夕日の色






世間一般ブラックスミスの胸には刺青があるが、大抵はちゃんとした模様になっている。不思議なことにそれは商人からの転職に時に魂の模様としてさまざまな色で浮かび上がるのだという。
色鮮やかで美しい花の模様になっている者もいる。
まるで紋章のような模様の者もいる。
だが、今騎士の目の前にいるブラックスミスの胸元にある刺青は今まで見た何とも違っていた。
左胸から心臓の上まで、まるで獣の爪で引き裂かれたような赤くひきつれたような刺青だった。
最初見た時はブラックスミスが倒れていたこともあって一瞬怪我をしているのかと思ったくらいだ。
「あんたの刺青変わってるね」
騎士がそう言うと、ブラックスミスは工具を点検している手を止めた。
「これは刺青じゃない。昔の傷跡だ」
「え?」
ブラックスミスはシャツの襟を掴んで肩を見せるようにあけた。肩口から肩甲骨のところまで紺と朱で描かれた鳥が一羽羽ばたいて見えた。これが彼のもつ刺青なのだろう。 だが騎士は別の意味で目を見張った。何がおどろいたかといえば、唯の醜い爪あとのような傷が鳥の尾のように繋がって見えたのだ。
五本の醜い筋を見事な尾羽にしたその鳥はまるで鳳凰。
偶然にしては出来すぎている。
「その傷はどうやってついたの?」
神秘的で奇跡的な物語を期待していた騎士は、ブラックスミスの一言で幻想を打ち砕かれることになる。
曰く。

「製鉄中につけていた皮手袋がまだ熱を持っていることを忘れて胸を掻いた」

黙っていれば男前なブラックスミスが実はただのおおぼけ野郎なのではないだろうかと騎士が思うのに時間はかからなかった。







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男前受万歳
















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