ぐ。
前からの刺激が、後ろの違和感を違うものに変えていく。
ハァハァと肩で呼吸するタイミングがハイプリーストの指の動きと重なる。そうしてると少し楽だった。
なのにこいつがわざとそれをずらすように俺の中を押し上げた。
「っ!」
何だかわからない射精感に、イク感覚はないままじわっとした熱に腰が揺れる。
ハイプリーストの指が引き抜かれて、前もそのまま放置された。
突然与えられたインターバルに俺はほっとしたように体の力を抜いて足を下ろした。
息を整えようとする俺の上でハイプリーストは自分のズボンのベルトをかちゃかちゃと外して、ピー太が寝ているサイドテーブルの引き出しを引いて中から何か出した。
うっすら目を明けるとそれは透明な瓶に入った透き通った薄茶の液体だった。油みたいなやつだと思う。
その蓋を開けたハイプリーストが掌でそれを受け止めて、そのままさっきまで嬲っていた俺の後ろを撫でた。
「やっ・・・」
つるりと入り込むような感触はきっと、この油みたいなもののせいだ。
さっきより抵抗無く指を飲み込まされる。
「道具・・・・っ使わないって・・・・っ言っ・・・・・」
「ここが濡れるまでは使わないっていったんだ」
「やだ・・・・・・っ。それ変なの入ってたり・・・っ」
「しねーよ。ただの潤滑油。安心してろ」

これから掘られる準備なんかされて安心なんかできるもんかぁ!!!!

また足を開かされてもろくな抵抗も出来ない。
濡れなきゃしないっていう約束のこともあったけど、感じたことの無いじわじわとした快楽は俺から思考回路を削ったとしか思えない。
指三本も入って慣らされても無理に力を入れなければ痛みもない。違和感はあっても、前を擦られればそれはすぐ快楽に変わる。
それでもさっきまでの激しい達成感は無くて、じれったさに悶える俺の脚をハイプリーストはまた押し上げた。
抜かれた指に妙な物足りなさを感じた。
だけどそこにはすぐに硬くてもっと太い何かを押し当てられてた。
ぐっと中に入って来ようとするその熱さに俺は思わず腰に力を入れた。
「ば・・・っ」
「い・・・・・っ!!!」
ハイプリーストの驚きの声と俺の悲鳴が重なる。
すぐにまた前を擦られて、一瞬腰が浮いた瞬間、それはまたぬめりに助けられるように中に押し入ってきた。
「っ!!!!!」
そか、先の方が太いから、そこ入っちゃえば後は楽なのか。
入り口に使われているそこを押し広げられる圧迫感はすぐに和らいだが、中で脈打つものを俺は引き絞るように締め付けた。
ハイプリーストが辛そうに唸ったが、こっちはもっときつい。
「くるし・・・・・っ」
ハイプリーストは動かずに、息を荒げる俺の腕を掴んで滑らせる。
その先にある片手を拘束していたマフラーを解いた。
自由になった腕がベットに落ちる。
ハイプリーストはそのまま俺の腰を掴んだかと思うと、そのまま引き寄せるように俺を引っ張った。

「ああああああっ!!!!」

ベットの上で背中が擦れて落ちるような錯覚を受けた。
だがそれ以上に奥まで突き進んできた熱の固まりに悲鳴を上げた。
ぎゅうっと中のものを締め付ける。
ハイプリーストの手がまた俺の前を擦った。さっきより余裕が無いその動きに萎えていた俺のものも立ち上がってくる。
ぐちぐちと嬲られるそこから快楽を拾い出して、後ろの痛みを感じないようにするが、このハイプリーストは俺の努力を無駄にするかのように腰を動かし始めた。
「やだっ!!! 動くなぁ・・・・っ!!!! ・・・・この・・・・っ鬼ハイプリ・・・・っ!!!」
「カノウだ・・・・・」
「ひっ・・・・・や・・・・痛・・・・・っ!!!!」
内臓が引っ張り出されるかのような動きは、痛みだけではない摩擦熱のようなものを感じさせたが、それ以上に苦しくて体がばらばらにされるんじゃないかと思うくらいの衝撃に腰を浮かした。

「呼べよ・・・・・・」
「・・・・な・・・・に・・・・・・・・っ。も・・・・・」
「カノウ」
「カノウ? ・・・・・ひあっ!!!」

潤滑油なのかなんなのか、擦れて立つ卑猥な音が耳を侵す。
自分の声とは思えないほど弱弱しい声も聞きたくなくて、自由になった手の甲で口を押さえるが、すぐに取り払われた。

