それは些細な違和感からだった。
体を起こしたとたん、妙に足が重く感じた。

「・・・・・・・・・・・」

エレメスは自分の手のひらを見ながら、眉をひそめてため息をついた。
わずかにある異変はあえて言うなら『体調が悪い』。
「しくじったな」
自己管理は当たり前のことだと思っていただけにエレメスは苦い顔をする。

そういえば昨夜部屋の前にハワードが仕掛けていた『エレメス捕獲のための7つ道具その2。エレメスコイコイ』というねばねばした捕獲機にひっかかった。
そのまま捕獲機ごとハワードの部屋に連れて行かれそうになったのを蹴り倒し逃げたのはいいのだが、全身ねばねばする液体まみれになってしまった。それを洗い落としたのだが、湯沸かし器の調子が悪く湯が出ずに水ですませてしまったのだ。
かなり体が冷えていたのを気にしてかハワードが「俺の体温で暖めてやるよ」と言っていたのを肘鉄で拒絶し、その後自室で寝たのだが、思えばあの時髪を乾かさなかったのがいけなかったのだろうか。
半実体を持っている自分達も風邪を引くのだなと妙に感心しながら、エレメスはベットから降りた。
多少熱はあるが、まぁ、大丈夫だろう。


しかし、その油断がまさかあんなことを引き起こすことになろうとは、エレメスもまだ思ってもいなかったのである。











LOOP〜風邪を引いたら暖かくして眠りましょう〜









「ぐはっ!?」

どんっという地面からの衝撃にエレメスは吹っ飛ばされた。
侵入者かと思ったものの、これは違うとすぐに察する。
衝撃に座り込んだまま見上げれば、スナイパーのセシルが眉尻を上げて頬を膨らませていたからだ。

「あんた何私の罠壊してるのよ!」
「いや・・・・わざとではないのだが・・・・。少しは拙者の心配も・・・」
「矢まで食らいたい?・・・・もー・・・・せっかくいい位置に仕掛けたのに。またやり直しじゃないの」

