出会いはとてもありきたり。

前にいたギルドで一緒だったブラックスミスと偶然プロンテラで会った拙者は、誘われるままに彼が今いるギルドのたまり場に行った。そこには女騎士と女ダンサーと男ローグ、そして彼がいた。
黒髪に藤色の瞳。男にしては線の細い、だがけして女らしくも無い凛々しい顔は特に悪い印象を受けなかった。
どこにでもいる男聖職者。
紹介されてもその時は名前も覚え切れなかった彼に、拙者は一年後『結婚』を申し込むことになる。









最高の片想い










「これで最後っ」
急所を突いてマーダーを沈めた拙者は消え行く敵が落とした短刀を拾って背後の聖職者を振り返った。
「包丁が出たでござるよ」
「うん」
黒髪の聖職者は聖歌が載っている聖書を閉じて小さく頷いた。
普段は杖を愛用している彼はどうやら最近覚えたばかりのグロリアの歌詞を決めかねているらしい。聖職者であるから聖歌は馴染み深いものであるはずなのに、彼は凝り性らしく色々な曲を歌ってくれる。一緒に狩りに行くたびに違う曲が聴けて自分としても楽しい。
「やっぱりクリアサって強いですね」
彼は柔和な笑顔でそう言って笑う。
拙者はあまり馴染みのない褒め言葉に一瞬口ごもるが、次なる敵の気配を感じてそちらに視線をやった。
「・・・・・・トキ殿が唄ってくれるからでござるよ」
ああ、仮面を被っててよかった。ソロ狩り時代に手に入れたゴブリン仮面は自分にとってまさしく本心を隠す仮面だった。というか人とあまり深く付き合ってこなかった弊害か、今ではこれがないと落ち着かないくらいだ。

拙者が彼らのたまり場に居つくようになった頃には、偶然レベルが近かった拙者達は一緒に狩りに行くことが多くなった。
クリティカルは防御の固い敵には有効だがクリアサが強いかと言われればどうだろうかとアサシンである自分は思う。防御値の低い相手にはあまり有効ではないと思うからだ。
それでも拙者はクリアサであることを誇りに思う。たとえ・・・・。
「ソニックブロー!!!!」
湧き出した敵に焦って技を出すも、月に乗った幼女が軽い身のこなしで交わした。
やけになってもう一回繰り出すもそれもミスる。
「・・・・・・・・ぐっ」
赤くなって思わず涙目になる拙者に、背後から、ぷっと噴出す声が聞こえた。余計居た堪れない。
しかたないではないか。
クリティカルにこだわった自分は急所を付く訓練ばかりをして器用さがなかった。ゆえに石を投げても明後日の方向へ飛んで行き敵に当たることがない。
急所を狙うことはできるのになんだろうこの不器用さは。本当に運だけで戦っているんだなぁ、自分はとこういうときに思う。
そうこうしないうちに横から中身のない鎧の化け物が沸いた。これはとてもまずいかもしれない。
「闇のものに永久の安らぎを。ターン・アンデット!」
トキ殿の祈りが届いたのか、鎧は崩れ落ちた。
「助かった!」
カタールで目の前の敵を切り裂きながら声をかける。返事の変わりに彼の凛とした声が戦いの聖歌を謳う。
とたんに沸き起こる戦いへの悦び。

ああ、誰かと共に戦うということはこんなにも頼もしく嬉しいことだったのか。

人形を絞首刑にしている悪魔の木がトキ殿に背後から近寄る。トキ殿もそれに気がついた。
「こっちは良いですから前に集中して」
枝を伸ばす悪魔の木を器用に避けながらトキ殿は言った。思わず拙者が助けに行こうとしたのに気が付いたのだろう。
悪魔の手を器用に避けるトキ殿は純粋な支援とはちょっと違う避けることに特化した支援プリーストだった。殴りプリーストではない。見せてもらった冒険証の力の強さは初期値だったからそれは間違いない。
何も知らず初めて一緒に狩りに言った時、複数の敵に囲まれてもひょいひょい交わしていた彼の姿に開いた口がふさがらなかったのは支援プリーストは詠唱の速さか耐久力を上げるものだと思い込んでいたためだろう。
驚く拙者にトキ殿はシニカルな笑みを浮かべて言った。