「・・・・・あっ・・・・・はっ・・・・」

「言わねーとこのままだぞ・・・・」

「やだぁ・・・・っ」

中から犯されて、早く終わらせて欲しいのに、それすら許さないこのハイプリーストは本当に鬼だと思った。

「カノウ・・・・も・・・・・くるし・・・・」

それがこのハイプリーストの名前だと漸く理解して俺は解放を願う。
カノウは額から流れる汗を頬に伝わせながら、余裕も無いくせににやりと笑ってグラインドさせる腰の動きと指の動きを激しくした。
痛みと快楽を同時に感じた。

「はっ・・・・っ・・・・・・・・ああああああ!!!」

「っ」

たちまち精液を飛ばしてイッた俺の中で、僅かに遅れてカノウの飛沫が更に奥を熱くした。










「ひどい顔だ」

事が終わった後、ぐったりして指一本動かせない俺の顔を見るなりそう言って、疲れきっていた俺の体を無理矢理起こした。

どうせおれはあんたみたいにかっこよくはねーけどさっ!!!
今の今まで抱いていた相手に言う台詞じゃねーんじゃね!!?

ショックともう投げやりな気持ちのまま思わず泣きそうになった俺を支えて立たせ、カノウはどこかへ連れて行こうとする。
まさしく見も心もぼろぼろにされて、ぐしぐしと泣く俺はそこがシャワールームだということに気がついて真っ青になった。

え、なに・・・・またここですんの?

「そこまでがっついてねーよ。時間がもうねーんだが、お前のその顔じゃ外にだせねぇ。ついでに中も洗ってやるからちょっと大人しくしてろ」

外に出す?
なにそれ、もう俺追い出されるの?
用無し?

疲れているところにこの男の発言にショック受けてる自分が馬鹿すぎて抵抗する気もなくなる。
恥ずかしい思いをしながら本気で中まで洗われて、ちょっと感じたのをオークレディの顔を思い出しつつ無理矢理堪えた。
さっきまでの疲れを倍加させて、くたりと座り込む俺をカノウはどっから出したのか俺が着ていたのとは違う清潔に洗われたアサシンの服を着せた。
服を抑える布まできちんと巻いて、ぱちんと肩当のフックで止める。
本当こいつアサシンの服わかってるなぁ・・・・。
これちゃんと知ってない奴だと脱がすことも着せることも難しいのに、カノウの手はよどみが無かった。きっと慣れてるんだろう。
カノウは俺の顔に両手を当ててそのまま頬を摘んで左右に引っ張った。

「ひててててててっ!!!」

「よしよし。そろそろいくか」

俺の目に意識が戻ったことに満足したんだろう。
カノウは俺の腕を肩に回してまた立ち上がらせる。

「どこに・・・・・?」

てっきり追い出されるのかと思った俺は、こいつが俺をどこかに連れて行きたがっていることに気がついて小首を傾げた。
カノウは器用に俺の頭にひよこのピー太を乗せて、黒縁眼鏡の向こうでにっこり笑った。
片耳だけした十字架のピアスが揺れる。

「教会」

「え?」

目を見開く俺の前でワープポータルが開かれる。


何っ!!!!?


俺は顔を引きつらせた。

「新しい門出だ」


何ぃぃぃぃぃっ!!!!?


ワープポータル特有の浮遊感にめまいがしながら、足元に地面があるのに気が付いて目を開ける。
そこはもうすでに家の中じゃなく晴天の下だった。
プロンテラの街。


カンコーン

カンコーン


教会の鐘の音と共に、わぁっと人の歓声が聞こえる。
そちらに視線を向けると、丁度大聖堂の入り口の階段を新郎の手に引かれて白いドレス姿の新婦が降りて来るところだった。
大勢の友人らしき人々が二人の前で道を作って花びらをまく。
幸せそうに笑う新郎新婦たちに声をかけていっていた。

纏め上げた金髪の上にヴェールを被って幸せそうに微笑む花嫁さんはこっちが見惚れるくらい本当に綺麗だった。
女の子ってやっぱかわいいよなぁ・・・・。
幸せになって欲しいなぁ。
心をほくほくとさせながら見ていたら、その花嫁さんがこちらを見た。
ドキッとした俺を、カノウは離した。
花嫁さんは自分の伴侶の腕を叩いて嬉しそうにこちらを指差す。
青髪を後ろに撫で付けた新郎がすぐにこちらを見て、驚いたように目を見開いた。