先日の酒飲み会から元気を取り戻したセシルは通路を動き回ってはあちこちに侵入者用の罠を仕掛けていた。
元気になったことは喜ばしいのだが、ほぼ適当にばら撒いているだけの罠はよく見ないと自分たちまで巻き込まれてしまう危険性があった。
しかしセシルに言わせれば引っかかる方が悪いということで、今もブラストマインで爆破されたエレメスの方が怒られている次第であった。
しかし座り込んだまま恨めしそうに見上げてくるアサシンクロスにさすがのセシルも悪いと思い始めたのか唇を尖らせる。
「何よ。それくらいあんたならたいしたこと無いでしょっ」
そう言いながらも腰のポーチから白いポーションを出してエレメスの傷口にかけてやる。
たちまち癒える傷を見ながらエレメスは口元を上げる。
「・・・ありがとう」
「別に礼を言われる筋合いは無いわ。もうこれに懲りたら足元に注意してちょうだいっ」
礼を言われたのが恥ずかしくなったのか、セシルは赤い顔をしてべっと舌を出して立ち上がる。
エレメスもそれに釣られるように立ち上がる。
「罠を仕掛けるのを見てみてもいいか?」
「・・・・・おもしろいものじゃないわよ?」
「話し相手にもなってほしい故に」
エレメスはニコニコと笑ってセシルの横に立って一緒に歩き出した。
こうして誰かと歩いているだけでも心休まるのをエレメスは感じていた。
つい一昨日まで物音一つ立てることすら恐れるような静けさはもうない。
目を閉じて気配を感じれば今もあちらこちらで人の気配がしていた。
ホワイトスミスのハワードが鉄を叩く音に混じって、ハイプリーストのマーガレッタの聖歌を歌う優しい声。
カトリーヌもきっとそこにいるのだろう。
セイレンは侵入者が入っていないか見回りをしているはずだ。
「・・・・・何笑ってるのよ。スケベ」
「スケベ!?・・・・・いや、拙者スケベかと言われると確かに男ゆえ否定はできぬかも知れぬが・・・」
セシルが言った何気ない一言にエレメスは大変なショックを受けてそんなことを言う。
しかしセシルも自分の言葉に逆にそんな過剰反応されてしまいカッと頬を染めてエレメスを怒鳴りつけた。
「真面目に答えないでよっ。・・・何笑ってるのよっ!馬鹿にしてるなら売られた喧嘩は私買うわよ!?」
セシルの剣幕にエレメスは肩をすくめて困ったように笑った。
「血の気が多いな。セシル殿は・・・・・。拙者ただ嬉しいだけなのだよ。皆がこうしてまた顔を合わせることができて」
「・・・・・・・・・・・・・」
それにセシルも口を閉じてそっぽを向いた。
たぶんそんなことだろうと思ってたけどとその目が言っている。
「あんたも変な奴よねー。人のことばっかり気にして・・・・・知ってるわよ。私達が部屋から出ない間、ここに来ていた侵入者を一人で相手にしてたこともあったでしょ・・・。私達に気を使って、自分ばっかいい格好してさ」
「いや、それは偶然拙者一人で倒せる人数だったからで、他意はない」
まさか気がつれていたとは思わず、顔を引きつらせるエレメスの言葉に説得力は無い。
案の定セシルも納得はしてなかった。
「もう一人で戦おうとか思わないでよね」
「・・・・・・・・ああ」
セシルがそう言うのは、自分を心配してのことなのだ。
そういう不器用な優しさを見てエレメスは思わず笑みがこぼれる。
それにセシルがエレメスをキッと睨んで人差し指を立てて指差した。
「あんたのことを心配してるわけじゃないから。そこのとこは勘違いしないでねっ!あんたみたいなのでもやられちゃったらマーガレッタたちが悲しむじゃない。それに仲間の罠に引っかかるような馬鹿な泣き虫男にまた戦闘中に怪我して泣かれたらこっちの戦闘意欲に水を指されちゃうからそういうだけなんだから!」
「な、泣き虫って・・・・」
ここで初めて会った時と、先日の飲み会で涙を見せたエレメスをセシルは泣き虫だと思っているらしい。
否定したいところではあるが、どうせこの少女は聞く耳を持つまい。
今もつーんっとそっぽを向いてしまったセシルにエレメスは自分の頬をかいた。
罠に引っかかってしまったことも彼女にとっては文句の対象なのだろう。
しかし普段の自分なら確かに引っかからないはずなのだ。
注意力が散漫になっているのは、思っていたより風邪の熱が上がり始めているからなのかもしれない。
それに身体の重さは朝の比ではない。
セシルに付き合ったら部屋で休むことにしようとエレメスは思った。


一方、セシルも口ではこんなことを言いながらも本当のところエレメスには感謝していた。
皆を殺すという悪夢に魘されていた自分に、苦しい思いを吐き出させてくれる場をくれたエレメス。
それにきっと今も罠を這っている自分を心配して来てくれたのだろうと思う。

罠を張るには冒険者カードを使った進入経路附近に張るのが効果的なのだが、逆に言うと最も侵入者に出会う確立の多い場所なのだ。
一対一の勝負なら負ける気はしないセシルも、多数を相手にするには分が悪い。
それを察してのことだろう。
変に優しい暗殺者にセシルはちらりと視線を向ける。
「?」
長い青紫の髪に深柘榴色の瞳のアサシンクロスがセシルの視線に気がついて小首をかしげる。
こっそり見ていたはずなのに視線に気がつかれたのがくやしくて吸えた目で睨みつける。
「何見てるのよ」
「えっ。セシル殿が見ていたからだが・・・」
「私に言いがかりつける気?」
「そんな無体な・・・」
もはや気の強さで是を否と言わせようとするセシルにエレメスは情けない顔をする。
それにセシルはふんっと背を向けた。
「そんな顔しないでよ。私、情けない男って嫌いなの」
そう言いながらもセシルは妙な気持ちになっていた。
確かに自分は情けない男なんて嫌いなはずなのに。
・・・・・・・確かにこんな泣き虫でも強いし優しいところもあるし、情けないだけの男でもないんだけど・・・・。
妙にエレメスのことが気に掛かってしかたがないのだ。

「拙者は、セシル殿のこと好きだがなぁ・・・・・」

困ったように言われた台詞にかぁっと顔に血が上った。
セシルが思わず振り返ると、エレメスが小首をかしげていた。
「セシル殿?」
その表情は優しくて、仲間に向けるもので。
セシルは何故だかそれを悔しいと思った。
怒鳴りつけようとしたセシルの耳に背後から掛かる声が聞こえた。