『僕、攻撃受けるの嫌いなんですよね。なんかイラッとするでしょ?』

・・・・穏やかな物腰と丁寧な口調に騙されてはいけないのだなぁと彼のことを見直し、既成概念に捉われていた自分を恥ずかしく思った。拙者が始めて彼に興味を持ったのはその時からだったのかもしれない。

と、そんなことを考えていたのがいけなかったのだろうか。
「ヨタカ!」
「へ?」
いつ間にからロリルリやブラッディマーダーに囲まれていた。まずいと思ったがもうその時には圧倒的な数の暴力に押しつぶされていた。
「逃げ・・・っ」
逃げてくれと叫んだ自分の前で次の標的にされたトキ殿も倒れた。
意気揚々と去っていく敵に戦闘不能に陥った拙者とトキ殿は横たわりながら沈黙した。
そしてどちらかとも無く謝罪の言葉がでてきた。
「すまない・・・」
「すいません・・・・」
「いや、拙者の判断ミスでござる」
もっと早くに逃げろといっておけばトキ殿まで巻き込まないですんだものを。いやそれよりも先にグリムなりなんなりすればよかったのかもしれない。自分がもっと早くに敵を倒していれば・・・自分がもっと強かったらトキ殿まで倒れることもなかったのに・・・。
後悔の言葉は飲み込む。
それは自分への自戒にしなければとわかっていたからだ。
「・・・・・・僕も、素早さじゃなくて耐久力を上げておくべきだったかな・・・・」
不意に聞こえた彼らしくない弱弱しい声に拙者は慌てた。
「避けるトキ殿はかっこいいでござるよ。下手すれば拙者より避けるではござらんか」
「キリエかけてるからそう見えるだけ」
はうっ。
なんたること。
薄い防御のヴェールはなかなか眼に見えるものではないからどうやら拙者は勘違いをしていたらしい。
言葉に詰まった自分にトキ殿はクスッと笑った。
「・・・・リベンジ・・・する?」
「する」
拙者は半分やけくそのように即答した。


