『世界の終末「ラグナロク」が近付けば・・・ヴァルキリーたちが偉大な人間を捜し出して・・・偉大な殿堂、ヴァルハラに導く・・・』













LOOP〜絆・セシル〜












ベンチで休んだ3人は、途中で他の3人の仲間用に冒険の必需品や菓子などを買い込み戻ろうとしていた。
セシルを真ん中にして歩くのはもちろんエレメスがセクハラの被害にあわないための予防策だった。

「転生?」

「そう、要するに生まれ直しだな。それまでの記憶はそのままにノービス時代まで身体の『時』を戻す。覚えていたスキルなんかは使えなくなってしまうけど、それを覚え直していけば上位二次職につけるって話。それにはジュノーにある書物が関係あるらしい。それで俺達もそれやろうかって思ってるんだ。それにはレベルを99まで上げねーとなんだけどな」

そんなものがあったのかとエレメスは驚き口元に手を当てて考えこむ。

「ま、面倒ではあるけど、上位二次職になれば今まで以上の力を手に入れられるっていうし!面白そうじゃない?」

セシルとハワードはそう言いながらも少し心配げにエレメスを見た。
それは確かにギルド全体の意向ではあったのだが、エレメスは半ばハワードが無理やり加入させた意味合いが強い。
人生をリセットするということはそれまで培ってきた強さをすべて捨てるということなのだ。
今はまだ不確定要素も高い。
嫌だといわれればこちらも無理強いはできない。
だが、できればエレメスも共にという思いも確かにあった。
「・・・・・・・・・・・・・」
何やら考えているエレメスに、ハワードが問うた。
「やっぱ、・・・・嫌か?」
だがエレメスは首を横に振った。
「・・・・・・いや、別のことを考えていた。世界の終焉に現れるというヴァルキリーが出現したという話は拙者も聞いた。だから災いからこの世界を守るために大きな力が必要とされているのだろう・・・・。魔物たちも年々力を持っているように感じる。魔界から召還される魔物すらいる・・・・・・・だが、大きな力はまた大きな・・・災いも生む。この世界はやはり終わりに近づいているのだろうか」
「・・・・・・・・・・・・」
物憂げなエレメスにハワードは口を閉じる。それは誰もが心の奥で感じていることだったからだ。
だがその隣でセシルは片手を横に軽く振った。

「ばーか。そんなこと考えたって仕方ないじゃない。終わる時は何があろうと終わるわよ。それにそんな考えムダよムダ。だいたい世界が終わる前に私達が死んだらそこまでじゃない。こんなの悩むばかりで答えなんてでるわけないし、ぜんぜん建設的じゃないわ。死にたくなかったら行動あるのみでしょ」

前向きすぎるほど前向きな、それでいてあっけらかんと言い切るセシルの言葉には力がある。
思わず男二人は笑みを浮かべる。
「ふむ・・・・・・そうだな」
「な、世界が明日で終わるとしたら、お前らどうする?」
「なによいきなり」
「今朝見た新聞にそんなアンケートがあったんだよ」
「えーなによそれ。でも、そうね。・・・・・・私は好きな人と一緒にいたいな。一人は嫌ー」
セシルは肩をすくめて微笑む。その横でエレメスも腕を組んだ。
「拙者は・・・・・そうだな。皆でいたいな。ただし、自分が納得いくまで終わりの原因を突き止め、終わらないよう努力はするが」
「エレメスらしいよ・・・・」
「そういうハワードはどうなの?」
「俺?俺はー・・・・・・やっぱ好きな奴を抱きしめて、一日中いちゃいちゃ?」
そう言いながらハワードはエレメスの腰を抱く。
「いーかげんにしなさいっ」
その頭をすかさず後ろからセシルが、前からエレメスが平手で殴った。
謀ったかのような見事なまでのタイミングでハワードは両方から衝撃を受け、頭と顔を抑えて蹲った。
「ちょっとは手加減して・・・・」
落としたタバコをもったいなさ気に見ている姿は哀愁が漂っていたが、慰めるものなどいない。
「何よ、わざとらしい。あんた打たれ強いくせ・・・・・・に・・・・」
ふと、セシルの言葉が不自然に途切れた。
怪訝に思ってセシルを見ると、彼女は何かに驚いているように目を見開いていた。
その視線を辿ると2人の男冒険者達が談笑しながらこちらに向かって歩いてきている。
そのうちの一人、短く切りそろえた緑髪の男アサシンがこっちに気がついてセシルを見てわずかに驚いていた。
一緒にいたウィザードもそんなアサシンに気がついてセシルを見る。
「何。知り合い?かわいいじゃん」
「ばっか。別に・・・・関係ねーよ」
アサシンがそう言うと、セシルは小さく唇をかんだ。
だが何も言わずに視線を逸らす。
2人はそのまま何も言わずにすれ違う。
「・・・・・・・・・」