「あ、セシルいたいた。何だ、エレメスも一緒か」

ハワードが肩になにやら担いでやってくる。
その後ろからマーガレッタとカトリーヌもやってくる。
「私に何か用?」
決まり悪そうに問いかけると、ハワードは肩からそれをじゃらじゃらと音を立てて下ろした。
「これやるよ。まぁ、くず鉄から作ってみたんだけど一応使えると思うから」
そういってセシルに渡したのは紐に通された山ほどの罠だった。
「あ、ありがと・・・・」
正直手持ちの罠は底をつきかけていたのでこれは本当に嬉しかった。
「ハワードには素直なのだなぁ・・・・」
素直に礼を言うセシルにエレメスが切なそうにそう言う。
それにむかっとしたセシルは顔を上げて怒鳴った。
「何よっ!あんたがスケベだからじゃないっ」
「え」
「なんだぁぁぁぁ?」
「・・・・・・・・」
セシルの問題発言にマーガレッタは口元に手を当てて驚き、ハワードは驚愕し、カトリーヌまで目を丸くしている。
「いや、拙者・・・・」
「あっ・・・・・違っ」
さすがにこの発言は変な誤解を生むとセシルは慌てて言い直そうとしたのだが、マーガレッタは意味深な笑みを浮かべてあらあらと笑ってるし、ハワードはこの世の終わりのような顔をしてどうしてだー!と叫んでいた。
エレメスの肩をがしっと掴んだハワードは、エレメスの肩をそのままゆすぶった。

「エレメスっ目を覚ませ!お前はセシルに騙されているんだっ」
「どうしてそうなるのよ!!!!!」
とんだ言いがかりである。

「そりゃ確かにセシルは可愛いっ」

いきなりの褒め言葉にセシルは言おうとしていた文句につまり、目を丸くする。

「慎ましやかな胸、頼もしい腰っ、ふくよかな尻。確かにそれは魅力的だろう。だが、それよりも、見ろっ。この肉体美を!!!!」

そしていきなりハワードはボディビルダーのごとくポージングを始めた。
ぐっと顔のところまで腕を曲げ見事な逆三角形を強調してみせ、それを更にぐわっと腕の筋肉を強調するように前でまげて見せる。
6人の中で一番たくましいハワードのポージングはまるで大きな羽根のような頼もしさがある。
本人も自分の筋肉には絶対の自信を持っているのだろう。
その表情はキラキラと輝いていた。
見せられる4人は冬空の下風に吹かれているかのような顔をしていたが。

「この上腕二頭筋もさることながら・・・この胸筋っ!」

皆の視線を受けますます絶好調なハワードはエレメスたちから向かって横向きになりそして腰をひねるようにしてぐっと胸の筋力を強調させるかのようにポージングを見せた。
「セシルに負けるとも劣らないこの胸筋に、抱かれてみた・・・・・」
ハワードがさわやかに言おうとした台詞は、だがしかしセシルが投げ飛ばした罠の山にぶち当たってさえぎられた。
がらがっしゃんと罠と共に地面に倒れたハワードに向かって、セシルは鬼もかくやと言わんばかりの形相でハワードを睨んだ。

「あんた・・・・・私が寸胴だとでも言いたいわけ・・・!!!!?あんたの馬鹿筋肉と私の胸を一緒にしないでよ!!!!!!」

セシルは更に矢を射掛ける。
「ぎゃああああ!!!?」
その背後ですさまじい剣幕に押された他の3人はハワードが矢だらけになるのを下がって見守るしかなかった。
確かにセシルの体型はスレンダーな部類に入るし、本人もそれをちょっとは気にしているらしい。
ここで余計な一言でも発せばセシルに半殺しにされるのは明白である。
ここは藪の中の蛇を踏んだハワードには大人しく犠牲になってもらおう。
だがしかし、怒髪天をつく勢いは収まらず何やらセシルの体からぱちぱちと静電気なものが走り始めた。
自分達は青白い人魂のようなものを身に纏ってはいるもののそれとは別の青白い雷のようなそれに3人は驚く。
「セ・・・・セシル殿・・・・そ、それくらいに・・・・」
「何よっ」
ぎらっとエレメスを睨むセシルは自分の異変にまったく気がついていない。