「ただいまー」
「おかえりー」
ゲッフェンの露店街の脇にあるベンチに戻ると暇そうに座っていたダンサーのカモメ殿がいた。
拙者とトキ殿が収集品を売って清算を済ませ、別にしていた黒猫のぬいぐるみを分ける。
「すごい。いくつ出たのよそれ」
カモメ殿は自分達が抱える黒猫のぬいぐるみの量を見て眼を丸くした。
「16個ですね。ヨタカがいっぱい盗んでくれたから、実は収集品の額も結構すごいですよ」
「へぇ〜いいなぁ。やっぱりスティルあるといいわよね!」
「それにヨタカの運の良さもあるんじゃないですかね。他の人といってもこうは集まりません」
嬉しそうなトキ殿の姿に、拙者も苦労しながらも盗んだ甲斐があったと自分の力を誇らしく思う。
「・・・あと幾つ必要でござるか」
「ん〜これであと87匹ですね」
まだ先は長い。拙者は自分の腕の中の黒猫を差し出した。
「じゃ、これも」
「いいですよ。ヨタカも集めてるんでしょう?それよりもまた明日狩りに連れて行ってくれたら嬉しいです」
「・・・・・・ああ」
トキ殿は頭装備の『たれ猫』を作ろうとしていた。露店で出回っているものではあるのだが、どうしても自分で作りたいらしい。
トキ殿がちょくちょく自分を狩りに誘ってくれるのはこういう理由もある。それに拙者も黒猫のぬいぐるみが集まるまではまだ一緒に狩りが出来るのだと安心できる。
ニブルはいいところだ。クリティカルしか能が無い拙者でも役に立てる。
胡散臭いところだがこの国を見つけてくれたプロンテラの国立調査隊には感謝したい。
頭の悪魔のヘアバンドをファッションサングラスに変えて寛ぎモードに入った拙者は、怪しげな視線に気が付いた。
「・・・・・カモメ殿?」
「あっやし〜・・・・あっやし〜なぁ・・・」
それは不審なというよりもいっそニマニマとした怪しげなもので。視線は自分とトキ殿に固定されていることに気が付いて何が怪しいのだろうと小首を傾げた。
「何かね!ヨタカ×トキて感じ!?」
「・・・・・・何故かけるのだろうか」
数式ではないのだからかけても答えなど出ないだろうに。
しかしトキ殿はカモメ殿が言いたいことがわかったのか小さくため息をついて黒猫のぬいぐるみを抱え直した。
「これ、倉庫にしまってきます」
「ああ」
自分も倉庫にと思ったのだが、カモメ殿の手がトキ殿に見えないように背後からマフラーを掴んでいて叶わなかった。トキ殿の姿を見送り、カモメ殿は拙者を引っ張るようにベンチに座らせた。
「で?実際はどうなの?」
「・・・・・・どうなのと・・・・言われても・・・・?」
カモメ殿の言いたいことが今一わからない。彼女は身をくねらせながらじっと顔を覗き込んできた。
「トキの事好きなんでしょ?」
「好きでござるよ」
なんのてらいも無く頷けばカモメ殿がガックリ肩を落とす。
「ダメだわ。顔が見えないから本音かどうかもわからない。ええい!このふざけた仮面を取れ!!!」
「ああああああっ!!!!ご無体な!!!!止めるでござるよ!!!後生だから〜!!!」
マスクに手をかけられ焦る拙者を面白がるようにカモメ殿が力を入れてくる。
しかし相手は女性。乱暴に振り払う事も出来ずにいると、馴染んだ気配が近づいてきた。
「・・・・・何してるんですか?」
呆れたような、それでいてどこか彼らしくない低い声は拙者にとっては救いの神の声だった。トキ殿が帰ってきてくれたらしい。
「トキ殿助けてくれ!!!カモメ殿が拙者を襲おうと!!!」
「へへへへへ。大人しくしてれば痛くはしねーからよぉ〜」
「あ〜れ〜っ!」
はっ。
完全に悪党のノリのカモメ殿に拙者までノッてしまった。
「カモメさん。素顔みたいからってあんまり無理強いするのは感心しないよ?」
見かねたトキ殿がそう言うとカモメ殿はしぶしぶ拙者の仮面から手を放してくれた。
「はいはい。わかったわよ。私もお邪魔虫にはなりたくないしね。ヨタカとトキはラ〜ブラブ〜ゥ」
最後に爆弾のような言葉を発してカモメ殿はちょっと買い物に行ってくると手を振って去って行った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれ?もしかして・・・・・・。もしかして、カモメ殿がさっき言っていた好きという言葉はそういう意味だったのか!!!?
気が付いて後悔しても後の祭り。
思い切り好きだと言ってしまった自分に頭を抱える。
いやあれば仲間として、友として好きということであって!!!他意はないのだ!!!他意は!!!
「ヨタカ?」
「拙者は皆大好きでござるよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・は?」
「〜〜〜〜〜〜!!!!!・・・・・・・・・・・・・忘れてくれ・・・・」
どうして拙者はこうも・・・・。
勘違いが得意な上にそそっかしいのだろう・・・・。
ベンチに座りうなだれるようにがっくり肩を落とす拙者の横にトキ殿は座った。
「・・・・・・・食べる?」
うなだれた顔の前に差し出されたのは拙者の好きな一口ケーキだった。
「・・・・・ありがとう・・・・」
ああ。何も聞かない優しさが身に染みる。
ケーキを食べる為に仮面を少しずらす。
「あ、やっぱり口あるんですねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・?」
「いやカモメさんじゃないけど、いつもその仮面しているから。もしかしてその仮面が素顔なのかと最近思い始めてきたというか」
いつも落ち着き払っているかのような彼の、たまに見せるこんな子供っぽいところに笑みが浮かぶ。
「聞いたこと無かったですけど・・・・どうしていつも仮面を?」
「たまたま顔にフィットして取れなくなったのでござる」
「そうなんですか」
「うん」
そんなわけないのに頷けばトキ殿もそれ以上は聞いてこない。トキ殿は必要以上に干渉してこないのだ。そういうところが居心地がいい理由なんだと思う。
仮面をつけている理由は単純だ。
そうしていれば顔を見られなくて良いから。
別に人を不快にさせるほど見目が悪いわけではない(と自分では思う)。自分はどうやら感情が顔に出やすいらしく、それは暗殺者たる自分にとってどうだろうとか思ったのだ。
極度の赤面症と言うのもあるのかもしれない。
仮面をつけているととても落ち着くので寝る時以外は・・・・たまに寝る時もつけているくらいだった。もう自分の一部のようにも思う。
それに・・・・この仮面はもう一つ大事な役割があった。