5歩歩いたところでウィザードがニヤニヤしながらアサシンを肘でつつく。
「何・・・・もしかして訳あり?」
「いいって。知らねーよあんなわがままで自分勝手な女」

雑踏の中でも小さくだが確かにエレメスの耳にまで聞こえた声。
きっと聞こえていたのだろうセシルも身体をこわばらせた。
その姿にエレメスは二人組みの背中とセシルを交互に見る。
「セシル殿・・・・」
「あーもうっ。私用事思い出したから!あんた達でこれ持って帰って!いい!?付いて来ないでよね!!!」
セシルは持っていた菓子の入ってた紙袋をエレメスに押し付けて、男達とは反対方向へ走っていった。
顔を背けた時に見えた彼女の目にはうっすら涙が溜まっていた。
そのままセシルは走り去り、エレメスは追いかけた方がいいのか迷っているうちにその姿は見えなくなってしまった。
それまで蹲っていたハワードが新しいタバコに火をつけて立ち上がる。

「ハワード殿・・・・」
「あーちょっと俺も用事を思い出したから。エレメスー先に帰ってて。寄り道すんなよ?」
「・・・・・・・・・」

ハワードは何か知っているのだろう。
だが、エレメスに質問する隙を与えず背を向けたまま手を振って歩き出す。
付いて来るなと語る背中を見送りながら、エレメスはきびすを返して宿屋に戻る。

自分達は仲間だが、仲間だからといって嫌がるところに首を突っ込む権利はない。
聞かれたくないことは誤魔化すし、気が向けば話す。
それは冷たいようにも思うかもしれないが、そのバランスがあるから自分達のような個性の強い人間達が集まれるのだろうと思うのだ。

エレメスが宿屋に帰ると、丁度入り口に立っていたプリーストのマーガレッタと会った。
「おかえりなさい」
「・・・・・・ただいま」
エレメスにとって未だになれないのがこの些細な日常会話だったりする。
拠点というものをもったことがないエレメスにとってそれは過去師匠と過ごしていた日々を思い出す分多少くすぐったくもあり、そして嬉しくもあった。
「マーガレッタ殿。・・・・・・・・・セシル殿は帰ってはおらぬか?」
「セシル?いいえ。まだ帰ってませんけど、なにかありまして?」
エレメスは一瞬だけ考えたが、自分の推測はいれずに先ほど会った人物とセシルの様子を話した。
すると、最初優しげな微笑を浮かべていたマーガレッタの瞳がだんだんと冷気を纏い始めた。

「緑髪のアサシン・・・・・そう、あいつが」

声までもが冷ややかで、エレメスは今までにないマーガレッタの殺気に冷や汗をかいて一歩下がった。
「マーガレッタ殿。その・・・・彼は一体」
「大体想像は付いているでしょうから言いますが、あの男はセシルの心を弄んだ極悪非道の二股男なんです。セシルと付き合っていながら他の女に手を出してっ、挙句の果てに自分の懐の狭さを棚に上げてセシルを傷つけて・・・・っ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「まだプロンテラにいるのかしら。・・・ふふふ」
そう言いながらマーガレッタはスカートのポケットからインベナムクリップを取り出して肩にかけたスカーフにつける。
「マーガレッタ殿っ、待て何をする気だ」
不穏どころの話ではなく、今から挑みに行く構えのマーガレッタはれっきとした支援プリーストである。
戦闘職ではないまでも、しかし、彼女は本来の気丈さできっとエレメスを見上げた。
「Pvに連れ込んで永遠にインベナムとホーリーライトでなぶり殺すに決まってるじゃありませんかっ。いいえ、生き地獄を見せてあげます」
「ちょっと待った。まだ彼らがプロンテラにいる保障はないのだが・・・・・」
まさかマーガレッタがここまで怒るとは。
意外な一面をみつつ、そこでエレメスはふとあることに気がついた。
さっき用事を思い出したと言っていたハワード。
そういえば彼が向かった先は、あの二人組が去った方向ではなかったか。
何だかひどく胸騒ぎがした。
「マーガレッタ殿・・・・。そのことはハワードは知ってるのだろうか」
「・・・・・ええ・・・・うちのギルド全員が知っていますけど」
なにやら考えていたエレメスに、マーガレッタも怪訝そうな顔をする。
まさか、と思いつつエレメスは持ってきた紙袋をテーブルに置いて玄関に向かう。
「すまない。ちょっと出てくる」
マーガレッタが気を利かせて速度増加をかけてくれた。
礼を言って宿から出たエレメスはある場所に向かった。