丁度その時エレメスは感に触る何かを感じた。

「!!!!!」
近くにいたマーガレッタとカトリーヌの腕を掴んで引く。
「きゃっ!?」
さっきまで二人がいた場所にセシルとは反対方向から矢が飛んできて壁に刺さった。
「何!?」
「下がっててくれ」
驚く女性陣にエレメスだけが腰のカタールを抜いて走り出した。
その視線は冷たく光る。
「ブレッシング!速度増加!」
走るエレメスの背中に向かってマーガレッタが支援呪文をかける。
ハワードも異変に気がつき、起き上がると背中に担いでいた斧を構えて走り出した。
「侵入者だ!」
どうやら弓手は射た後に逃げたらしい。
エレメスから遅れて走り出した4人は、暫く走って通路を曲がったところですさまじい閃光を見た。
光の薄いこの闇の場所でこれだけの光と衝撃。

ロード・オブ・ヴァーミリオン。

肌で感じる静電気の風。
腕で光を遮りながら、気になるのは先に行ったアサシンクロスのことだった。

「エレメス!!!!!」

光に飛ばされるかのように背中から倒れていくエレメスの姿にハワードは叫んだ。
まるでスローモーションのように青紫色の髪と赤いマフラーをなびかせ地面に倒れようとしたその姿に腕を伸ばすが届かない。
地面に倒れ付したエレメスをハワードは抱え起こすが、目を開けないエレメスの姿に蒼白になる。
「エレメスっ」
マーガレッタが傍らに膝を突いて必死にヒールの呪文を唱える。
だがエレメスは苦しそうに息をしているだけで目を開けない。

「やった!アサシンクロスを倒した!」
まるで黒板を爪で引っかくような耳障りな声のように感じた。
ハワードが顔を上げると、セイレンと同じような鎧を着たロードナイトとモンク、そしてウィザード2人にハンター、そしてプリーストが2人のパーティがこちらを見ていた。
その喜びの表情にハワードの中で何かが切れた。

「お前ら・・・・・・・俺のエレメスに何してくれとるんじゃ、ゴラァァァァァ!!!!!」

ゴウッとハワードから発する気配が変わる。
先ほどセシルが纏っていた静電気よりももっと激しい赤い雷がハワードから発せられた。
その気迫にまるで丸い大きな玉でも落としたかのように足元の床がへこんだ。

「爆裂波動!?」
「うそだろ!?」
「何でホワイトスミスが!?」

侵入者達がハワードを見て驚きの声を上げる。
しかもハワードの後ろでは弓を構えているセシルまでもが怒りに満ちた目で侵入者達を睨みつける。

「あんたのじゃないでしょうが・・・。でも、本当・・・・何すんのよあんた達・・・・っ許さないんだから!!!!」

セシルの周囲を漂っていた青白い静電気が赤く染まって体内からの闘気に足元の床にひびが走った。
ハワードの暴言での怒りがエレメスが目の前で倒されたことで爆発したのだろう。

二人の剣幕に侵入者達は恐れをなしてあとずさる。
しかし、その背後に一人の男が立っていたのだということに気がつけなかった。

「・・・・・何をした」

低くどこか甘くも感じるきつい声。
侵入者達が驚いて振り返ると、闇の中銀髪のロードナイトが立っていた。

「エレメスはお前らにそう簡単に倒されるような男ではない。・・・・・どんな卑怯な手を使った」

セイレンは侵入者達を冷え切ったアイスブルーの瞳で睨みすえて腰の剣を抜いた。
とたんに闘気がごうっと風を起こした。

「許さん」

闘気を剣に込めて地面を刺す。
とたんに剣から伝わった気迫が地面を割り破片を飛ばした。
3人の存在感に地面が揺れる。
その中で立つセイレンはすさまじい赤い闘気を発しながら剣を振った。

