「足りないお金は要りません。ただ…これから先、僕が望む時に歌ってくださいませんか?」

「歌…?」

「ええ…祝福の歌を」








GROLIA
〜ANGELS WE HAVE HEARD ON HIGH〜









 Angels we have heard on high,

 Sweetly singing o'er the plain;



鉄を打つ音と共に低く甘声が朗々と音を紡ぐ。
それは今は教会内でも歌われるのはまれな、古代の言葉を使った祝福の歌だった。

神の僕が地上に生まれた時に天使が下りてきて歌われたのだと伝えられている。
静かに、ゆったりと紡がれるそれは、たしかにどこと無く荘厳なイメージがあった。



 And the mountains in reply

 Echoing their joyous strain.



灰色の髪をした青年が真剣に鉄を打つ。

その姿から、かなりの腕前を持った武器製造人だと知れる。
だが、彼の口は堅く閉ざされ、歌を紡いでいるようには見えない。



 Gloria in excelsis Deo!

 Gloria in excelsis Deo!



その後ろで、彼に背を向けるように食事をとる机にもたれるように立っているプリーストがいた。

黒い髪は短く切り揃えられ、前髪だけが目を隠すように長く伸ばされている。
歌は彼から紡がれているらしい。

声が紡がれるたびに室内は羽根が舞うような淡い光に満ち溢れる。

潜めるように歌われるそれは、だけども鉄を打つ音にすら負けず悠々と響いていた。






 Shepherds why this jubilee?

 Why your gladsome strain prolong?

 Say what may the tidings be

 Which inspire your heav'nly song?



 Gloria in excelsis Deo!

 Gloria in excelsis Deo………






不意に声が途切れる。
鉄を打つ音が途切れたからだ。

「…終わりか?」

プリーストが寄りかかっていたテーブルから身を離してゆったりと振り返る。
黒い前髪の奥に深い紫の瞳。
視線の先には打った鋼鉄を一つ一つ手にとって確認しているブラックスミスの姿があった。
「ええ、おかげでいい鋼鉄が打てました」
ブラックスミス―ソラは満足そうに頷く。
「俺なんかの祝福じゃ、逆に呪われそうだけどな…それに、あんたならもっと高レベルのプリーストの知り合いぐらいいるだろうに」
「こう普通の呪文だと味気ないんですもん」
いえ、天使の祝福も好きですけどと相好を崩すソラ。
「味気なくても効果は一緒だろう」
「気持ちの問題です。僕はカイ君の歌声が好きですから」
「………」

「また明日お願いできますか?これを使ってバーン君の剣を作るので」
「…あんたが望む時にと約束したからな」
「義理堅いですねぇ…」
「……俺にはまだ、全然返しきれてない恩がある」


『あいつを死なせたくないんだっ。金が足りないんなら後で必ず払うからっ!!』


「貸しなんて思ってませんけどね…」
あんな必死なカイを見たのはあれが最初で…そして最後。

当時アコライトだったこのプリーストがどれほど当時剣士だった少年の事を大事に思っていたかソラは知っている。
あの時の足りなかった金額はもう既に返してもらってるというのに、当の騎士ですら知らないこの約束が続けられていることが何よりの証だと思うのだ。


「……そういやソラ、一つ聞きたかったんだけど…」
「はい?」
帰ろうとしていたカイが首だけソラに向ける。
「当時の俺はあんたから見てどうだった?」
「…あの時の…?そうですね」
三年前出会った頃のカイを思い浮かべる。

いつも焦っているような。
崩れてしまいそうな姿はぎりぎりの状態で。
相方の剣士がいなければきっともう崩れ落ちていたのではないかと思うほどで。
見ている方が不安を誘われた。

「…ちょっときつそうに見えましたかね」
「…ああ、やっぱりな」

どうしても欲しいスキルがあった自分は支援という支援は最低限にしか取っていなくて。
グロリアなんて取る必要も無いと思っていた時に、彼はそれを必要だといった。
…人の為にスキルを取ったのは初めてだった。

「だからあんた俺に寄り道させたかったんだろ?」

カイの言葉にちょっと驚いたように眉を上げて、ホニャンと笑った。
そのまま何も言わないソラにカイは自嘲気味に笑った。
「感謝してる」
そうしてソラに背を向ける。

「じゃ、また明日来るから」
「はい、じゃあ。また明日」











 Come to Bethlehem and see

 Him whose birth the angels sing;



とある町のとある工房から時折鉄を打ち高い音に混じって聞こえてくる歌があった。
それは今は教会内でも歌われるのはまれな、古代の言葉を使った祝福の歌。
神の僕が地上に生まれた時に天使が下りてきて歌ったのだと伝えられている。




 Come adore on bended knee,

 Christ the Lord, the newborn King.





低く甘い声が朗々と響く。





 Gloria in excelsis Deo!

 Gloria in excelsis Deo!












これは。
黒髪のプリーストがまだ自分の天使に出会っていなかった頃の話。









END


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萌え板が個人的にグロリア祭ですか!!?って思うくらいつぼなグロリア話がころころしてたので便乗して書き上げ。
プリさんとグロリアは本当萌えなんです。
こう朗々とどこか甘い声で男プリさんが歌うのが萌〜。
もうそれだけの話ですいません。


カイの情の表し方はちょっとひねくれてます。
男の子で幼馴染ですからねぇ…。
カイがバーンに持つ感情は友情…兄弟愛に近いかな。
兄弟って問答無用でいじめる喧嘩する、でも離れられない関係じゃないですか。
カイは訳あって友達はバーンしかいないのですが、愛情に発展するにはバーンは真っ直ぐすぎてそれ以上の感情を持てなかったのです。カイは負の塊のような人間なので。


いえ、アサシンのランにグロリアは必要だよなぁ・・・でもカイ取ってないだろうなとか思ってたらできたこの話。ANGELIAの影の主役はソラさんじゃなかろうかと思うほど彼が話の中心にいるのは気のせいじゃ…無いですね。書きやすいんですよ、この人。カイはまだいまいち性格が掴めてない…。



















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