それは前にセイレンと戦った事のある、擬似戦闘場。
通常周囲への影響が大きいため、冒険者同士の私闘が禁止されているが、この閉鎖空間でのみ許可されてた。
常に開放されているそこは、主に冒険者同士の揉め事や腕試しなどに使われている。
建物に入ってすぐ、案内役にハワードや他の二人の特徴を伝えると、確かにその三人が入っていったと教えてくれた。
すぐに同じ空間への入室を求る。
そしてエレメスが入ったのはモロクの町並みを再現していた空間だった。
遠く、魔法が地を叩く音が向かうべき方向を教えてくれた。
そこに向かってエレメスは走る。
腰に挿していた過剰裏切り者を手にとって一度振り、手に馴染ませ、すぐ戦えるよう意識を戦闘用に研ぎ澄ませる。

「立てよ」

レンガで造られた建物の壁に手を当てて角を曲がると、片手を凍りつかせたハワードが、斧を担いで立っていた。
その目の前には膝をつくウィザードと、傷付きながらもまだ短剣を構える緑髪のアサシンの姿があった。
後姿からではハワードの表情はわからない。
だが、服はぼろぼろで、足元には大量のポーション瓶が転がっていた。
凍った腕に力を入れて氷を砕いたハワードはポケットの中からコインを数枚取り出して宙に放った。
コインが高い音を立て溢れる金色の光の中に解ける。

「もったいないだぁ?ケチくせーこと言ってんじゃねーよ。・・・・・金なんてな、大事もんを守るために使うもんなんだよ。そのために散財するなら惜しくなんてねーな」

アサシンが何かを言ったのだろう。
恐らくはブラックスミスのメマーナイトか回復剤のことを。
だがハワードは一蹴する。

「・・・・・大事なもん?」

今度はアサシンの声がエレメスにも聞こえた。
ハワードの掌の上で溶けた金のオーラを掌で握る。

「・・・・・・仲間の笑顔さ」

話は終わりだとばかりに、オーラごと斧を振るう。
「ぐあっ」
その衝撃音と威力にエレメスは驚いた。
アサシンが構えた短剣ごとその身体を弾き飛ばした。
その先にあった建物の壁に背中から体を打ちつけ崩れ落ちる。
一撃がかなり重い。あれを受け止めれば自分でもどうなるかわからないだろう。
まるで重機のごとき迫力といつもと違う雰囲気に圧倒される。
ハワードは押し殺した声で吐き捨てる。

「鍛冶屋舐めんなよ・・・?・・・・・・・女で遊んでるてめーとは、覚悟が違うんだ」

「くそっ」
崩れた壁が巻き上げる埃の中、倒れ伏すアサシンは悔しそうにハワードを睨み上げた。
ハワードは斧を下ろしてそれを覚めた目で見下ろす。
それは勝者が敗者を笑うものの目ではなかった。
まだ怒りが収まらないとばかりに斧を握るが、これ以上すればそれはセシルのためではなくなってしまう。

「あいつは、・・・・・別れた時だって、惚れた相手を悪く言うことだけはしなかった。今もそうだ。・・・・・・セシルは確かにわがままでガキで寂しがりでうるせーけどな。てめーにはもったいねーくらい、いい女だ。今度あいつ泣かせてみろ。・・・・・こんなもんじゃすまさねぇ」