トキ殿は手元の聖書を開いた。のんびりと聖歌選びをしているらしい。小さくハミングする声を聞きながら、拙者はこの居心地のいい空気に安堵した。こういう時のトキ殿の声はどこか懐かしい響きを持っている。
戦っている時の凛とした声とは違う、まるで母親の子守唄のような歌声。
だからこれは仕方のないことなのだろうと思うのだ。狩りの疲れと優しい歌声についうとうととした拙者は不覚にも眼を閉じて寝てしまった。



「・・・・・・っ・・・・・・ね・・・・・」
「・・・・めですよ・・・・・・・・でしょう・・・・・」
人の話し声に意識が浮上する。それに自分は寝ていたのだと気が付いてはっとして目が覚めた。
「っ」
人の体温を頬に感じて顔を上げる。
「あ、起きた」
かもめの顔が視界に入って驚いた。だがしかし、もっと驚いたことに拙者が寝ていたこと。それと、どうやら拙者はその間トキ殿の肩を枕にするかのようにもたれかけていたらしい。
「すまん。トキ殿」
「いえ」
あたりは薄暗くなっていた。どうやら自分は3時間ほど寝ていたようだった。ずいぶん長く彼を拘束していたことになる。
「ああああん。せっかく素顔見れるチャンスだったのに!」
「な、人の寝込みを襲うような真似は卑怯でござるよっ」
カモメ殿の言葉にぎょっとしてしっかりつけている仮面を両手で押さえてそう言うとカモメ殿は胸を強調するかのように腕を組んでふふんっとふんぞり返った。
「じゃぁ、見せてよ。一度で良いから」
「ダメでござるよ。拙者の住んでいたところではこの仮面を取り素顔を見せた相手と結婚せねばならぬ掟があるからして」
「何よ!嘘でしょそれ!どっかで聞いたような話だもん!」
前に古本屋で見た漫画の設定であった。
「カモメさん」
トキ殿の声が静かにだがはっきりとカモメ殿の名前を呼んだ。
「ダメだよ。人の嫌がることしちゃ」
「何よ。トキは気にならないの?ヨタカの素顔」
拗ねたようにカモメ殿が言う。
「・・・・・・・・・」
拙者はカモメ殿の質問にどきりとした。それはさっきも自身で感じたことだったからだ。
だが、
「ならないよ。だって、仮面を被っててもヨタカはヨタカだからね」
トキ殿は口元を上げてそう言い、そしてそれが嘘ではないことを示すように拙者に向かって小さく頷いた。