何だろうと思った俺達の前に、新郎が慌てて走ってやってくる。

「この馬鹿!!!! カノウ!!!! 遅いんだよ!!! 来ないかと思っただろ!!!」

いきなり怒鳴る新郎に俺は目を丸くする。

「おう。悪ィ悪ィ。ちょっとこいつが手間取らせるもんだからよ」

こいつといいながら俺の首根っこを掴むカノウは、俺が見たことも無いくらいにこやかな笑顔を張り付かせていた。
新郎は、俺を見て首を傾げる。

「あ、すいません・・・・・・えと・・・・初めて会う・・・・よね?」

「ああ。ヒビキだ。ヒビキ、プロンテラ1の花嫁を奇跡的につかまえてこの
幸せ絶好調で鼻の下デレッとさせた馬鹿がシラキ」

「は、始めまして」
慌てて頭を下げる。

え?
何自己紹介されてんの、俺。

「こんにちは」
にっこり笑うシラキさんは穏やかで本当に優しそうな人だった。ちょっとたれ目で、ニコニコと笑うと人の良さがにじみ出てくる感じ。
「ヒビキ。シラキは今こんな格好だけどアサクロだから」
「ええええっ!!!!」
このすっげー優しそうな人がアサシンクロス!!!!!
俺もアサシンだから、すごくアサシンクロスに憧れがある。
知り合いになんていないし、こんな近くでアサクロを見るのは初めてで、衣装は違えども本気で尊敬のまなざしを向ける俺に、シラキさんは慌てて両手を横に振った。
「アサクロって言っても本当たいしたもんじゃないから。・・・・あの・・・・良かったら君も参列してくれる?」
「いいんですか?」
俺あからさまに部外者なんだけど。
だけどシラキさんはクスッと笑ってカノウを見た。
「前に言ってたアサシンの相方を見つけたって、この子のことだろ?良かったじゃないか、いい子そうで」
「馬鹿だけどな」
「馬鹿じゃ・・・っ!!!」
ねぇっと叫びそうになって、でも初めての人の前で友達を怒鳴るのもどうかと思ってグッと我慢する。
そんな俺にカノウはニヤリと笑った。チラッと向けられた視線は本気で意地悪そうだった。
「カノウ、よかったら二次会に・・・」
「悪い。そうしたいのは山々なんだが、もうすぐ大家に会う約束があるんだ」
「大家って・・・・あの家から引っ越すのか?」
「ああ。もう少し小さい家でもいいかと思ってよ。大家が今日しか都合つかねーらしいんだわ。また後でゆっくりどっかで飲みに行こうぜ」
「・・・・・・・・・・・・・そか」
シラキさんはしょんぼりと落ち込んでる。
俺は花婿さんにこんな顔させたカノウを睨みあげる。
だけど、カノウが目を細めて僅かに見せていた表情に何もいえなくなった。

カノウは痛みを笑顔のヴェールで覆い隠しているような顔をしていた。

見てはいけないものを見た気がして顔を伏せる。
「・・・・・・・・・・」
カノウの手が俺の腰に回される。
びくっとしたが、黙ってそのままにされていた。

「シラキ。こいつ、実はさ恋人なんだわ」

「は!?」
「はぁ!!!?」

白木さんの声を掻き消すくらい俺の声はでかかった。

ざけんなと怒鳴りたかったのだが、腰を引き寄せるこいつの腕の力は強くて、しかも俺はさっきので腰があんまり立たなくてっ!
座り込まないように立つのが必死な俺は、どうやら恥ずかしがってると思われたらしい。
シラキさんは拳を口元に当ててこほんと喉を鳴らした。
その頬が赤い。

「そか・・・・。うん、・・・・びっくりしたけど、お前が選んだ子だもんな。教えてくれてありがと。カノウ」

誤解っ!!!
誤解です!!!!
俺とこいつはさっき会ったばかりで!!!!
たしかになんか致されちゃったりはしたけど!!!!