低く凄みのある声は、ハワードのものとは思えないくらい真剣なものだった。
勝負は付いた。
いらぬ心配だったかと、エレメスは気が付かれない内に壁の影に隠れようとした。
ここで出て行っても、ハワードにとっては実力を疑われたかのような気がして嫌な気持ちになろう。
だが、エレメスはその視界に動くものを認めた。
先に膝を突いていたウィザードが小さく呪文を唱えている。
アサシンだけを見ていたハワードはそれに気がついていない。
「っ」
それが終盤のものだと悟り、思わず飛び出したエレメスは、ウィザードの背後に回り首の後ろをカタールの柄で殴った。
それは必要以上の力だったのだが、それはこの際目を閉じてもらおう。文字通りに。
気絶したウィザードと、突然現れたエレメスにハワードが目を丸くする。

「エレメス・・・・・・。お前どっから・・・」
驚いているハワードを視線を合わせきれず、エレメスは肩をすくめた。
「そ、その、今日はいい天気ゆえ、・・・・・少々身体を動かしたく・・・・今来たばかりで・・・まぁ、その・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・失礼する」
ハワードの沈黙に耐え切れずきびすを返すエレメスに、ハワードが慌てて追いかけてきた。
片手でカートを引きながら、エレメスの横まで来たハワードはいつもの砕けた表情だった。
「エレメス」
名を呼ばれたエレメスは不思議そうにハワードを見上げていた。
ハワードはそんなエレメスに顔を近づける。
何か深刻な話かと黙るエレメスの唇に柔らかい感触が触れ、そしてすぐに離れた。
ほんの一瞬のことで気が付いた時には事は終わっていた。
目の前でイタズラが成功した子供が口付けした自分の唇に人差し指を当ててにかっと笑った。

「ここでのことは、セシルには内緒な。というわけで口封じさせてもら・・・・ぐあっ!?」

突然の下からの衝撃にハワードは言葉を噛んだ。
「拙者、そういう冗談は好かんっ」
眉間に皺を寄せたエレメスは口をへの字に曲げたままハワードを睨み、その顎にアッパーを決めた手を下ろす。
少しは見直していたのに、今のでそれも吹き飛んでしまう。
むすっとしたまま一人歩き出すエレメスの後をハワードは慌てて追いかけていった。
「エ・・・エレメスー・・・ごめん。そうだよな・・・」
「・・・・・・・・・?」
「初めてのキスくらいムードのあるところで甘い言葉と一緒に欲しいところだよな。俺が悪かった。許してくれ。そしてセッティング整えるからやり直しを・・・」
「誰がそんなことを言ってるっ」
どうしてこの男はこうなのだろう。
本気と冗談が入り混じり、どこまでが本気なのかわからない。
情けない声で自分の名前を呼ぶ声は何故だかどこか楽しげにも聞こえるのが忌々しい。
そしてその明るさと、さっきまでの雰囲気とのギャップに戸惑う。
多少はいいところのある変態男だと思っていたこの男はいったいいくつの顔を持っているのか。
その表情にエレメスが懸念していたような負の感情などはなく、今も視線を向けるエレメスに柔らかい笑みを浮かべて懐から出した新しいタバコを咥えて火をつけた。

「ハワード。一つ聞きたいのだが」
「ん?」
「セシル殿がアサシン嫌いなのは彼とのことが原因か・・・・」
「ああ・・・・。まぁ・・・それだけでもないんだけどなぁ・・・・これが」
後半は口の中で呟いて意味深に苦笑するハワードにエレメスは目で問いかける。
だがハワードは口を横に引き結んだ。

これだけは言えない。
実は表向きアサシン嫌いのセシルだが、好きになるのはどういうわけかアサシンばかりなのだ。
嫌い嫌いも好きのうちとはよく言ったものだ。

そしてエレメスは男の自分から見てもいい男だ。
凛々しい顔立ちにすらりとした肢体。男女分け隔てなく接し、人を気遣う余裕もある。その上強いし頭もいい。
きっと今も自分のことを気にしてここまで来たのだろう優しさもある。
こういう男がもてないはずが無いと断言が出来た。
もし自分が惚れてなければセシルに自信を持ってお勧めする。
しかしエレメスは天然だ。
本人は否定するに違いないが、ハワードはそう確信があった。
前、本人はもてないと言っていたが、きっと情を寄せられても気がつかなかったに違いない。今の自分のように。
ハワードは今までエレメスに寄っては散っていく人間の哀愁が幻覚で見えるような気がした。
ハワードが積極的に告白をしてモーションをかけるのもそのせいなのだが、案の定エレメスはまったく気がついていない。
まぁ、今はまだセシルもエレメスに恋をしているというわけではないのだが、しかしもしということがあってもこれだけはセシルといえども譲れないという思いがハワードにはあった。
ただでさえ、セイレンが恋敵という頭の痛いことになっているのに、これ以上悩みを増やしたくはない。