「仮面よりなにより、僕はヨタカって人が・・・中身が好きだから」

さらりと告げられた言葉に拙者は不覚にも顔が熱くなるのを感じた。
こうもはっきりと示された好意が嬉しくないわけがない。それが自分も好意を持っている相手なら尚更。
だがしかしそれを態度には表さないように懸命に努めた。ここで過剰な反応をすればカモメ殿を喜ばすだけだろう。
カモメ殿は腕を組んだまま呆れたようにため息をついて踵を返した。
「はいはい。二人でいちゃいちゃしてればいいわ。もう日も落ちるし私帰るから」
「おやすみ、カモメさん」
「おやすみでござる。カモメ殿」
慌てて声をかけるとカモメ殿は背を向けたまま手をふった。
残された拙者とトキ殿はどちらかともなく立ち上がる。
夕暮れの赤が藍色に変わり、町の街灯に光が灯る。
「ヨタカは夕飯どうする?このまま帰る?」
「そうでござるなぁ・・・・・・。トキ殿はどうする?」
トキ殿はプロンテラの教会の寮に住んでいた。このまま帰るのかもしれないと思いながらも、このまま別れがたい気持ちもあった。だがトキ殿は意外なことを口にした。
「夕飯か・・・・その前にちょっとゲッフェンのアパート探しでもしてみようかなと」
「え、トキ殿。寮を出るのでござるか?」
「うん。そろそろ上から出ろ出ろせっつかれてるんですよね。ほらもう僕もいいレベルの冒険者ですから。独り立ちしろって。寮は安くて貯金できてよかったのになぁ」
トキ殿は、はぁっと切なげにため息をつく。
そういえばトキ殿の趣味は貯金だった。
「そうだ、ヨタカ。安い宿屋知りませんか?アパートでもいいんですが」
「・・・・・・・・・・」
そう言われても急には出てこない。だが、考える自分はとある物件を思い出した。
「拙者の今住んでいるところはどうだろう」
「え?」
「拙者が借りている宿屋は少々変わっていて、二部屋で一つになっているのでござるよ」
長期間住めるようにと考えられていた部屋でルームシェアをしている冒険者は少なくは無い。自分はある程度広い部屋が好みなので一人でそこに住んでいたのだが。
「半分は壁で仕切られていて行き来できるが、間に衝立か何かあれば特に問題は・・・・・」
言葉が途中で途切れたのは、トキ殿が目を丸くしていたからだ。
やはり・・・・・他人と同じ部屋はイヤだったのだろうか。
「いや、すまない。差し出がましかったでござるな・・・・」
「あ、いや・・・・・」
隠れて落ち込む拙者に、トキ殿は慌てて両手を振る。
「ルームシェアかぁ・・・・。それなら・・・・家賃も安く済みますねぇ。でも、ヨタカはいいんですか?僕と一緒に住むことになって。窮屈になるかも・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言われればそうかもしれないが・・・・・。
「トキ殿とならいいでござる」
「・・・・・・・・・・・そか」
拙者の答えにトキ殿はまた少し考えた。そしてこちらに顔を向けて頭を下げた。
「じゃ、よろしくお願いします」
「・・・・・・・・こちらこそ、よろしくでござるよ」
こちらも慌てて頭を下げる。そして同時に顔を上げてどちらからとも無く笑った。
二人並んで夜のゲッフェンを歩く。
「カモメさんが知ったらまた喜びそうですねぇ」
「そうでござるなぁ」
同居か同棲かと騒ぎそうだ。それはそれで煩そうだが構わないと思う。
他人には好きなように言わせておけばいい。大事なのは自分の心。

トキ殿は大事な友人。できたら、相方といつか呼びたい相手だった。
こんな自分では彼に不釣合いかもしれないが、それでも・・・・・。

先に取りたいスキルがあったにもかかわらず、自分と組んで早々にグロリアを覚えてくれた彼のことを。
稼げる経験値が少ないであろうにも関わらずあちこちに狩りに行こうと誘ってくれる彼のことを。
落ち込む自分に強いよと励ましてくれる彼のことを。
こんな拙者の中身が好きだといってくれた彼のことを。

もっと知りたいと思った。
そしてできるならもっと近くにいたい。

干渉を嫌う自分にしては画期的なまでの世界の変革だった。

街灯が切れている路地に入り、互いの顔すらぼんやりとしか見えないところで拙者は立ち止まる。
それに気が付いたトキ殿が5歩先で立ち止まって振り返った。
「・・・・・・・・・・・」
拙者の背後には遠く街灯がある。だから拙者の顔は影になって見えない。
それがわかっていてそうしてしまう自分は卑怯なのかもしれない。
拙者は顔を覆う仮面を外した。
「・・・・・・・?」
薄暗くて見えなくてもトキ殿もそれに気が付いたのだろう。拙者の行動に驚いた様子だった。

「トキ殿。拙者、トキ殿と出逢えたことを・・・・・神に感謝する」

素顔での告白は思いの他素直に告げることが出来た。
それはきっとこの闇に助けられたからなのだろうと思う。

この気持ちに偽りは無い。
素顔で伝えたいと思うくらいに純粋な好意はまだこの時の拙者は唯の友情なのだと思い込んでいた。


後に、勢い余って彼に『結婚』を申し込んだ後に聞いた話になるのだが、トキ殿はこの時拙者を嫁にもらわなければと思ったらしい。
素顔を見せた相手と結婚というカモメ殿との話を冗談とわかっていても本当にそう思ったのだと、うっすら頬を赤くして俯くトキ殿を不覚にもかわいいと思ってしまったのだが、それもまた後の話。










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アサプリなのかプリアサなのか迷うところです。(笑)

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