向こうからシラキさんの名前を呼ぶ声がした。

「行けよ」

カノウがシラキさんに言う。

「大家との約束って明日じゃ無理なのか?カノウ」

「俺もそうしたかったんだけどよ。今日逃したらまた1年借りなきゃなんねーんだわ。また今度埋め合わせするからさ」

「絶対だぞ。新しい住まい決まったら教えろよ?新居にも遊びにこいよな?」

「ああ」

カノウを呼ぶ声もする。
きっと二人の知り合いもいるんだろう。
だけど、カノウは向こうにも手を振るだけで、シラキさんに片手を上げて見せて踵を返そうとした。

「カノウ・・・・・・・」

「ん?」

「忙しいのに来てくれてありがとう。嬉しかった」

「・・・・・・・・・・・・ばーか」

カノウは首だけ振り返りながらニヤリと意地悪げな笑みを浮かべた。

「親友の結婚式だ。忙しくても何でも、てめーのデレッとした顔くらい見に来るに決まってんだろ」

カノウの腕が震えてる。
余裕ありそうに笑ってるのに。
俺の腰に回された腕は、かすかにだけど、震えていた。

だからわかりたくも無いのにわかった。

恋人だなんて俺のこと紹介したカノウの気持ちが、本当はこの人にあるんだってこと。


「これ、まだ持っててもいいんだろ?」

シラキさんは首もとのスカーフを緩めて中からクロスのついたチョーカーを引っ張り出す。
それにカノウの指先が痙攣するかのように震えるのがわかった。

「ん・・・・何だよ。まだしてやがるのか・・・? そんな古臭いのいつまでもしてないで、いい加減、嫁さんに新しいの貰ったらどうだ? いい機会だ返せよ」

それはカノウが言うとおり古いものだった。
でもシラキさんはクロスをまた胸元に隠してしまう。

「やだよ。お前が俺を心配してくれたお守りなんだから」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

鬼のようだと思っていたハイプリーストが苦笑する。
俺はその苦笑にまた痛みが混じるのを見た。
カノウがあげたというクロス。
そしてクロスがついていないカノウのチョーカー。

「あのっ・・・・・!」

気がついたら俺は声を上げていて。片手をシラキさんに向かって伸ばしていた。

「それ、俺にくださいっ!」

二人の視線を受けて俺は何言ってるんだろうと思った。
特にカノウは驚いたように目を見開いている。

でも、きっとこいつシラキさんのことが好きなんだ。
だけど・・・・・シラキさんは気が付いていないんじゃないかだろうか。

今見るクロスが鈍く光るくらい昔から聖職者のクロスをあげるほど好きだったんだ。
クロスを見た瞬間からカノウの体が強張っているのがわかった。
カノウはきっとこれを取り戻したがってる。

それが自分の未練だから。

だからここに来たんだろう。
でも、実際好きだった人が人のものになるのを見て、動揺した。去ろうとした。

それくらい好きだったのに。

「・・・・・・・・・・・・・馬鹿」

カノウは俺の頭をがしがしと撫でた。ピー太が驚いたように飛び跳ねる。

「てめーには、・・・・後で新しいのやるよ」

そう言ったカノウの言葉は優しかった。
シラキさんが慌てたように両手を振る。

「誤解しないでね! ヒビキ君! 俺こいつとはアサシンに転職してからの付き合いでっ!!! あ、でも付き合いって言っても親友でそういったことはまったくなかったから! ヒビキ君が疑うようなことはまったく無かったんだよ!!!? 疑うようなこと言ってごめんね?」

シラキさんは本当にいい人だ。
初めて会ったばかりの俺みたいなアサシンにも優しい。
カノウは俺を胸に抱きこんだ。

「そうだぞ、あんなの・・・・・・・唯のクロスなんだから」

そう言ったカノウはそう自分に言い聞かせているかのようだった。
だからなんだか悲しくて、鬼みたいなこいつがかわいそうで涙が浮かんだ。
シラキさんが困るってわかったのに、涙が止まらない。

「悪いな。シラキ。こいつやきもち焼きでな」

カノウは俺を引き寄せたまま去ろうとした。

「ごめん。カノウ・・・・・・、でも俺・・・・・お前のこと一番の親友だと思ってるからさ・・・その・・・・」

「・・・・・・・・・わかってるよ。こいつもわかってるさ」

そう言って俺の頭を撫でる。

「またな」

「うん、またっ! ・・・・・ごめんな!」

カノウはワープポータルを開いた。
一瞬でこの幸せで悲しい場所を去る。

出た先はアルベルタの家の前で、家の中に入った俺はソファに座らされて、カノウがくれた冷えたオレンジジュースを飲んだ。
カノウは俺の隣に座って短い髪をがりがりとかいた。

「・・・・・・・・・・・何で、お前が泣く」

その声は困っているもので、さっきまで俺のことを苛めていたくせにそんな声出されても俺が困る。
だって俺だって泣きたくて泣いてるわけじゃない。

「あんた・・・・・あの人のこと好きなんだな」

俺の言葉に暫く沈黙が訪れる。
返答を諦めかけたとき、カノウは呟いた。

「好きだった・・・・だな。嫁さんもいい子だ。あいつには幸せになる権利がある」

「あの人・・・・・・あんたの気持ち気がついてなかった・・・・?」

「ああ。俺も言わなかった」

「・・・この家のことも知ってる風だった・・・・」

「・・・・まだ相方だった頃・・・・2.3年前くらいか?あいつが住んでたアパートが火事出してな。半年くらい一緒に住んでたことがある」

通りでアサシンの服についてくわしいはずだ。
きっと俺が今着ている服もあの人が着ていたものなんだろう。
そうわかったら憤りがわきあがる。
どんっと片手で自分の太腿を叩いた。

