夕日の色






ブラックスミスは片付けた工房の中で倒れるように横になる。
横にはさっき出来上がった剣があったが、それはもう自分にとっていらないものだった。

まだ残っている石炭を焼く匂い。鉄の匂い。
目を閉じれば瞼の裏でまだ火花が散る。
焼ける鉄を打つ衝撃をまだ腕が覚えている。
全身で全力で一振りの武器を打ちあげる達成感。
ぞくぞくするほど気持ちがいいあの工程のすべてを最初から最後まで全身で思い出す。
ブラックスミスは工房にすでに染み付いている匂いに包まれながら、自分の身にも染み込んだまだ若い鉄の匂いを嗅いだ。

ああ、やはり自分にもこの匂いが染み付いている。

小さく嘆息して力を抜いた腕をそのまま顔の横に滑らせるように落とした。
やがて消えてしまった火花に瞼を開けると、そこには見慣れた屋根ではなく、人の顔があった。

「・・・・・・・・・・・・・・」

着ている鎧からすると騎士なのだろう。
さして興味も無く黙って見上げると、騎士の方が困ったように顔をゆがめて決まり悪そうに頭を掻いて顔を背けた。
「いやぁ・・・あの・・・・すっごいエロい顔してたんですけど。あんた・・・・どんな夢見てたの?」
「・・・・・・・寝てたわけじゃ・・・ない」
返事するのも面倒だが、頭をぶつける心配をしなくてすんだので身体を起こしながら言った。そしてブラックスミスは座ったままで、膝を突いている騎士を見上げた。
「・・・・・・・・何」
「あーっと。まず俺不法侵入じゃありませんのでっ!ちゃんとノックもしたし!声もかけたし!でもってドア開けたらあんたが倒れてたから驚いて中に入ったけど・・・・・寝てなかったんだったら反応位してくんない?」
「・・・・・・・・・で?」
「は?」
「何か、用があってここに来たんじゃないのか」
そう言うと騎士は目を丸くして、そして唇をとがらせた。
「すいません。あんた不思議系?それとも天然?」
「お前は何だ。頭が足りないのか?言葉が不自由なのか?」
「何であんた悪口ばかりすらすらなの!?」
騎士はまだ若い口調で怒鳴ったかと思うと、頬を膨らませた。まだ年若くとも光り溢れる生命力の強そうな男だと思って目を細めた。
自分には眩しすぎる。
騎士は少し考えたようだが、思い切って自分の後ろにあった袋を掴んでブラックスミスの前に、どんっと置いた。
「俺、まだ属性剣を持ってないんだ。あんたは腕のいい鍛冶屋だと聞きました。これで俺にクレイモアを作ってください。お願いします」
そして足の上に手をついて騎士は頭を下げた。
「・・・・・・・・・・・・・」
だが、ブラックスミスは騎士を見ていなかった。ただ黙って目の前に置かれた袋に手をかけて中を見る。眠そうな目がキラキラと輝いているように見えるのは騎士の気のせいではないだろう。
もしかしてやばい人に頼んじゃったかなーと思ったが時はすでに遅し。

こうして二人は出会った。





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期待はずれですいません。




















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