まさしく前門の狼後門の虎。

招かざる客、侵入者を断罪する閻魔のごときその迫力に侵入者達は青ざめた。




「・・・・・・・・ん・・・・・」

激しい爆音に目を覚ましたエレメスは体を起こそうとして失敗した。
「エレメスっ。目が覚めたのね!?・・・・・良かった・・・」
うっすら開けた視界に入るのはピンク色の衣装が良く似合う金髪の美少女だった。
頭がボーっとしてしまいマーガレッタだと名前を思い出すまでコンマ1秒かかった。
「拙者・・・・・・」
どうやら気を失っていたらしい。
近くに聞こえる戦闘音はまだ戦いが終わっていないことを告げるのに、立ち上がりたいと思っても体が動かない。
だが身じろぐエレメスをマーガレッタが抑える。
「お願い、無理に動かないで。ひどい熱があるの」
「・・・・・・・・・・ああ。そういえば・・・・」
さっき侵入者と相対した時、一人のロードナイトと剣を交わしていた時に魔法の呪文を唱える気配に気がつき、バックステップで避けようとしたのだ。
だが、地面に転がっていたセシルの罠にひっかかって、驚いた瞬間に受けた魔法の余波に煽られ倒れてしまった。
その時熱でふらふらしていたのもあってか勢い余って後頭部に激しい衝撃を受け気絶してしまったらしい。

「・・・・・・・・・・・」

エレメスは顔を戦闘の場に向けると、怒りの赤い波動を身に纏いながら3人の鬼が侵入者達を倒していっていた。
その勢いたるやすさまじく、見ているこっちが恐ろしくなっているほどであった。
普段侵入者が来ても体よく追い払ってきていたわけなのだが、今回はまた容赦が無い。

いったい彼らはどうしてあそこまで怒っているのだろう・・・・。

もちろんエレメスが倒されたと勘違いしてのことなのだが、本人は全く気が付いていなかった。
そして援護していたカトリーヌの魔法とマーガレッタの支援もあってあっという間に侵入者をたたき出した4人はマーガレッタの膝の上に頭を乗せて横たわっているエレメスを囲んだ。
「よかった・・・・目が覚めたのか・・・・」
皆の視線がほっとしたものに変わる。
「すまん・・・・みんな・・・・」
何と自分のふがいないことか。
目を細めて謝るエレメスは、しかし皆から見れば大層弱弱しく写った。
「いいから。エレメスちょっと揺れるかもしれないが我慢してくれ」
セイレンがエレメスの体の下に腕を差し込むようにして腕に抱き上げ立ち上がった。
ぎょっとしたのはエレメスだけではない。
これにはハワードも慌てる。
「ちょっ・・・・・」
運ぶなら俺がするのにっという非難の目もどこか鈍いセイレンはまったく気がつかない。
セイレンはマーガレッタを見た。
「エレメスの部屋でいいか?」
「そうですね。まずは頭を氷で冷やさないと・・・・・」
「・・・・・・うん」
それにカトリーヌが小さく頷いた。
そこでエレメスが慌てたようにセイレンに顔を向ける。
熱のせいかそれとも抱き上げられている恥ずかしさゆえなのかその顔は赤い。

「拙者一人で歩けるから・・・・・」

「フロストダイバー」

カトリーヌはエレメスに向かって両手を広げて呪文を唱えた。
瞬間エレメスの頭が丸ごとぴきーんっと氷に覆われる。
そして氷の頭が重力に引かれてがくんっと倒れた。
これには他の4人もぎょっとする。
「うわっ」
「きゃあ」
「ちょっと、カトリーヌ!!!!あんた、なにしてんの!?」
「頭を氷で冷やさないと・・・・・・」
カトリーヌはそう言って氷付けになっているエレメスの頭を撫でた。
その横でハワードが急激な角度になっているエレメスの首を心配してその頭を支え起こした。
「丸ごと冷やしてどうするよ!!!!エレメス!!!!生きてるかぁぁぁ!!!?」




・・・・・・いや。
もしかしたら、死んだかもしれない。









後日、3日間生と死の狭間を漂うことになり無事生還を果たしたエレメスは、暫くの間カトリーヌが侵入者にフロストダイバーを使うたびにびくっと体をこわばらせていたのだという。














+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

爆裂波動に目覚めた瞬間のお話。
看護シーンも考えたですが、きっと皆で手を変え品を変えエレメスの部屋を訪れたのでしょうということで。

笑っていただけたのであれば幸い。












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