「なんで手をださねーんだよ!!! それで!!!!」

「無茶言うな。それまで親友だと思ってきたんだ。あいつを裏切るなんてそんな真似できるわけねーだろ」

カノウは忌々しげに、その頃の自分の感情を押し込めるように、そう言った。

「・・・・・・・・・・・っ」

俺は胸が痛くなった。

馬鹿。

なんでこいつ・・・・すげー唯我独尊で、強姦魔で、意地悪なのに。なんで自分の気持ちには馬鹿なんだろう。
俺はまた涙をぼろぼろと零した。
こいつの気持ちを思っての涙だったのに、口に出たのは罵りの言葉だった。

「俺のことは会ってすぐヤッたくせにぃいいいいいいいい!!!!!」

しっかりジュースは握ったまま膝を抱えて泣く俺に、カノウはため息を吐いた。

「悪かった。時間が無かったんだ。一人じゃあそこに行けなかった。・・・・・・・・嫁さんも俺と同じ支援のプリーストでな。嫁さんばかりと狩りになるあいつが俺のこと心配するもんだから、俺も言ったんだ。新しい相方が出来たから心配するなって。・・・・・・・そう言ったからには、何としても見つけねーといけねーわけよ。だからあそこに行った。神器はアサシンばっかり集まってるからな。そしたら面白い奴がいるじゃねーの。・・・・・・ま、こいつでいいかって」

「お前っ!!!! それって、シラキさんのことしか考えてねぇじゃねーかぁぁぁぁぁ!!!!」

それじゃなんですか!!!!
ぶっちゃけ誰でも良かったってことだろっ! それ!!!!

そんな馬鹿の為におれの清らかな貞操は奪われたというのか。
さよなら俺の操。

「まぁ、でも」

カノウは嘆く俺を引き寄せて覆いかぶさるように抱きしめてきた。
両腕で守られるかのように抱きしめられて俺は涙が止まった。
上から覆いかぶされているので顔を上げることも、カノウがどんな顔をしているのかもわからない。
でも、笑いを含んだ声が落ちてきた。

「クロスをくれというのには驚いた」

「あれはお前がっ。返して欲しそうだったからっ!」

「わかってる。・・・・・・・あれは俺がまだプリーストだった時、殴りだった俺があいつを守りきれないことがあってな。お守りのつもりでやったもんだ」

さっき支援と言ったくせに、プリーストの頃は殴りプリーストだったわけか。
なるほど、こいつの性格だったらたしかに殴りの方がしっくりくる。
というか今、支援と言うのが信じられない。一瞬聞き間違ったかと思っちゃったよ・・・・・。
でもなんとなくわかった。
もしかしたら・・・・・シラキさんを守りたいと思ったから転生した後、支援ハイプリーストになったのだろうか。

本当に好きだったんだなぁ・・・・。

でもあの人みたらそれもわかる気がした。

俺は鼻をすすりながら言った。

「・・・・・俺、前に聞いたことがある。・・・・・プリーストのクロスはアコライトの時にもらうもので・・・・・本当に大事な人にしかあげないもんだって」

「まぁ、昔はそういうこともあったらしいな。でも今はただの飾りとしか思わずにデザインで付け替えるプリーストも多いんだぞ」

「でも大事なものじゃん・・・・・・すくなくともあんたにとっては・・・・・そういう意味で送ったもんだったんだろ」

「・・・・・・・・・・・・」

カノウは黙った。
それが答えだ。
俺はそれが悲しくて。なんだか胸が痛くて。
何故だかわからないけどまた涙が溢れてきた。

「でも・・・・・・ただのクロスなんだ」

カノウは見えもしないくせに気配だけでわかったのか指先で俺の涙をぬぐった。

「お前のおかげでわかった。・・・・・あれはただのクロスだ。ただのお守りなんだ。・・・・・・このピアスも」

その言葉の響きに、カノウが片方だけしている十字のピアスはきっとシラキさんがあげたものなんだろうと思った。

クロスが・・・・神の力が宿るものが無くなったプリーストの為に。
優しいあの人があげたものなんだ。

「それだけなんだ」

気持ちの整理をつけようとする鬼ハイプリースト。
カノウの気持ちを考えてまた涙が出た。




出会いもなにもかも最悪だけど。

鬼の癖に不器用で馬鹿で優しいこのハイプリーストを俺は嫌いにはなれなかった。












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