「こればっかりはなぁ・・・・」

心の中で十字を切ってそう呟いたハワードは、顔を引きつらせたまま乾いた笑みを浮かべた。



二人が宿の下にある酒場に帰ると、すでに酔っ払いがいた。
「うーん・・・・」
ワインをボトルごと抱えているセシルがカトリーヌに抱きついて頭を撫でられている。
もしや一人で泣いているのではと思っていただけに、その姿にほっとする。
その横でほんのり頬を染めているマーガレッタの手にもカクテルが握られていた。
そして唯一酒の飲めないセイレンが、二人に気がついて片手を上げる。
「おかえり。・・・・・どうした、ハワード。それ」
ハワードの服はぼろぼろで、何があったのかと聞きたくもなるだろう。
しかも本人は、エレメスに殴られたところに違和感を感じているのか顎を揉んでいる。
その横でエレメスは気まずげに顔をそらして誰とも視線を合わせようとはしない。

「ちょっとな。最後の最後で油断した・・・」
「珍しいな。痛むならマーガレッタに治療してもらえよ」

その言葉にエレメスはますますいたたまれなくなる。
ハワードはセイレンの言葉にあいまいに頷きながら、マスターにビールを大声で注文する。
すると、酔っ払ってうつろな目をしたセシルが顔を上げた。
目の下が赤く腫れていたが、もう涙は見えなかった。
「大声出さないでよ。うるさいわねっ」
「はいはい。今日は俺もう疲れたから上行って寝るわ」
出されたビールを一つはエレメスに渡して自分の分を一気に飲み干す。
そして満足そうに一息つく。
そして通りざまにセシルの頭に手をのせてぐりぐりとかき回した。
綺麗に伸ばされた金オレンジ色の髪が鳥の巣のようにくしゃくしゃになる。
「やだっ、もうーなによっ!ハワード!」
「おっやすみー」
怒るセシルに笑って手を振ってハワードは二階へ上がっていった。
それを見送るエレメスは、マーガレッタの視線に気がついた。
セシルに気がつかれないように小さく頷くと、それだけでわかったのかマーガレッタだけでなくセイレンまでも微笑を返した。
「・・・・・・・・・・・」
エレメスはビールを片手にテーブルに着き、そしてふと思いついたようにセイレンに聞いた。
「・・・セイレン殿は、もし明日世界が終わるとしたら何をする?」
「あ、それ新聞に載ってたアンケートですね」
どうやら見ていたマーガレッタが楽しそうに言う。

「明日世界が終わるのか・・・・・。そうだなぁ」

セイレンは椅子の背もたれに腕を乗せて寄りかかり、暫く考えた後に自分の中で納得言ったのかこう言った。

「世界中にある綺麗な景色を見に行くかな」

その答えにエレメスはわずかながら驚き、そして彼らしい答えだと口元を上げた。
「それ、いいですわね。私も連れてってくださいな」
「あー私も行くー!」
「・・・・・私も」
「ああ、拙者も」
「何だ、結局皆で行くのか」
笑うセイレンにセシルが手を上げるようにしてワインの瓶を掲げる。
「ハワードは好きな人といちゃいちゃするんだって言ってたから置いていくっ」
舌っ足らずなセシルに苦笑しながらも、エレメスはさっきのことを思い出していた。

『・・・・・大事なもん?』
『・・・・・・仲間の笑顔さ』

冗談が好きなハワードでも、あの時のハワードの言葉だけは嘘や偽りはなかった。
エレメスは微笑を浮かべながら手元のビールの飛沫を見ていた。

「いや・・・・きっと、ハワード殿も一緒に行くと思う」

そう、それは確信だった。


世界が終わる前にきっと自分達はこの世界から消えるだろう。
だが、もし世界が終わるのが先でも、皆がいる限り最後まで悔いのないままでいられるに違いないとエレメスは思った。

馴れ合うわけでもなく。
優しさだけを求めるわけでもない。


一見、冷たくもありながら、それでも自分の動きたいように動く。

その中にある仲間を思う気持ちこそが、きっと自分達を繋ぐものなのだとそう思った。











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相変わらず色気が無いです。










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